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鎌倉 和賀江島

Jul.07, 2001 大潮の日の磯遊び

鎌倉 和賀江島:イメージ1

潮の干満が最も大きくなる大潮の日。干潮の時刻になると、材木座海岸の東端には丸石が積まれてできた和賀江島が姿を現す。新聞などで干潮時刻を確認し、その1~2時間前に到着すれば、潮だまりに取り残された生きものたちを観察できる。鎌倉駅からバスに乗り、飯島バス停で下車。徒歩1分で海に出る。向かって東側、砂浜の先に、累々と積まれた石の山が見えた。和賀江島は、日本唯一の鎌倉時代の築港跡だ。当時、付近の浜辺は遠浅で波が高く、難破する船が多かったため執権北条泰時の命で港が築かれたという。

鎌倉 和賀江島:イメージ2

丸石の間に足を踏み入れると小さな魚影が走り、慌てたヤドカリが転がり落ちる。透明なイソスジエビが歩く姿も見える。10cmほどのフグが、素早く足元をすり抜けた。クサフグ(写真)だ。国内沿岸部に多いフグで、強力なくちばしで様々な小動物を食べる。5~7月に葉山の波打ち際に集団で乗り上げ、産卵する様子は圧巻だ。テトロドトキシンという毒があり、もちろん人間が食べることはできない。ひょっこり顔を出すカニは、穴を掘って砂のなかに酸素を送り、プランクトンを増やすことで水の浄化に一役かっている。

鎌倉 和賀江島:イメージ3

相模湾には全国でも珍しい多様な環境があり、生物の種類も豊富だ。逗子の葉山から江の島にかけては200m沖まで大陸棚があり、沖合いの大島付近は 1500m近くの深い場所が、三崎や三浦にはバンクと呼ばれる海丘がある。黒潮の影響で冬でも水温は10度を下らず、夏には南方からカラフルな熱帯魚がやってくることもある。相模湾の生物多様性の保全のため、相模湾の生物をすべて集め、写真や標本、遺伝子保存といった方法でライブラリ化する取り組みが、現在、東大の臨海実験所で行われている。

鎌倉 和賀江島:イメージ4

海藻や岩に似た赤い魚がいる。背びれのトゲに毒をもつハオコゼ(写真)だ。踏みつけないためにも、足元のしっかりしたスニーカーなどを履いておくと良い。海では、トゲに毒をもつゴンズイという魚や、クラゲにも注意する必要がある。特に青く透き通った浮き袋を持つカツオノエボシは電気クラゲとも呼ばれ、毒性が強い。以前、左手の指先を刺されたことがあるが、毒が回り、1日、両腕を動かせなくなった。毒のある生物に刺された場合は傷口を水で洗い、症状がひどければ速やかに医師の手当を受ける必要がある。

鎌倉 和賀江島:イメージ5

少し沖の岩の上に、群青色の体に白い斑点、オレンジ色の角をもつ、1cmほどのアオウミウシを見つけた。ナメクジのような姿をしているが、ウミウシは巻貝の仲間。牛の角のような触角をもつことから海の牛、ウミウシと呼ばれるようになったという。特定のカイメンを好んで食べ、毎年、同じ場所で複数の固体を目にすることが多い。観察した後は、できるだけ捕まえた場所に放し、石も元の通りの環境に戻すことが大切だ。水中の石の表と裏とですんでいる生きものが違うため、ひっくり返したままだと磯が荒れてしまう。

鎌倉 和賀江島:イメージ6

干潟に、砂でできた茶碗のようなものがある。砂ぢゃわんといわれ、ツメタガイという約10cmの茶色い巻貝が粘液で砂を固め、卵を埋め込んだものだ。ツメタガイはエサとする貝に歯舌で穴を開け身を吸い出して食べるため、浜辺では小さな穴の開いた残骸も見かけられる。この食う・食われるの関係から成る海の生態系に、異変が起きている。37年間の調査で、相模湾沿岸の貝類の6割にあたる67種類が絶滅、またはその寸前の状態にあると判明した。1960年以降の開発による環境の変化や水質汚染、環境ホルモンなどの影響だ。

鎌倉 和賀江島:イメージ7

人だかりを見つけ行ってみると、透明な直径1cmほどの卵が水底に沈んでいた。「アオリイカの卵ですよ。」薄い殻の中身がクルリと回転し、尖った頭の先端で殻を何度かつついたかと思うと、イカの子どもが顔を出した。「…生まれた!」拍手が上がる。5mmほどながら既にイカの形をしている。スッ、スッと泳ぐ背中には、白い甲羅も透けて見えた。生まれ、成長し、食べ、食べられる。あちこちで繰り返される小さな命の戦いは、強く、自然の仕組みのなかで謙虚に生きる、生きもの本来のあり方を思い起こさせてくれた。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR鎌倉駅よりバス→飯島バス停下車
駐車場:
飯島バス停そばにあり
トイレ:
飯島バス停そば、材木座海岸にあり
参考文献:
<モース研究会『第16回 江の島モース祭「海の生物が増えるための勉強会」資料』2001
『いるか丘陵の自然観察ガイド』/dd>

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