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十二湖~大崩

Jul.28-29, 2002 白神山地のブナを訪ねて

十二湖~大崩:イメージ1

白神山地のブナが見たい。そして、ブナの山がもたらす水の恵みに触れてみたい。こう考えて、白神山地の西の端に位置する十二湖から山道を登り、大崩(おおくずれ)を目指すことにした。十二湖とは33の湖沼群の総称で、崩山(941m)の肩にある崩落地、大崩(694m)から12の湖が見えるとされている。夕方、五能線の十二湖駅から車で約3km東側に入り、八景の池のそばの末丸旅館に泊まった。宿の人は、あたたかい津軽弁で周辺の見どころや、周辺の道の案内をしてくれる。静かな緑の池を眺めながらいただく、ニジマスの刺身やカタクリのおひたしも格別だ。隣の席にいた夫婦の「十年前から、毎年ここにきているんですよ」という言葉もうなずける。

十二湖~大崩:イメージ2

翌日、大きな荷物を宿に預かってもらい、まずは大崩への登山口がある青池に向けて、車道を東へ進んだ。道のわきには、ブナやナラ、カツラの森に囲まれた大きな池がいくつもある。十二湖は、280年ほど前の山崩れで、谷川などが埋められた跡に水がたまってできたとされるが、詳しいことはまだ分かっていない。周囲には遊歩道が巡らされており、好みのコースを選んで歩くことができる。30分ほど歩くと、十二湖庵という茶室で、観光バスで訪れた大勢の人が休憩していた。ここでは、沸壷の池の水で点てたお茶(無料)をいただくことができる。そばには、森から流れ出た豊かな水が勢いよく下る渓流もある。シャネルの香水に使われるものと同じ成分という水は、冷たく、ほのかな甘味がある。ここで水を汲み、さらに東へ進む。

十二湖~大崩:イメージ3

ニワトリのトサカのような形をした鶏頭場(けとば)の池の向こうには、これから上る崩山がそそり立ち、大崩の険しい岩肌も見える。ふと、水面に突き出た木の上に赤っぽい鳥が止まっているのに気付いた。少しすると、キョロロロ…と、物悲しい鳴き声が響く。アカショウビンだ。エサの魚を狙っていたのだろう。付近にはカモシカやクマタカもすんでおり、タカの仲間が落としたのか、血まみれのウサギが空から降ってくるのを目撃したという人もいるという。総面積13万 haにおよぶ広大な白神山地の森が、さまざまな動植物をはぐくんでいることを実感できる場だ。ほぼ全域に世界最大級のブナの原生林が広がる白神山地は、極めて価値の高い生態系をもつことから、1993年、日本で初めて世界遺産(自然遺産)に登録された。

十二湖~大崩:イメージ4

「青池」の看板に従い小道に入ると、コバルトブルーの色彩が目に飛び込んできた。十二湖を代表する名湖といわれる青池は、陽が差すと群青色に輝き、少し陰ると深い紺色になって、見る見るうちにその表情を変える。水の青さの秘密は、現在の科学でも解明されていないという。この青池のそばに、大崩へと上る登山口がある。ここから先は土の道となり、歩く人の数もぐんと少なくなる。少し進むと、地元の人が道のわきで山菜を取っていた。津軽弁で「みんず」という。一般にはミズと呼ばれ、おひたしなどにして食べるとフキのようなシャリシャリした歯ごたえがする山菜だ。

十二湖~大崩:イメージ5

大崩までは一本道を1時間半ほど歩けば着くと聞き、軽いハイキング気分で挑んだのはあさはかだった。標高250mから694mまで一気に登る、傾斜のきつい細い道だ。登山道に水場はなく、もっと水を汲んでくるべきだったと後悔した。1983年、M7.7の日本海中部地震が起きて以来、水脈が変わったのか、登山道の水は枯れているという。1時間ほど歩くと、ようやく傾斜がゆるやかになった。沿道のブナやエゾアジサイの青い花、ノリウツギの白い花を愛でながら小さな峰をいくつか回り込んで進む。森の先に光が見え、ようやく大崩へ到着した。名の通り、斜面の岩肌が大きく崩れている。眼下に日本海が見晴らせ、先ほど歩いた十二湖の森も広がる。緑や青、赤褐色など、色とりどりの8つの池を見ることができた。

十二湖~大崩:イメージ6

大崩の道は、白神山地の核心地域にあたる白神岳へも通じている。白神岳から縦走してきた人の「見ごたえあるブナの林がありましたよ」といった話を聞いているうちに、海から霧が吹き上げてきて、またたく間に視界が遮られた。早めに引き返し、十二湖へ下ることにする。明るい霧の立ち込める森に、苔むしたブナの巨木がすっくと立つ。5m近い雪が積もることもある日本海側のブナは、水分を多く吸い上げ、太平洋側の4倍以上の大きさの葉をもつという。滑りやすい下り坂に気をつけながら、青池のほとりに戻った。青池から宿に向かって歩く道筋には、かつて、青森営林局のブナ林の観測に用いられたという樹齢数百年のブナの原生林が広がっている。この森を抜け、道標を頼りに沸壷の池や日暮の池のほとりを通って、日本キャニオンを目指した。

十二湖~大崩:イメージ7

小さなアップダウンのある散策路を経た後、道なりに下る。左手に現れる展望台から見下ろすと、白い岩石の切り立った崖が、日の光を反射してまぶしく光っていた。アメリカのグランドキャニオンを思わせる景観から、探検家の岸衛氏により日本キャニオンと名付けられたところだ。大きく崩壊した山肌には、浸食による筋が幾重にも刻まれており、地学的にも貴重な場所となっている。ここから15分ほどで、八景の池畔に戻る。宿で預かってもらっていた荷物を受け取り、車で駅に送ってもらった。十二湖駅は、海岸のすぐそばにある。線路を渡り、浜辺に下りて白神山地から流れ出た水が注ぐ海に手を浸した。霧の中に立つすがすがしいブナの姿が、まぶたに浮かぶ。多くの命を支えるブナの森の鼓動が、自分の生命の一部にも組み込まれたように感じられた。

-DATA-

場所:
青森県西津軽群岩崎村 十二湖~大崩
交通:
JR五能線十二湖駅より車で10分(付近の宿に宿泊する場合は、送迎車を出してくれることが多い)→八景の池
ルート:
八景の池(20分)→十二湖庵(20分)→鶏頭場の池(10分)→青池、崩山登山口(1時間30分)→大崩(1時間30分)→青池、ブナ原生林(20分)→沸壷の池(30分)→日暮の池(30分)→日本キャニオン(15分)→八景の池
水場:
十二湖庵わきにあり。
駐車場:
十二湖周辺6箇所にあり。(ブナ原生林付近は車の進入禁止)
トイレ:
王池、越口の池そばにあり。崩山への登山道にはない。
参考文献:
・青森県岩崎村観光課『やさしい光に包まれて
 IWASAKI VILLAGE』青森県、青森営林局深浦営林署、ビジターセンターの案内板
・納屋嘉治『日本の森あんない~東日本編』淡交社、1995
・サンタランドいわさき(株)『世界遺産 白神産地 白神岳・十二湖の植物』、2002
・るるぶ社情報版編集部『るるぶ情報版 東北2 通巻2151号 青森 るるぶ`02』JTB、2002
その他:
十二湖駅に止まる五能線は1日に4本程度しかないため、訪れる際には時間調整をしっかり行う必要がある。

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