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« 2001年06月トレッキングレポート:トップページ2001年08月 »

弓折岳・鏡平

Jul.31, 2001 西からの槍穂高の眺めを楽しむ

弓折岳・鏡平:イメージ1

鏡平は北アルプス南部の槍ヶ岳の真西約4kmに位置する。弓折岳の東のふもとになり、槍ヶ岳・穂高連峰の眺めがよい。鏡平から70分ほどの登りでたどり着く弓折岳(ゆみおれだけ)は標高は2588mである。槍ヶ岳・穂高連峰の眺めが良いのはもちろん、北の双六岳、はるか西の白山も眺められ、また稜線にはお花畑が続く。高山植物が例年より早めに咲き出していると聞いて出かけることとした。

弓折岳・鏡平:イメージ2

新穂高温泉からの入山となるが、関東からは交通が不便なので、交通機関の接続を良く調べた方が良い。登山口となる新穂高温泉バスターミナルからは西穂高岳へのロープウェイ、槍沢を経て槍ヶ岳、そして今回歩く鏡平・笠ヶ岳方面の3つのルートがある。バスターミナルから道をはさんだ所に登山届、下山届のポストがある。鏡平・笠ヶ岳方面へはバスターミナルから橋を渡って、温泉街を抜け、キャンプ指定地の横を歩いていく。ゆるやかな坂を登って行くと、林道入口の車止めのゲートがあるので、ゲートの横を通って行く。小池新道に入るまではこの左俣林道を歩くことになる。しばらくは舗装された道だが、そのうちに砂利になる。林道は蒲田川の上流の左俣谷に沿っての道で、左の西側は笠ヶ岳周辺の山である。蒲田川は最終的には神通川と名前を変え、日本海に注ぐ。1時間あまりの緩やかな坂をこなして、笠新道登山口で笠ヶ岳方面への急登の道を分ける。道の両側が樹林になり、約10分でワサビ平小屋に着く。小屋の右手前から奥に入ったところがキャンプ指定地になる。小屋の正面に水場がある。湧き水なのだが、水量が多く、ふもとの方なのに冷たいのがうれしい。小屋の名物はこの水を利用した”そうめん”である。ここからさらにブナなどに囲まれた林道歩きが続く。林道は工事用の車両が通るのでカーブなどでは充分気を付け、端を歩くようにしよう。橋があって鏡平方面への小池新道に入るのだが,2001年は小池新道の入口が落石でふさがれているので、道標に従って迂回ルートを歩いた。小池新道の最初の方は大きな岩がゴロゴロしているところを通り登っていく。ここからやっと登山道らしくなる。ここから鏡平まで小池新道は岩が敷きつめられた道が続く。大きな岩の登りが続き、ノドが乾いたなという頃、水量の多い秩父沢に着く。ただここから先にある秩父小沢の方が水量が少ないものの水が冷たいので飲むのは秩父小沢の水がおすすめである。さらに登り雪渓の残るシシウドガ原を経て登る。このあたりから振り返ると、西穂高岳・焼岳方面が望める。この先は明るい樹林の中の登りが続く。所々にクルマユリや黄色のミヤマオトギリが咲いている。

弓折岳・鏡平:イメージ3

さらに登って、鏡平にある鏡池に到着する。鏡池からは槍ヶ岳・穂高連峰の眺めが良い。風がなければ鏡のような池に山々の姿が映る。鏡平山荘はこの少し先で、 1999年に建て替えられた綺麗な小屋だ。ここの名物は”かき氷”。ここから弓折岳へは約70分の登りである。小屋の前の池を渡って、湿原の横を過ぎ、低い樹林の登りとなる。登っていくと木が無くなって、高山植物が増えていく。クルマユリ・ミヤマトリカブトなどが咲く道を登って行く。弓折岳直下をトラバースするように登って行くところに、小さな沢があり、引用に適するが、小さな流れなので気付きにくい。ここからもう少しの登りで、弓折岳分岐に着く。右が双六池方面で、左が弓折岳を経て、笠ヶ岳方面になる。ここから弓折岳へは緩やかな登りで、ミヤマクロユリなどを愛でながら歩くと、弓折岳山頂に着く。槍ヶ岳・穂高連峰から焼岳がよく見え、北にはなだらかな山容の双六岳、空気が澄んでいれば、西のはるか彼方に加賀の名山である白山が見えるだろう。

弓折岳・鏡平:イメージ4

ここから日程の余裕が無ければ来た道を戻ることで1泊2日の日程が組める。余裕が有れば、2泊3日以上で、道なりに歩いて、笠ヶ岳に登って笠新道を降りて新穂高温泉に戻っても良いし、双六池方面へ向かえば西鎌尾根を経て槍ヶ岳へ向かったり、双六岳、三俣蓮華岳など選択肢は多い。鏡池は9月下旬から10月下旬にかけての紅葉も美しいらしいので、また訪れたい。またワサビ平前後の林道などで蚊が多いので虫除けスプレーなどを用意することをお勧めする。新穂高温泉へ降りたとき、汗を流すのに良い温泉を紹介する。無料なので多くを期待できない。温泉をもっと楽しむみたいという方は温泉旅館は数多くあるので、いいところを探して欲しい。

新穂高温泉 上宝村営アルプス浴場
場所:新穂高温泉バスターミナル前
時間:9:30~16:00
料金:無料その他:シャンプー・リンス・石鹸無し(前に使った人が置いていったものが残っていること有り)

