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ワン・ツリー・ヒル

Jul.26, 2004 オークランドでいちばん有名な丘

ワン・ツリー・ヒル:イメージ1

アイルランドのロックバンド「U2」のアルバム『Joshua Tree』の中に収録されている『One Tree Hill』という曲をご存知だろうか。これは、亡くなったニュージーランド出身のマネージャーを偲んで作られたといわれている。今回はその曲のタイトルにもなった「One Tree Hill(ワン・ツリー・ヒル)」を紹介しよう。

ワン・ツリー・ヒル:イメージ2

「One Tree Hill」とは文字通り「1本の木が立つ丘」のことで、市内からバス(バス番号302、305、312)でおよそ20分、住宅街のど真ん中に位置し、敷地内にはスポーツが楽しめる広場やバーベキュー場なども整備されている。この丘は、かつて先住民族であるマオリ族の砦であり、聖地だったが、1840年代にイギリスを中心としたヨーロッパ系の白人たちがこの国の主導権を得てからは、この丘も白人たちが所有することになった。しばらくすると、殺風景だった頂上には白人たちによって数本の木が植えられたが、吹きさらしの丘という地形上、木が生育するのは容易ではなかった。そして、かろうじて1本の松の木だけが逞しく残ったことから「ワン・ツリー・ヒル」とよばれるようになった。

ワン・ツリー・ヒル:イメージ3

死火山の噴火口跡にできたこの丘は、標高が約183メートルもあり、そのため車で乗り入れる人がほとんどで、この日も徒歩で登っているのはわたしだけだった。頂上までの道も完全に自動車優先で、歩行者は「車に注意!」と書かれたゲートを通り、車道から少し離れた歩行者用の道を進むことになる。ただし、途中から歩行者用の道は完全に消え、否応なしに車道を歩くことになるので、往来する車には十分注意してもらいたい。こんなトレッキング愛好者の存在を無視した環境においては、正直、軽やかに通り過ぎる車たちがうらやましかったし、トレッキングなどやめて、できるものなら同乗したいとさえ思ったが、そんな、なげやりになったトレッキング愛好者をまるで慰めるかのように、丘の麓と中腹に愛くるしい牛と羊が放牧されていた。愛嬌たっぷりの動物たちを眺めていると、車でただひたすら頂上を目指すのがだんだん味気なく感じられるのだから、一種のアニマル・セラピーとでもいったところだろうか…。

ワン・ツリー・ヒル:イメージ4

傾斜の激しい道を頂上までのぼりきると、目の前にはオークランドのシンボル、スカイタワーと周りに立ち並ぶビルディング、その向こうには青い海が広がり、港には多くのヨットが停留し、「シティ・オブ・セイルズ(帆の街)」といわれるオークランドならではのパノラマが広がっている。反対側にはさっきまで目の前にいた動物たちが牧歌的な景色となり、ニュージーランド最大の都市オークランドにいることを忘れてしまうほど、なんとものどかな風景が広がっている。ここからは180度違うオークランドの景色を360度楽しむことができるのだ。

ワン・ツリー・ヒル:イメージ5

実は、「ワン・ツリー・ヒル」といいながら、頂上にあった1本の松の木は、すでになく、現在では事実上「ノー・ツリー・ヒル」になっている。この丘は、マオリ族の人々にとっては、白人たちによる侵略の傷跡。そのため、過去数回、最後まで残っていた木は、マオリ活動家によって何度もチェーンソーで切り倒されそうになっていたのだ。チェーンソーによってできた傷口には鉄の保護板があてられ、ワイヤーで四方から支えられながら、ようやく立っていたが、「いつ倒れてもおかしくない大変危険な状態」というオークランド市役所の判断で、2000年に125年もの歳月をかけて成長してきた松の木はあっけなく切り倒され、今の姿になってしまった。丘の頂上には50年以上も前に、オークランド市の創設者ローガン・キャンベル卿により、マオリ族への敬意を表してオベリスクが建てられているが、マオリたちの遺恨はそう簡単に消え去ることはないのだろう。

ワン・ツリー・ヒル:イメージ6

外から見ると、平和でのんびりとした国という印象の強いニュージーランドだが、実際は白人至上主義の風潮が強く、マオリ族への差別もまだまだ根深い。「ワン・ツリー・ヒル」はそんな白人とマオリの訣別の地であるが、いつか、この丘が「共存」のシンボルとして多くの人々に愛されるようになることを願いたい。

-DATA-

場所:
ワン・ツリー・ヒル
交通:
バス、車
駐車場:
トイレ:
入場料:
無料

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