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南アルプス 北岳(3192m)

Jul.24-26, 2001 高山病の先に見えるもの

南アルプス 北岳(3192m):イメージ1

父が、南アルプスの北岳へ行かないかと誘った。日本で2番目に高い山だ。来年定年を迎える父は、過去に3回北岳、農鳥岳、間ノ岳からなる白峰三山の縦走を試みてきたが、3回とも高山病らしい症状が現れ下山してきた経緯がある。「3000m級の山への最後の挑戦」と意気込む父と甲府から2時間バスに揺られ、広河原に到着した。青空を背に、純白の雲をまとった峰がそそり立つ。水場でまろやかな清水に舌鼓を打った後、コマドリのコーラスが響く森へと分け入った。尾根道を覆う樹林が、夏の日差しをやわらげてくれる。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ2

入道雲の下、ゆっくりと高度を上げて御池小屋へ到着。プレハブの仮設小屋だが、清潔で案外快適だ。荷物を置き、散策に出る。桃色の頬のウソという小鳥が、フィッ、フィッと鳴きながら草の実をついばんでいる。足元に目をやると、草むらから草むらへ、赤茶色の10センチほどのノネズミが走り去っていった。夕方、赤く染まる雲に稲光が走った。小屋に入るやいなや、滝のような雨がトタン屋根を打つ。晴天が続くという梅雨明け10日を狙って山行の日程を組んだものの、夏山での夕立ばかりは避けようがない。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ3

午前4時、ルリビタキの歌声で目が覚めた。支度を終え外に出ると、朝日を浴びて赤く輝く北岳の山頂が見える。小屋で朝食をとった後、5時半に出発。ここからは「草すべり」という名のとおり、両岸を草が覆う直登となる。色とりどりの高山植物のお花畑が目を奪うが、木陰は消え、強烈な紫外線が肌を刺す。少しでも影になりそうな場所を探し、こまめに水分を補給しながら進む。振り向くと昨夜泊まった御池がはるか下方に光り、奥には鳳凰三山の雄姿が青く連なっている。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ4

草すべりを抜け、ようやくシラカバの樹林帯に入った。木漏れ日の下、落ち着いて休憩を取れるようになる。蛇行する道を行き、森が切れると、再びハイマツなど、丈の低い植物の生える場所となった。頭痛の兆候がある、と父。いつも海抜2600m付近から、高山病の症状が現れ始めるという。様子をみながら時間をかけて登り、叙々に高度に体を慣らすことにする。ほかの登山者に道をゆずりつつ、道端の草花やチョウを愛でる登り方も悪くないものだ。コースタイムにとらわれず、気に入った場所で高山の自然を満喫できる。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ5

急に風が冷たくなり、稜線に出た。どっしりした山頂が目の前にそびえ、甲斐駒岳の荒々しい岩肌や霞に浮かぶ富士山も展望できる。吸い込まれるような谷間を見下ろす稜線歩きや、岩場に打ち込まれた鎖を握る感触は、一歩一歩、自身の体を運んでこそ味わえるものだ。肩の小屋に到着してお昼を過ぎたころ、父が本格的な頭痛を訴えた。「俺は下山するが、お前はもう一泊して登頂してから降りろ」言う。一緒に降りるべきだと思ったが、下山に要する体力、判断力はあるとの言葉に、父の分まで登頂してこようと考え直した。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ6

父を見送った後、いきさつを見ていた小屋の人々が気遣ってくれるのだが、かえって何だかきまりが悪い。ラジオを持っている人に情報を聞くと太平洋高気圧が弱まり、北から寒波が入り込んでいるとのこと。以前から南海上で台風も発生しているから、早めに行動した方がよさそうだ。次の日は朝から霧の中での単独行動となったが、登山者が多く道もしっかりしている。岩場の急登を登りつめ、3192mの頂上に立った。立ち込めていた霧が一瞬晴れて、父との縦走を予定していた農鳥、間ノ岳までの稜線が、浮かんで消えた。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ7

下山。大勢のパーティをやりすごすと、冷たい霧と岩ばかりの静寂の世界となる。小屋に預けていた荷物を再び担ぎ、大樺沢の雪渓そばを歩いた。1650mの下りに、足が悲鳴を上げ始める。雪解け水の流れる沢に足を浸すと、じんと冷たさがしみた。自らを奮い立たせ、最後の下りへ。人智の及ばぬ自然の深さにむち打たれながら、人はまた山懐に抱かれずにいられないのはなぜだろう。父は、無事に帰宅していた。標高が低い場所の山小屋を使えば高山病に耐えられるはずだ、来年は鳳凰三山に行こう、と地図をにらんでいた。

-DATA-

場所:
山梨県巨摩郡芦安村
交通:
JR甲府駅より山梨交通バス約2時間→広河原ロッジバス停下車
コース:
広河原→御池小屋→肩の小屋→北岳山頂→右俣コース→二俣→大樺沢→広河原
駐車場:
広河原にあり
トイレ:
広河原・御池小屋・肩の小屋・二俣にあり
水情報:
御池小屋…水は豊富
肩の小屋…水場まで徒歩100m、徒歩約20分。1リットル100円で販売(2001年7月末現在)
参考資料:
山と高原地図『甲斐駒 北岳』昭文社
中西俊明『北岳を歩く』山と渓谷社、1993

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