写真は上から、弓折岳、鏡池から見た槍ヶ岳・穂高連峰、槍ヶ岳、槍ヶ岳・穂高連峰と鏡平、弓折岳稜線のシナノキンバイ

-DATA-

場所:
岐阜県吉城郡上宝村
タイム:
計5時間50分
新穂高温泉(80分)ワサビ平小屋(90分)秩父沢(50分)シシウドガ原(60分)鏡平山荘(60分)弓折岳分岐(10分)弓折岳
鉄道・バス(夜行):
1.東京(新宿)、横浜、大阪、京都、神戸から出る夜行バスのさわやか信州号 新穂高温泉行きで入る。(要予約)
2.新宿から中央線の夜行急行「アルプス」にて早朝松本下車、松本駅前バスターミナル松本電鉄バス,濃飛乗合自動車の新穂高温泉行きに乗り終点新穂高温泉下車。
鉄道・バス(昼間):
1.新宿から中央線の特急「あずさ」にて松本下車、以下は(夜行)2と同じ。
2.大阪、京都、神戸から新幹線で名古屋へ。名古屋から特急「ひだ」、または新名古屋から名鉄特急「北アルプス」にて高山下車、以下は(夜行)2と同じ。
車:
1.関東方面からは中央高速を利用。岡谷ジャンクションから長野道に入り、長野道を松本インターで降り、 国道158号、国道47号を西方向へ向かう。栃尾温泉から県道475号に入り新穂高温泉へ。
2.中京、近畿から高山へ、国道47号を経由して、栃尾温泉から県道475号に入り新穂高温泉へ。
駐車場:
新穂高温泉バスターミナル手前に村営駐車場(無料)
自動販売機:
新穂高温泉
宿泊:
新穂高温泉、ワサビ平小屋、鏡平山荘
キャンプ指定地:
新穂高温泉、ワサビ平(鏡平は幕営禁止)
水場:
笠新道登山口、ワサビ平小屋前、秩父沢、秩父小沢、鏡平山荘(宿泊者以外は有料)
トイレ:
新穂高温泉バスターミナル、ワサビ平小屋、鏡平山荘
携帯電話:
新穂高温泉周辺、弓折岳稜線は良好
公衆電話:
新穂高温泉バスターミナル

南アルプス 北岳(3192m)

Jul.24-26, 2001 高山病の先に見えるもの

南アルプス 北岳(3192m):イメージ1

父が、南アルプスの北岳へ行かないかと誘った。日本で2番目に高い山だ。来年定年を迎える父は、過去に3回北岳、農鳥岳、間ノ岳からなる白峰三山の縦走を試みてきたが、3回とも高山病らしい症状が現れ下山してきた経緯がある。「3000m級の山への最後の挑戦」と意気込む父と甲府から2時間バスに揺られ、広河原に到着した。青空を背に、純白の雲をまとった峰がそそり立つ。水場でまろやかな清水に舌鼓を打った後、コマドリのコーラスが響く森へと分け入った。尾根道を覆う樹林が、夏の日差しをやわらげてくれる。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ2

入道雲の下、ゆっくりと高度を上げて御池小屋へ到着。プレハブの仮設小屋だが、清潔で案外快適だ。荷物を置き、散策に出る。桃色の頬のウソという小鳥が、フィッ、フィッと鳴きながら草の実をついばんでいる。足元に目をやると、草むらから草むらへ、赤茶色の10センチほどのノネズミが走り去っていった。夕方、赤く染まる雲に稲光が走った。小屋に入るやいなや、滝のような雨がトタン屋根を打つ。晴天が続くという梅雨明け10日を狙って山行の日程を組んだものの、夏山での夕立ばかりは避けようがない。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ3

午前4時、ルリビタキの歌声で目が覚めた。支度を終え外に出ると、朝日を浴びて赤く輝く北岳の山頂が見える。小屋で朝食をとった後、5時半に出発。ここからは「草すべり」という名のとおり、両岸を草が覆う直登となる。色とりどりの高山植物のお花畑が目を奪うが、木陰は消え、強烈な紫外線が肌を刺す。少しでも影になりそうな場所を探し、こまめに水分を補給しながら進む。振り向くと昨夜泊まった御池がはるか下方に光り、奥には鳳凰三山の雄姿が青く連なっている。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ4

草すべりを抜け、ようやくシラカバの樹林帯に入った。木漏れ日の下、落ち着いて休憩を取れるようになる。蛇行する道を行き、森が切れると、再びハイマツなど、丈の低い植物の生える場所となった。頭痛の兆候がある、と父。いつも海抜2600m付近から、高山病の症状が現れ始めるという。様子をみながら時間をかけて登り、叙々に高度に体を慣らすことにする。ほかの登山者に道をゆずりつつ、道端の草花やチョウを愛でる登り方も悪くないものだ。コースタイムにとらわれず、気に入った場所で高山の自然を満喫できる。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ5

急に風が冷たくなり、稜線に出た。どっしりした山頂が目の前にそびえ、甲斐駒岳の荒々しい岩肌や霞に浮かぶ富士山も展望できる。吸い込まれるような谷間を見下ろす稜線歩きや、岩場に打ち込まれた鎖を握る感触は、一歩一歩、自身の体を運んでこそ味わえるものだ。肩の小屋に到着してお昼を過ぎたころ、父が本格的な頭痛を訴えた。「俺は下山するが、お前はもう一泊して登頂してから降りろ」言う。一緒に降りるべきだと思ったが、下山に要する体力、判断力はあるとの言葉に、父の分まで登頂してこようと考え直した。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ6

父を見送った後、いきさつを見ていた小屋の人々が気遣ってくれるのだが、かえって何だかきまりが悪い。ラジオを持っている人に情報を聞くと太平洋高気圧が弱まり、北から寒波が入り込んでいるとのこと。以前から南海上で台風も発生しているから、早めに行動した方がよさそうだ。次の日は朝から霧の中での単独行動となったが、登山者が多く道もしっかりしている。岩場の急登を登りつめ、3192mの頂上に立った。立ち込めていた霧が一瞬晴れて、父との縦走を予定していた農鳥、間ノ岳までの稜線が、浮かんで消えた。

