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チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン

Mar.4-7, 2004 失われた王国チャンパの遺跡を訪ねる

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ1

ベトナム中部の沿岸都市クイニョン。日本の某有名ガイドブックからは削除され、ベトナムの現地人でさえ「なんでそんな所に行くの」とか、ひどければ「そんな街は知らない」というような人がいるくらい観光地としてはマイナーな街である。しかし、クイニョンには11~13世紀に建造されたチャンパの遺跡が8カ所も残っており、金塔や銀塔といった魅力的な名前が付けられている。ホイアン近くの世界遺産にもなったミーソン遺跡や、観光地ニャチャンの市街地にあるポー・ナガール遺跡へ行くのもいい。だけど、2世紀に渡って一つの地域に遺跡が集中しているクイニョンの遺跡群を見ることは、ベトナム中南部の歴史を垣間見ることができると思い、クイニョンへ訪れることに決めた。

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ2

ニャチャンからの移動では、僕はホイアン行きのツーリストバスを利用している。着いてからの宿探しなど総体的に見て、電車やローカルバスより安上がりだし労力も省けると考えたからだ。実際クイニョンではバーバラ・バックパッカーズというゲストハウスで停車し(ホイアンまでの中継地点であり、休憩地になっている)、そのおかげでいくつかの手配ごとがスムーズに行えた。まずバーバラ・バックパッカーズでは僕の宿泊条件(10ドル以下のシングルユース)に合わないとなると、その姉妹館というか旧館のバーバラ・キゥイ・カフェを紹介してくれた。また、チャンパ遺跡が目的だと伝えると、信頼のおけるバイクタクシーまで紹介してくれたのである。ただし、値段交渉は自分でしなければならない。これは自己責任の範疇になるからだ。とはいえ、観光地としてはマイナーなクイニョンで、ゲストハウスの名前が示すように安旅行をする者を、おそらく10年以上迎えてきた宿のオーナーが紹介してくれるのである。バイクタクシーも安心して乗っていられる。ちなみに、バーバラ・バックパッカーズは海岸沿いを走るグエン・フエ通りを南に行った市街地を少し外れた所にあり、海水浴やボートトリップなどが楽しめる。一方のバーバラ・キゥイ・カフェは、同じグエン・フエ通りに沿って市街地にあり、フレンドリーで便利なゲストハウスだ。

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ3

チャンパ遺跡巡りは、二日をかけて7カ所を訪れた(1カ所行かなかったのは忘れていたから)。初日の最初に向かったのは、二つの塔を意味するタップ・ドイ。フンタンという呼び名もある。タップ・ドイの名の通り二つの塔が、クイニョンの市街地の中にこつ然と現われるのだ。もちろん湧いて出てくるわけではない。バイクや車の行き交うチャン・フン・ダオ通りを路地のような所を曲がると、突然と見えるのである。高さは2塔とも20mくらいだろうか。レンガ造りの壁や屋根には、ヒンドゥー色の濃い彫刻やレリーフがはっきりと見て取れる。これは、修復が進んだ結果であるとも言える。とはいえ、土台となる建造物自体の形状が崩壊せずにしっかりと残っていたから、修復もきれいにできたのだろう。実際、まだ放置状態に近い1990年当時の資料写真を見ても、外観の損傷は少ないように伺える。ベトナム戦争ではクイニョンでも激戦があったはずなのだが、都市部にありながら崩されず形状を保ってきたのは、やはり神秘的なものを感じさせる。

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ4

複数の塔があるものとしては、3塔が並んだ象牙塔へも訪れた。ズオンロンとも言う。最も美しいと言われるだけあって、3塔ともスリムな外観を持ち、壁にはヒンドゥー神話による彫像やレリーフ、装飾がみごとである。祭壇を装飾として施しているのも面白い。小高い丘の上にある銀塔(バン・イット)も4塔が残っている。しかし、中心となる祠堂は一つで、後は宝物庫、碑文庫、楼門である、それぞれに独特の形があって面白い。

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ5

丘の上など高台に建てられたものが多いのも、チャンパ遺跡で特徴と言えるだろう。これは、宗教的地位に関わりがあるらしい。クイニョンで最も高い位置にあるのが金塔。フーロック塔とも呼ばれ、クイニョンから北西に約30kmの所にある。ちょっとした小山の上にあり、途中まではバイクで行くことができるが、最も奥の民家からは歩いて登らなければならない。しかも、ガイドをその民家の人にお願いした上でである。そうしなければ迷ってしまうような、草の茂った道を登るのである。それが、ある所で視界が開ける。人々が集い拝礼したであろうテラスのような広場、直線の長い階段、その上に威風堂々とそびえ立つ金塔。クイニョンの街が一望でき、遠く(5kmほど先)には銅塔も眺められる。重厚感さえある。見渡しの良い場所にありながら、人を寄せつけないようにして建つ金塔。この塔の前に立った時、漂う空気の中に宗教的地位の高さが感じられた。

チャンパ盛衰の面影にひたるクイニョン:イメージ6

例えば、前述したタップ・ドイは建物としての美しさがある一方で交易などの行政に関わり、銀塔は宗教的威厳とともに政治的な威圧感を与えていたと想像できる。象牙塔の場合は、政治や国家防衛的な要素もあったのではと思わせる。また、村の中にあるタップ・ヴィンラムや畑の中にあるタップ・トゥーティエンは、地域に密着した宗教建築物としてどこか親しみやすい。カンティエンと呼ばれる銅塔も地域密着感があるのは、この塔がチャンパの中心的存在となる寺院の一つだったからだろう。その中で金塔だけは、立地から見ても純粋に宗教的威厳が感じられるのである。クイニョンにチャンパ王国が栄えた3世紀間、外国との交易で富む一方で周辺諸国からの攻撃もあり、国家の動向としても大きく揺らいでいたのだろう。考古学的に正しいかは別にして、その時代の変化がクイニョンの遺跡群で伺い知ることができる。残り一つの雁塔やまだ行っていないチャンパの遺跡も是非見てみたい。それらを見た時、どんな風に感じるのか楽しみだ。

-DATA-

場所:
ベトナム社会主義共和国ビンディン省クイニョン
交通:
ホーチミン市から飛行機で1時間もしくは1時間半(ベトナム航空時刻表)、ツアーバスで15時間半。鉄道はクイニョン駅があるが、所要時間は未確認。
駐車場:
なし
トイレ:
なし
その他:
チャンパ遺跡へ個人で行く場合、タップ・ドイはクイニョン駅から遠くない所にあり、徒歩で行くことも可能。その他の遺跡へは、近くてもオートバイで30分、遠ければ2時間もかかるため、バイクタクシーをチャーターするかレンタルバイクを利用する必要がある。

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