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リワカ川 源泉部

Dec.19, 2001 もう1つの「世界一透き通った水」

リワカ川 源泉部:イメージ1

ニュージーランド(NZ)は、どうやら『水の国』なのかもしれない。今までに寄稿してきた自分自身のレポートを読み返してみて、改めてそう気づいた。「水モノ」のパドリングレポートを除いても、他のレポートにも水の美しさが必ずついてまわっているようだ。これは、水を好む私の志向性のためかとも思ったが、日本で野遊びをしていた頃をつらつら思い起こしても、NZほど水の美しさがありふれていたという印象がない。やはりNZが『水の美の国』なのではないだろうか。

リワカ川 源泉部:イメージ2

今回の『リワカ川源泉(Riwaka Resurgence)』は、特にそうした「水の美が身の回りにあふれている」という好例。例によってここも「知られざる名所」なのだが、今までのスポットと比較しても知名度の低さは半端ではない。おそらく、海外からの観光客どころかNZ人にさえほとんど知られていないはずで、地元の人間だけがときおりこっそりと通う、正真正銘の隠れスポットだ。

リワカ川 源泉部:イメージ3

名前通りこれは川の源泉なのだが、驚くべきことに山奥でもなんでもなく、海からわずか10kmほどの、標高もおそらく100m程度の場所に位置している。実はこのリワカ川は私の住む海辺の村を流れる小川。NZの中でも特に辺鄙なド田舎をわずか10km流れるだけなので、水はこの清冽さを保ったまま海に流れ込む。つまり海辺に住む私は、いながらにして清流を楽しむことができるし、さらに車で20分も走れば、こうして神秘の源泉を堪能することさえできるのだ。何時間もかけて山の懐奥深くまで入り込まないと澄明な渓流に出会えない日本からは、想像もできないことだ。やはりNZは『水の天国』かもしれない。

リワカ川 源泉部:イメージ4

さて、このリワカ川源泉は、実は『トレッキングレポート No.9010』でご紹介したププ・スプリングズと似た素性の持ち主。あのレポート内では詳述しなかったが、世界一の透明度を誇るププの水は、大理石と石灰岩のカルスト山「タカカ・ヒル」に降り注いだ雨が、地下を流れる間に濾過され、磨き上げられた末に湧出したもの。ププは山の北側の平野部に湧き出た泉だが、反対に南側の小さな渓谷に湧き出たものが、このリワカ川源泉なのだ。つまり、これもりっぱな「世界一透明な水」なのである。また、ププが先住民マオリの聖地であるのと同様、リワカ川源泉はマオリ女性が出産場所として使っていたという。「Resurgence」は「復活、再起」という意味だが、「地下水が地上に復活する源泉」という意味以外に、この「出産」をも含んでいるのかもしれない。こうしたマオリの歴史を知らずとも、水中の深い洞窟を透かし見たとき、奥に古い水神が息づいているのは、はっきりと感じられる。我々に流れる、彼らと同じ血のせいだろうか。

リワカ川 源泉部:イメージ5

ププ同様、駐車場からは10分程度のホンの短いアクセスで水神の住処にたどり着くことができる。逆にププとまったく対照的なのは、ルートの雰囲気。ププが「植物園」のごとき平坦な森の中の散策路なのに対して、こちらは「渓谷の箱庭」だ。深い木性シダの森、ブナの巨木、途中にあらわれる『クリスタル・プール』と名付けられた深い碧の淵などのたたずまいが、あの「ミルフォード・トラック」(『トレッキングレポート No.9001』参照)の最終日を彷彿とさせる。わずか10分程度で終わってしまうのが、残念でならないほどのルートなのだが、逆にいえば足の不自由な方にも堪能できる「ミニミニ・ミルフォード」ともいえる。

リワカ川 源泉部:イメージ6

しかし、どうだろう、この源泉部の清澄さは。ほとんど日の差さない小さな渓谷の奥底からひっそりと湧き出す水は、あっけらかんと陽光をはじき返して躍動するププの泉の水とは、明らかに違った表情を見せている。同じ山から湧き出しているのに、地下の分水嶺で運命を別にしたこちらの水は、谷底のわずかな光を吸い込んで内に取り込み、ひっそりと息を潜める濃紺の小さな宝石のごとき静謐さをたたえている。数百m下流のクリスタル・プールでときおり見かける60cm オーヴァーのトラウトも、ププのトラウトと比べると、心なしか敬虔な身のこなしをしているような気さえする。日本人ナチュラリストにとっては、ププよりもむしろこちらの方が心の奥底に共振する「何か」をもっているようだ。しかし、驚いたことに、この源泉部の水中トンネルを探検する「ケイヴ・ダイヴィング」も、ダイヴァー間ではひそかに人気を誇っているらしく、ときおりアクアラングとウェットスーツに身を固めた一団と遭遇することがある。確かに私も、源泉の奥底には興味をひかれる。しかし好奇心以上に恐怖、畏怖を覚える。同じ太平洋民族であるマオリ族がここを聖地としてあがめた気持ちに、より共感してしまうようだ。ならば私の場合は、ここで水神の息吹と共鳴し、心から日常の垢を洗い落とすだけで満足しておくことにしよう。

リワカ川 源泉部:イメージ7

やはりNZは、私にとっては間違いなく『美しい水の天国』だ。明日も休日。またこの『水の美』に出会いに、ちょいと出かけてくるとしようか。駐車場付近は、清流に面した日当たりのいい芝生の広場になっている。駐車場から3分ほどのところにも、やっぱり渓流沿いの芝生のピクニックエリアがある。芝生の上に座り、源泉部の水を沸かして水神のコーヒーを淹れ、お気に入りの本をめくりながら、南半球の夏の長い長い午後をゆっくりとうっちゃるのが、私のお気に入りの休日の過ごし方。ただし、いくら清冽に見えても、食中毒を起こすバクテリア「ジャーディア」の危険性は否定できないので、生水飲用は控えなくてはならない。さもなくば、水神の怒りに触れ、自らもトイレに座りこんでとめどなく「水」を放出しつづけることになるかもしれない。美しいものには棘がある。ご注意あれ。

-DATA-

場所:
南島ネルソン地方タズマン郡エイベル・タズマン国立公園への基地の町、モトゥエカから車で30分程度。
交通:
ネルソンから国道6号線を南下し、リッチモンドの町から国道60号線を北上。エイベル・タズマン国立公園の入り口の町、モトゥエカを通過し、リワカの集落を抜けると、タカカ峠にさしかかる。登り始めてすぐのところにある小さな道「リワカ・ヴァレー・ロード」を左折。途中からラフロードになり、左への分岐点もあらわれるが、無視してひたすら直進すれば、最後にリワカ川源泉の駐車場で行き止まりとなる。ネルソンからは1時間少々、モトゥエカからは30分程度のドライブ。
駐車場:
あり(無料)。
トイレ:
駐車場にある。
諸注意:
・キャンプ、焚き火 禁止
・ジャーディア情報 http://www.onjix.com/ryu/homepage/information/nature.htm#giardia
・売店はない。必要なものはすべて持ち込むこと。
・トラックは裸足でも歩けるほど、よく整備されている。ただし、源泉部の岩場は滑るので、要注意。
・ダイヴィングは必ず経験者の同行のうえ、キチンと源泉部の看板に記されたダイヴィング注意事項を厳守し、安全に配慮すること。

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