南アルプス 北岳(3192m):イメージ7

下山。大勢のパーティをやりすごすと、冷たい霧と岩ばかりの静寂の世界となる。小屋に預けていた荷物を再び担ぎ、大樺沢の雪渓そばを歩いた。1650mの下りに、足が悲鳴を上げ始める。雪解け水の流れる沢に足を浸すと、じんと冷たさがしみた。自らを奮い立たせ、最後の下りへ。人智の及ばぬ自然の深さにむち打たれながら、人はまた山懐に抱かれずにいられないのはなぜだろう。父は、無事に帰宅していた。標高が低い場所の山小屋を使えば高山病に耐えられるはずだ、来年は鳳凰三山に行こう、と地図をにらんでいた。

-DATA-

場所:
山梨県巨摩郡芦安村
交通:
JR甲府駅より山梨交通バス約2時間→広河原ロッジバス停下車
コース:
広河原→御池小屋→肩の小屋→北岳山頂→右俣コース→二俣→大樺沢→広河原
駐車場:
広河原にあり
トイレ:
広河原・御池小屋・肩の小屋・二俣にあり
水情報:
御池小屋…水は豊富
肩の小屋…水場まで徒歩100m、徒歩約20分。1リットル100円で販売(2001年7月末現在)
参考資料:
山と高原地図『甲斐駒 北岳』昭文社
中西俊明『北岳を歩く』山と渓谷社、1993

本白根山トレッキング

Aug.25, 2001 火口跡を巡る

白根山は日本百名山でもあり草津、万座、志賀の温泉郷に囲まれた人気の山である。そのため新緑やお盆、また紅葉の季節には沢山の観光客で賑わう。冬には芳ヶ平を基点に良く遊び回っている地域だが夏はあまり近づいたことがなかった。この冬パルコール嬬恋スキー場からこの本白根山に登り火口湖のひとつ鏡池に滑り込んだ。その時に見た何処か外国の砂漠地帯のような荒涼とした火口跡の連なりを確かめたく、またさらにルート開拓するための参考に、ある程度の混雑は覚悟して草津へ向かった。

本白根山トレッキング:イメージ1

関越高速を渋川で降りR145を西走する。長野原町でR292草津道路に折れると30分ほどで草津町に入る。さらに数年前から無料になった志賀草津道路を登りきり道が水平になった頃に白根火山センターに着く。尚、この志賀草津道路は途中亜硫酸ガスの噴気地域を走るため駐停車禁止である。実際に死亡事故も起こっているので注意が必要である。天気が良いと高原を貫く道路の先に硫黄ガスで木の生えぬ白根山(本白根山とは別の山)の火口壁が見える。この向こうには濃い緑の水を湛えた火口湖があり観光スポットとなっている。今日もその遊歩道に人の列が続いていた。白根火山センターには立派な建物のお土産屋などもあり観光バスがひっきりなしに出入りしている。蓬ノ峰を左に見て弓池を左折する。しばらく進むと白根火山ロープウエイ山頂駅に着く。

本白根山トレッキング:イメージ2

ここも雪のない季節は初めてだ。一面真っ白く冷たい強風の吹く時しか知らない。そこも今日は濃い緑の中に埋もれている。冬は草津スキー場本白根ゲレンデとなる斜面に架かるリフト脇に登路がある。急登とはまだ言えない道を歩くとすぐにそれは林の中に入り見通しが悪くなる。20分ほど歩くとクマザサを分けるように木道が現れる。これで登りらしい道は終わったようなものだ。モミやシラビソ、ツガの林を抜けると急に路岩が転がるザクザク道になる。正面にゆったりとした火口跡の底部がひろがって、低い草木が微妙にトーンを変えて緑のパッチワークのようだ。火口跡もひとつだけではなく複数が重なり合っている。また構造土といわれる氷河期の名残、縞状に小さな岩が堆積した様子も分かる。余談だがこの構造土は乗鞍岳辺りでもよく見られたらしいが踏み荒らされてしまいこの草津のものは貴重だということだ。また大雪山系トムラウシ周辺にも見られるという話を聞いた。

本白根山トレッキング:イメージ3

ガレ場に一面コマクサが咲いていた。これは地元の小学生や有志が丹念に育て移植したものだ。もう時期が遅くだいぶ色があせていた。底部の緑はクロマメノキやコケモモで、たっぷりと実を付けていた。しかしここでの採集は禁止である。木道を歩き火口壁のひとつを登り切ると展望の利く高見に出る。三角点がありここを本白根の山頂と考えるらしい。さらに北へ下ると万座温泉に行くことができる。

本白根山トレッキング:イメージ4

登路を戻り底部の分かれ道を右にとって鏡池を目指す。大岩の脇を登ると南面の展望が開ける。さらにハイマツ帯を越えればすぐに鏡池を作る火口壁に出る。冬に頭しか見えなかった標識も背丈ほどの大きさだった。火口壁を半周すると鏡池の湖畔に着く。雨の日が続いた直後で水が多い。ここも構造土の作用で亀甲模様が湖底に見えるはずだが、水量と光線の加減で確認できなかった。しかし半年前パウダースノーの斜面を滑り降りた思い出の場所なので再び来たということだけで充分にうれしかった。ビールを開け、弁当を食べ、じっくりと湖畔で夏の一日を堪能した。

本白根山トレッキング:イメージ5

鏡池から再び樹林の中の急下降となる。途中右に分かれ道がありそこを行くと本白根最大の太陽火口を通って殺生河原に出られるというが、現在はガスのため通行禁止である。しばらくすると振子沢を渡り、谷の対岸にロープウエイが見えるともうすぐである。

-DATA-

場所:
群馬県吾妻郡草津町
交通:
JR長野原草津温泉口駅よりバスで草津温泉へ、さらに乗り換えて白根火山ロープウエイ山頂駅。
駐車場:
白根火山ロープウエイ山頂駅付近に数十台可。無料。
トイレ:
白根火山ロープウエイ山頂駅にあり。
白根山:
白根火山センターより徒歩20分。駐車料410円。湯釜と呼ばれるエメラルドグリーンの火口湖中央部から噴気が上がる。
芳ヶ平:
白根火山センターより徒歩1時間。湿原の点在するササ原。静かなところで紅葉時が特に美しい。芳ヶ平ヒュッテがあり休憩や食事、宿泊もできる。
バリエーション:
草津スキー場よりリフト、ロープウエイを乗り継ぎ本白根山を散策、その後弓池を経由して芳ヶ平から草津スキー場に戻る。行程およそ5時間。(休憩等含まず)
参考:
昭文社 エアリアルマップ 山と高原地図13「志賀高原・草津」

