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かずら橋
Nov.11, 2003 祖谷渓谷にある、日本三大奇橋のひとつ
先日、JR土讃線大歩危駅からバスに揺られること約40分、日本3大奇橋のひとつとして知られる祖谷渓谷の「かずら橋」に足を運んできた。季節は11月、冬仕度をはじめた晩秋の山々を縫うようにバスは進む。窓外にはエメラルドグリーンの吉野川が沿いはじめ、大歩危峡が現れた。清らかな水に、侵食して切り立った岩盤。2億年のときを経た自然の芸術である。一艘の観光舟が下っていった。
西祖谷村に入って、バスはどんどん谷の底へおりてゆく。「かずら橋」バス停でバスから降りると、祖谷川の先の緑の中に、緩やかなアーチを描く薄茶色の吊り橋が掛かっていた。それが「かずら橋」だった。屏風か墨絵でも眺めているような時代とかけ離れた光景。遠い昔にタイムスリップしたような不思議な感覚に包まれた。

遊歩道に従って進むと料金所があった。「気をつけて渡ってくださいね。」係員のその言葉どおり、足を一歩掛けると橋がゆさゆさと揺れた。祖谷地方に古来から伝わる唄、「粉引き唄」というものの中に「風もないのにゆーらゆら」と詠み込まれているが、全くそのとおりだ。幅2m、とっさにかずらに捕まる。天然のかずらに体を預け、バランスを取りながら重力と向かい合うとき、緊張の糸を張り、一歩一歩気を引き締めてかずらの道を踏みしめるごとに、川が真下に迫ってきた。水面からの高さは14m、せせらぎの音が静かに聞こえてくる。ふと立ち止まって川面を眺めると川面にアマゴの鱗が踊った。スリルの反面、爽快感があった。

長い時間が経ったように思えた数分間、45mの橋をようやく渡り終えた。ほっとして腰を下ろす。後から渡ってきた中年の団体客が「わー。」「きゃー。」と賑やかに渡ってくる。秘境とはいえ、本州からの四国へのアクセスが便利となった今は、すっかり観光の目玉として定着しているのだ。

このかずら橋は、今から800年前、平家の落人が追っ手から逃れるためにつくられたといわれている。
標高1000mの高山に自生しているシラクチカズラというかずら(つる)を冬場に火であぶって柔らかくして、編みながら谷に架ける。頑丈な石や木ではなく自然のかずらを使ったのは、いざ敵が橋を渡って侵入して来ようとしたとき、すぐに切って落とせるためだったという。現在の橋はワイアーで両端が強固に補強されており、「象が持ち上がるほど丈夫」ともいわれるほどなので心配は要らないが、かつては揺れが激しく切れることもあったのだとか。昔の人々は急流を隔てて向こう岸へ渡ろうと思えば、一族の威信を胸に、半ば命がけで渡っていたに違いない。
寛政5年(1793)の「阿波海陸度之帳の写」によれば、祖谷渓には13の橋があったらしいが、今はこの「善徳かずら橋」と、「奥祖谷二重かずら橋」の2 つである。3年ごとに一度架け替えられながらも、当時のスタイルをそのまま残している例は極めて珍しく、国の重要有形民族文化財に指定されている。今回、そんな橋をスリルを味わいながら実際に渡ってみて、そんな歴史の一端をも目の当たりにしたような気がした。
渡りきった地点のT字路を左折すると琵琶の滝と呼ばれる滝が、清らかな水を豪快に噴出させていた。現在は観光客の格好の写真スポットになっているが、当時は、平家の落人たちが滝の下に集まって琵琶を聴きながら、昔の都の華やかな暮らしを偲んだというから神妙な気持になる。

その先には祖谷温泉の宿が点在していた。谷の底から山の斜面の自然を見上げる地形にあって、都会の生活からは無縁の懐かしい雰囲気のある温泉だ。泉質は単純硫黄泉でリウマチ、慢性疲労、冷え性など幅広い効用があるという。川魚や山菜をふんだんに使った祖谷地方ならではの料理も楽しみだ。また近年、一部の旅館のマイクロバスや、JR阿波池田駅から定期運行している周遊観光バスには、昔ながらのボンネットバスが使われている。そんなこともあり、渓谷を歩いているとボンネットバスが軽やかなエンジン音を立てて走っていったり、橋の脇に停車している光景をしばしば目にする。そんな風景も秘境ならではの風情を一層醸し出しているといえる。
-DATA-
- 場所:
- 徳島県三好郡西祖谷山村善徳
- 交通:
- バス:JR大歩危駅から、四国交通または村営バス約40分かずら橋バス停から徒歩3分 0883-87-2275(西祖谷山村観光課)
車:徳島道井川池田ICよりR32、県道45経由、かずら橋方面へ50分 - 駐車場:
- 100台(無料)
- トイレ:
- 渡り口にあり
- かずら橋渡橋料:
- 大人(中学生以上)500円
子供(小学生)300円 - その他:
- ボンネットバス:阿波池田駅などから秘境めぐり 0883-72-1231(祖谷期観光バス)5200円~など
- 周辺案内:
- 食堂、土産屋などが点在、祖谷温泉まで徒歩3分
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