北燕岳・北燕平

Jul.22, 2001 コマクサ大群落の北燕岳とお花畑の北燕平

北燕岳・北燕平:イメージ1

北燕岳は燕岳との間にコマクサの大群落があることで知られる。北燕平は北燕岳の北側にある。燕岳から北燕岳は花崗岩(かこうがん)と砂礫が多く、コマクサが多いのに対し、北燕平はチングルマ・ハクサンフウロなどが多いお花畑となっている。表銀座の縦走路からはずれていることから、歩く人が少なく、静かな山歩きが出来る。

北燕岳・北燕平:イメージ2

北燕岳は、燕岳から北へ15分ほど下ってから登り返したところにある。燕岳までは中房温泉登山口から合戦尾根を登るコースが一般的で、中房温泉から燕岳は「燕岳2763m」「夏の燕岳」のレポートを参照していただきたい。中房温泉から登って、燕山荘もしくは燕山荘横のキャンプ指定地に泊まって、翌日に北燕岳・北燕平を歩くと良いと思う。燕山荘から燕岳は30分の登りである。燕岳のピークに立つとすぐ北に燕岳のミニチュア版のようなピークが見える。それが北燕岳で、燕岳と同様の花崗岩で成り立っているピークだ。燕岳の三角点の所から北へ下っていき、踏み跡をたどって北燕岳へ向かう。ピンク色に見える斜面が近付いてくると、コマクサ群落を守るために登山道がロープに囲われるようになる。登山道が三又に分岐する点が2箇所あるが左へ左へとたどっていくとコマクサが急斜面に大群落を作っているのを間近に見ることが出来る。

北燕岳・北燕平:イメージ3

写真で見てもらってもわかりにくいと思うが、本当に急な斜面で直径1cm以下の小石でなりたっている斜面にコマクサが花を咲かせている。冬には数メートルの積雪がある燕岳周辺だが、このコマクサの咲く急斜面だけは雪が積もることができないというほど、急な斜面なのだ。群落を作っているコマクサは20年ほどたった株だという。水分・栄養分が少なく、かつ急な斜面で他の高山植物が育つことの出来ないというのに、コマクサが 20年もここに根付いているというのは、驚異と言うしかない。このコマクサ群落はいつまでも守っていきたいと感じさせる。コマクサ群落に近い登山道は行き止まりとなるので、三叉路まで戻り、北燕岳へ向かって登っていく。間もなく、「この上が北燕岳のピーク」という道標があるので岩を登るとすぐピークだ。燕岳の頂上より広く、燕岳より立山・剱岳、白馬方面の眺めが良い。もちろん、西から南西方面には水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳、槍ヶ岳、穂高連峰の眺めが良い。

北燕岳・北燕平:イメージ4

眺めを楽しんだら、先程の道標まで下り、餓鬼岳方面の指示に従って北燕平へ向かう。歩いていくとここまでの砂礫の道でなく、咲いている高山植物も全く違う。ハクサンフウロの花や、チングルマの果穂が目立ち、少し下っていくとクルマユリ、そして今年は暑い日が早くやってことと、梅雨明けが早かったことでもう秋の花と呼べるミヤマトリカブトが咲いている。北燕岳から離れていくので下りの坂になり、しばらくすると登り返す道となる。北燕平とは名ばかりでアップダウンが多い。花を楽しんで歩き、その日の内に中房温泉へ戻るのなら、もと来た道を戻り燕山荘を経由して合戦尾根を下るか、北へ進んで東沢乗越から東へ中房川沿いに降りて中房温泉へ出る2つのルートがある。中房川沿いのルートは大雨の後は増水して危険だが、雨がしばらく無かったときは安全で静かな山歩きが出来る。また日程に余裕があるのなら、東沢乗越からさらに北へ登って、東沢岳、餓鬼岳を経て、白沢登山口へ降りることもできる。

北燕岳近くのコマクサ群落は大規模で美しいので、燕岳を訪れた際には是非足を伸ばして欲しい場所だ。そしてコマクサの可憐さ、生命力の強さを感じて欲しい。

写真は上から、燕岳から見た北燕岳、コマクサ群落、コマクサ花のアップ、北燕平のクルマユリ、北燕平のミヤマトリカブト。

-DATA-

場所:
長野県南安曇郡穂高町
タイム:
計2時間: 燕山荘(30分)-燕岳(10分)-コマクサ群生地(5分)-北燕岳(15分)-北燕平(15分)-北燕岳(5分)-コマクサ群生地(10分)-燕岳(30分)-燕山荘
鉄道:
夜行:
1.新宿から中央線の夜行急行「アルプス」にて早朝穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ。
2.大阪、名古屋から夜行急行「ちくま」にて松本下車、急行「アルプス」に乗り換え穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ。
昼間:
1.新宿から中央線の特急「あずさ」にて穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ。
2.大阪、京都、神戸から新幹線で名古屋へ。名古屋から中央線の特急「しなの」にて穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ。
車:
関東、中京、近畿方面からは中央高速を利用、岡谷ジャンクションから長野道に入り、長野道を豊科インターで降り、1時間15分で中房温泉登山口近くの駐車場着。
駐車場:
中房温泉登山口の手前、町営で無料、駐車は2日間まで。
売店:
燕山荘
自動販売機:
中房温泉登山口の売店
宿泊:
燕岳稜線 燕山荘(えんざんそう)
中房温泉登山口の手前徒歩10分 中房温泉有明荘
キャンプ指定地:
燕岳稜線 燕山荘の横
水場:
燕山荘に宿泊時は洗面所の水を利用、幕営時は燕山荘にて購入
トイレ:
燕山荘
携帯電話:
信州側(長野県側)の街が見渡せる所は通話可能。
公衆電話:
燕山荘

燕岳(追記)

花崗岩が造り出した景観とコマクサ群落の燕岳 Jul.21, 2001

燕岳(追記):イメージ1

燕岳は白い花崗岩(かこうがん)の大きな岩が印象的な山である。コマクサの大群落があることと合わせ、北アルプスでは特異な山と言える。また標高もそれほど高くなく、危険な個所も少ない登りやすい山であるので、長野県の中学生が集団登山する山である。登山者にとっては、燕岳から槍ヶ岳への表銀座コース、燕岳から常念岳、蝶ヶ岳へのパノラマ銀座コースの両者の始点として重要な山である。

燕岳(追記):イメージ2

穂高駅からバスもしくはタクシーで中房温泉登山口へ向かう。左側の奥に売店があって、その右側に登山届ポストがあり、登山道が始まる。ここの標高は 1500m弱で、燕岳頂上2763mまで標高差約1300m。ここから合戦尾根の登りは合戦小屋まで樹林の中の登りが続く。ここ合戦尾根は北アルプス3大急登のひとつに数えられるが、登る途中に休憩にちょうど良いベンチがあるので、ゆっくり登っていけば問題なく登ることが出来るだろう。ベンチは合戦小屋まで登りの約40分ごとにある。第一ベンチには右側に降りたところに合戦尾根唯一の湧き水があるので、水を補給していこう。第三ベンチを過ぎると所々で視界が開け、北アルプスの手前にある山々が見える。合戦小屋までの登りで見られる花はゴゼンタチバナ、ギンリョウソウなどである。富士見ベンチは実際には富士山が見えるわけではない。ベンチで休みながら登りをこなすと、合戦小屋に到着である。宿泊は出来ない小屋で、名物はスイカ、その他ネクタリン、青リンゴもある。合戦の頭を過ぎて道はわずかに緩やかになり、コイワカガミ、チングルマが咲く少し開けたところを登って行く。更に登ると、テント場が見え、左へ登ると、正面に槍ヶ岳、穂高連峰、双六岳から立山までの北アルプスの主峰が見える。すぐ左に燕山荘がある。夏は午後にはガスが出だして、遠くの眺めが楽しめないので、登山口を出来るだけ早く立つことをお勧めする。

燕岳(追記):イメージ3

燕山荘もしくはテント場に荷物を置いたら、燕岳へ向かおう。往復1時間ほどである。燕岳へは砂礫の道で所々にコマクサが咲いている。登山道から離れたところにコマクサが咲いている箇所もあるが、写真を撮ろうと登山道からはずれてはいけない。砂礫の斜面が崩れて、コマクサの種が定着できなくなり、何人もの人が足を踏み入れる、最悪の場合は砂礫がコマクサの種や株ごと流出してしまい、その部分のコマクサ群落が全滅してしまうのだ。コマクサの写真を間近で撮りたければ、燕岳の北側で登山道のそばに多く咲いているので、そちらを訪ねることをお勧めする。詳しくは「北燕岳・北燕平」のレポートを参照して欲しい。燕岳を目差して登って行くと、白っぽい大きな花崗岩の奇岩が立ち並んでいる。動物のように見える岩もあって、何に見えるか考えながら歩くと登りも苦ではなくなってくる。写真のようにまさにイルカがジャンプしているかのような「イルカ岩」、大きな岩に2つ穴が開いている「メガネ岩」など既に名前が付いている岩もある。この2つは登りよりも下りの方が見つけやすいだろう。大きな岩の岩場を登って行くと狭い頂上にたどり着く。西から南西方面には鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳、そして鋭い峰を持つ槍ヶ岳、荒々しい穂高連峰がよく見える。南方向には登山道が続く向こうに大天井岳(おてんしょうだけ)が見える。今夜は燕山荘かその前のテント場泊まりとなる。燕山荘には喫茶サンルームがあって、生ビールやワインを楽しむことが出来る。また燕山荘に泊まっての楽しみは、夕食時、朝食時にオーナーから燕岳の魅力の話が聞けることと、夕食時または夕食後にオーナーが吹くアルペンホルンを聴くことが出来ることだ。翌朝、晴れていると富士山や南アルプスまで見えることがあり、雲海が広がる安曇野の平野の向こうに昇ってくる朝日を見ることもできる。

燕岳(追記):イメージ4

燕岳からは、日程に余裕があれば槍ヶ岳への表銀座コース、燕岳から常念岳、蝶ヶ岳へのパノラマ銀座コースを歩くことをお勧めする。両者とも槍ヶ岳などの山を眺めながらの稜線歩きが楽しめる。燕岳と合戦尾根は、「燕岳2763m」のレポートにもあるように秋の紅葉も美しい。中房温泉へ下山後に汗を流すのに良い温泉は、「燕岳2763m」でも紹介されている有明荘である。
中房温泉 有明荘 中房温泉登山口から700m 約10分舗装道を下る。
(外来温泉 大人600円 中学生以下300円)
もちろん宿泊も可能。

写真は上から、燕岳、白花のコマクサ、イルカ岩、メガネ岩、燕岳からの穂高連峰・槍ヶ岳

-DATA-

場所:
長野県南安曇郡穂高町
タイム:
計6時間
中房温泉登山口(40分)第一ベンチ(30分)第二ベンチ(35分)第三ベンチ(40分)富士見ベンチ(35分)合戦小屋(20分)合戦ノ頭(40分)燕山荘(30分)燕岳(30分)燕山荘
鉄道・バス:
夜行:
1.新宿から中央線の夜行急行「アルプス」にて早朝穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ
2.大阪、名古屋から夜行急行「ちくま」にて松本下車、急行「アルプス」に乗り換え穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ
昼間:
1.新宿から中央線の特急「あずさ」にて穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ
2.大阪、京都、神戸から新幹線で名古屋へ。名古屋から中央線の特急「しなの」にて穂高下車、バス・タクシーで中房温泉登山口へ
車:
関東、中京、近畿方面からは中央高速を利用、岡谷ジャンクションから長野道に入り、長野道を豊科インターで降り、1時間15分で中房温泉登山口近くの駐車場着
駐車場:
中房温泉登山口の手前、町営で無料、駐車は2日間まで
自動販売機:
中房温泉登山口の売店
売店:
燕山荘,合戦小屋
宿泊:
燕岳稜線 燕山荘(えんざんそう)
中房温泉登山口の手前徒歩10分 中房温泉有明荘
キャンプ指定地:
燕岳稜線 燕山荘の横
水場:
中房温泉登山口の売店前、合戦尾根第一ベンチ、燕山荘に宿泊時は洗面所の水を利用、幕営時は燕山荘にて購入
トイレ:
燕山荘,合戦小屋,中房温泉登山口
携帯電話:
信州側(長野県側)の街が見渡せる所は通話可能
公衆電話:
燕山荘

岩山

Jun.14, 2001 盛岡市を一望に

盛岡市の中心から東方約2.5キロの位置にある岩山は、標高340メートル。1人でも家族でも行ける、エコノミーなトレッキングスポットです。「盛岡市民の憩いの場」的な場所なのですが、遠方の方でも、何かの用事で近くに来られた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。決して後悔はしないはずですよ。

岩山:イメージ1 岩山:イメージ2 

東京方面からなら、東北自動車道を北上。盛岡南ICでおりて、県道36号線を都南方向に(東北新幹線が通っている方向です)国道4号線にぶつかったら、さらに北上。盛岡市内に入り、北上川にかかる南大橋を渡ります。そこから3キロほど先に行きますと、岩山入口の案内板のある十字路がありますので、右折直進してください。そのまま車で頂上まで登ってしまうこともできるのですが、素晴らしい自然にふれながらのトレッキングを楽しむのなら、道路中ほどにある岩山登山道の駐車場で車を降りましょう。そこから先は徒歩で500メートル、時間にしておよそ15分のミニミニ登山道。街のすぐ近くとは思えないほどの自然が迎えてくれます。

岩山:イメージ4 岩山:イメージ3 


砂利が敷き詰められた登山道を登って行くと、周囲には四季折々の木々と草花。そして、様々な鳴き声の野鳥たち。途中に設置された案内板によると、キクイダキ、エナガ、モズ、ヒガラ、キジバト、トビ、センダイムシクイなどの鳥達が、四季折々、入れ替わり立ち代わりやって来るらしいです。そして、私が訪れたのは早朝なのでしたが、すれ違う人々は皆きもちよく「おはよう」と声をかけてくれました。気軽なコースだけあって、年配の方が多い。途中、道が二手に分かれており(どちらも頂上に続く道なのですが)左方は「啄木詩の道」として、郷土の詩人石川啄木の歌碑が、道の途中途中に配置されています。彼の詩を味わいながら、思いゆかしく頂上へと向かうのも一興では。

岩山:イメージ5 


右の道を選んだ私は、キャンプ場を横に見て、丸太を組んで作られた階段をエッチラオッチラ登って行きます。気持ち良い汗が出かかったあたりで頂上へ。左方にはレストランと茶店、展望所にトイレ、駐車場など。そして右方には、いちだんと高い展望台がそびえたっています。そこからの眺望の素晴らしいこと。晴れた日には盛岡市と取り囲む山々を一望に見渡すことができます。岩手山に姫神山、早池峰山に駒ヶ岳。いやあ、360度の大パノラマ。これが本当に街中から数十分の場所なのかと、我が目を疑うほどです。

なお岩山の周囲には、動物公園やパークランド、ゴルフ場に競馬場などの娯楽施設もあります。家族みんなで楽しんでみてはいかがでしょうか。お車をお持ちでない方には、盛岡駅からの定期観光バスがあります。

-DATA-

場所:
岩手県岩手郡西根町
交通:
東北自動車道、西根ICから、国道282号線。標識にしたがってすぐ近くの侵入路を右折。
駐車場:
有り
トイレ:
有り
他設備:
交流プラザ焼走りの湯(入浴のみは500円、宿泊も有り)キャンプ場、オートキャンプ場、岩手山銀河ステーション天文台、スノーモービルランド等(すべて有料)
問い合わせ先:
岩手山焼走り国際交流村 0195-76-2013

-DATA-

場所:
岩手県岩手郡西根町
交通:
東北自動車道を北上。盛岡南ICから県道36号線を都南方向に。
国道4号線にぶつかったら北上、15分ほどした所にある交差点を右折(案内板有り)岩山頂上へ。
もしくはJR盛岡駅からの定期観光バス。
駐車場:
有り
トイレ:
有り
他設備:
売店、展望台、レストラン、付近に遊園地(岩山パークランド)動物園、ゴルフ場、競馬場、植物園、シベリア抑留保存館などの施設有り。

一ツ石山

Jul.14, 2001

一ツ石山:イメージ1

梅雨が10日も早く明けてしまい、連日35℃以上の日が続き身体は茹だりそうでまいっている。どこか涼しいところでキャンプと思い野反に出かけた。志賀高原から野反湖までの群馬~長野県境は数年前から長野県山ノ内町と群馬県六合村とで登山道の整備が行われ立派な縦走コースとなった。私も六合村山岳会と供に野反湖~大高山の草刈りに参加したことがあり親しみをもっている。

一ツ石山:イメージ2

関越道を渋川インターチェンジで降りR17を北上する。鯉沢でR292に乗り中之条町へ。ここから四万温泉方面に右折するのだが途中のコンビニで買えると思ったビールが売っておらず、さらに岩島まで車を走らせる。無事目当てのものは買えたが往復で40分ほどかかった。やはりこの季節はクーラーボックスが欲しい。どうしても暖まってしまうのを心配してギリギリまで買わずにいて結局こんな無駄足をしてしまう。気を取り直して再び四万温泉方面に向かう。しかし四万温泉まで行かず、赤い花園橋を渡り暮坂峠を目指す。途中の沢渡温泉は「草津の上がり湯」と呼ばれ肌に優しい。つづら折れの道を登り詰めると暮坂峠、若山牧水の歌碑や散策コース、休憩所、トイレなどがある。以前紹介した「暮坂峠~川原湯温泉縦走」の取り付きでもある。峠を下ってしばらく行くと右側に、世立集落とを結ぶ村道の入り口がある。これができたおかげで30分は短縮できるようになった。世立から花敷温泉、尻焼温泉を経て小倉集落へ。尻焼温泉は川底から温泉が湧き出ていて、長笹川全部が温泉となっているので有名だ。以前、小樽の土産物屋の主人に日本一の温泉だと言われたことがある。小倉集落のはずれで右折して白根改善学校のグラウンドの脇でゲートが現れる。ゲート手前に4、5台駐車可能。ちなみに白根改善学校は秋に100kmマラソンというとてつもないことしており、あの長島一茂氏も在籍していた。

一ツ石山:イメージ3

ゲートから登山口まではおよそ5km、1時間の歩き。左手に北沢の深い谷が走る。小さなカーブを越えると対岸に熊倉集落、その向こうに以前紹介した熊倉尾根や芳ヶ平、草津白根山が見えた。今は青々とした森が広がりわずか半年前のことが信じられないほどである。道が二股に別れたところが登山口である。最近立派な案内板が設置され、志賀草津付近のコースタイムや施設が描かれてある。現在の位置は志賀高原と野反湖を結ぶ線をT字の横棒とすると、縦棒の下端あたりである。ここを登り上げると東西の従走路に突き当たる。一ツ石山はその少し手前にある。

一ツ石山:イメージ4

いきなりの急登で始まった。朝7時前だというのにもう陽がギラギラしている。涼しいところでキャンプのはずが、歩き出してわずか5分でアゴが出た。考えてみると雪の季節は何度も登っているが、無雪期は初めてである。雪が無い分斜度もきつい。東側の植林はまだ木が小さくその頭越しに照りつける太陽で汗がだくだくと流れた。道はきれいに刈られて広い。ウ○コ山に向かって真っ直ぐにルートがつけられていた。このウ○コ山というのは数年前の冬に大高山に登った帰り、どうしても我慢できなくなった相棒がここでしゃがんだところウ○コが転がり落ちて自分の履いていたスキーに付いてしまったところから名付けた。そのウ○コ山直下はさらに急になりロープが張ってあった。

一ツ石山:イメージ5

記憶ではウ○コ山さえ登ればこっちのもの、のはずだった。山頂を巻いて鞍部に出ると後はなだらかな尾根道。それは雪の季節の話だった。樹林の中の急登がまだ続く。樹林の中なので風もなく、視界も効かない。張られたロープに身体を引き上げ、フウフウ言いながらやっと視界の開けた山頂に着いた。一ツ石だと思ったが様子が違う。さらに高く山並みが続いている。積雪期には尾根の一部に吸収されてしまって目立たなかった小ピークも、雪が融けて自己主張しているようだ。見慣れた角度の白根山に今どこにいるか見当がついた。右手の斜面は雪崩の起こる所だが今はそんな雰囲気のかけらもない深い森に覆われている。再び登山道は樹林に飲み込まれる。再びロープが現れ、掴まりながら登ると今度こそ一ツ石山頂に着いた。東側の深いササが切り開かれて視界が効く。野反の大高山が冬よりも優しい形で見えた。ここから一度下りまたまた現れた急登のロープを登り返すと縦走ルートにぶつかる。合流点にも立派な標識があった。登山口からおよそ3 時間だった。後は涼しいところでキャンプだ。しかしこんなに苦労させられるのなら素直に野反湖キャンプ場に直行した方が良かったのかも知れない。恨めしい早すぎる梅雨明けだった。

-DATA-

場所:
群馬県吾妻郡六合村
交通:
JR長野原草津温泉駅よりバス「尻焼温泉」行き終点「尻焼温泉」下車。それより徒歩およそ2時間。タクシー利用の場合は長野原草津温泉駅から。マイカーが圧倒的に便利。
駐車場:
ゲート前に数台可。
トイレ:
なし。
水場:
なし。
温泉:
多数あり。お勧めは関晴館別館、あの美坂氏もお気に入りの宿。500円。長笹川尻焼温泉は無料。
コース:
ゲート ~(1時間)~ 登山口 ~(2時間)~ 一ツ石山頂
キャンプ場:
野反湖キャンプ場 1人1200円。一ツ石山より大高山を経て3時間。
避難小屋:
伍三郎小屋
かなり荒廃しているのでテントの方が快適 小高山と大高山の鞍部。一ツ石山より30分。水場は小屋前の沢を下降。

古河総合公園

Jul.14, 2001 大賀ハス咲く夏に歩く

古河総合公園:イメージ1

古河総合公園は桃林と大賀ハスで特に有名である。古河(こが)市は茨城県の南西端に位置し、すぐ西は埼玉県で、すぐ北は栃木県である。古河総合公園は古河市の市街から少し南の住宅や田畑にかこまれたところにある。約21ヘクタールの園内は春のモモに始まり、秋のハギまでいろいろな花が咲く。ハス田の大賀ハスが暑い日が続いたために例年より早く咲き出したと聞いて、出かけてみた。

古河総合公園:イメージ2

車で行っても、タクシーで行っても公園の東端の駐車場がスタート地点となる。公園に入ったらまず南へ行く。四つ角で右に曲がると、古河公方館跡と、古い家屋を移築した県指定の文化財がある。まっすぐ行くと、池にかかる吊り橋を渡る。池にはトンボが数種類飛んでいて、卵を生みつけるのに精を出しているようだ。池の西側は芝生の広場になっていて、気持ちよく歩くことが出来る。池のそばにはキキョウも咲いている。花がわずかに残っているフジ棚を見ながら北へ行くと、ショウブ田があるのだが、花菖蒲(ハナショウブ)はほとんど終わっている。その隣にハス田があって、0.5ヘクタールのハス田は大賀ハスで埋め尽くされている。背の高い大賀ハスが美しくかつ大きな花を咲かせている。広いハス田では、場所によって咲き具合が違うようで、まだ咲いておらずつぼみが多いところもあるし、ハスは4日間にわたって花を咲かせるので、意外に長い期間、花を楽しむことができそうだ。大きく開いた蓮の花には蜂が蜜を求めて飛来し、ツンと尖ったツボミにはトンボが羽を休めにやってくる。大賀ハスは地下6mから発見された約2000年前のハスの種子を発芽させ育てたもので、発見者の大賀一郎博士にちなんで、その名が付けられた。発見されたのは昭和26年(1951年)で、古河総合公園には昭和50年(1975年)に株分けされ、それが0.5ヘクタールのハス田全体に広がった。ハス田の東側は桃林で、数種類の桃が約2000本あり、3月中旬から4月中旬に花を咲かせる。桃林から南へ行くと、スタート地点に戻る。

古河総合公園:イメージ3

ハスの花を目当てに歩く場合に気を付けなければならないのは、ハスの花が開いているのは午後2時頃までであり、また花の形が美しいのは朝9時くらいまでなので、早めに出かけることである。2001年は早く梅雨が明け、太平洋高気圧の勢力が強いこともあって、私が歩いた日は非常に暑い日であった。強い日射し対策として、帽子と帽子を飛ばされない工夫、日焼け止め、などを用意した方が良いだろう。暑さを避け、綺麗なハスの花を見るためにも、朝早く出かけると良いと思われる。2001年はハスは早く咲き出したが、例年の見頃は7月中旬から8月中旬である。

古河総合公園:イメージ4

ショウブ田の花菖蒲は6月上旬から下旬に見頃となり、6月から7月にフジ棚の東側にある1000株のアジサイが花を咲かせるという。8月終わりから9月には古河公方館跡の東南にある萩が花を連らねるらしい。今度は桃の花が咲きそろった頃に歩いてみたいと思った。

写真は上から大賀ハス、池とトンボ、藤とハス田、大賀ハス群落、池のほとりのキキョウ

-DATA-

場所:
茨城県古河市
タイム:
計45分 公園入口(10分)吊り橋(10分)ハス田(ハス田1周15分)ハス田(10分)公園入口
鉄道・バス:
JR東北本線古河駅からタクシー8分
車:
東北自動車道加須インターから栗橋・古河方面へ国道125・4・354号経由約15km
駐車場:
無料150台
自動販売機:
レストランに有り
トイレ:
入口近くにあり
携帯電話:
良好

浅間隠山トレッキング

Jul.08, 2001 梅雨の晴れ間の山歩き

梅雨の合間の晴天、まして週末といえば何よりも貴重な一日となる。アプローチタイム、行動時間、ロケーション、温泉等々含めどこに行こうかと思案する。悩んだ末、雄大な浅間山の裾野に広がる高原を眺め、登山口に温泉もあり2時間ほどで登ることのできる浅間隠山に決めた。アプローチも家から1時間半程だ。

浅間隠山トレッキング:イメージ1

高崎からR406を北上する。榛名町、倉淵村と烏川に沿って進む。車窓から心地良い川風が走り抜けていく。対向車を見るとどの車も窓を閉め切っている。なんともったいないことだろう。倉淵村から道は二つに分かれる。左に取ると二度上峠を抜けて北軽井沢に至る。その二度上峠にも浅間隠山登山口がある。こちらの方が登行時間が少ない。しかしきっぱりとハンドルを右にきった。吾妻町に入り旧関所跡の大戸で左折し浅間隠温泉郷へ向かう。ここには泉質のそれぞれ違う薬師、鳩ノ湯、白雲の3軒の温泉宿がある。どこも日帰り入浴が可能だ。浅間隠山はその名の通り、こちら側から浅間山を隠して見えないことから付いた名のようだ。しかしやはり梅雨前線のせいか高所はガスが湧いているようで、その浅間隠山も見えない。「お前が隠れてどうする。」と思わずつっこみを入れたくなる。さらに登山口まで細いダート道を詰める。雨で路面が深くえぐられていた。冠水している箇所もある。初めてなら引き返すところだ。しかし勝手知ったる道なので構わず行くと、広場になった登山口に着いた。他に車はない、静かな山が楽しめそうだ。

浅間隠山トレッキング:イメージ2

登山口には真新しい標識が建っていた。ドアーを開けると強烈な濃い緑の匂いが鼻をついた。夏真っ盛りといった感じだ。ここからしばらくはまだ林道を行くことになるが、さらに悪路になるので車は置いていった方が無難だ。立派な道標に導かれるように杉の植林地に入る。山頂まで3.8kmとある。すぐに湯川にぶつかり赤い矢印に従ってそこを渡渉する。しばらくはこの沢沿いを何度か渡渉しながら行く。水量は少なく石を跳んで行けば足を濡らすこともない。大きなヒキガエルが慌てた様子もなく跳ねて行った。

浅間隠山トレッキング:イメージ3

沢と別れてなだらかな枝尾根に取り付く。見捨てられた植林地のようでカラマツ林はササに覆われていた。それでも登山道は良く整備されていて、刈り開かれて歩きやすい。一度道が平坦になったあたりにルートの半分を示す標識があった。薄曇りでも気温は高く蒸し暑い、谷から吹き上げる風が気持ち良い。一休みには都合の良い場所だ。ここから先は急登になることだし、一服して火照った体を休めた。頭に巻いたタオルを絞ると汗がしたたり落ちた。樹林越しに山並みが見えたが、やはり山頂部はガスの中だった。

浅間隠山トレッキング:イメージ4

階段状になった急登が続く。しかし高度を確実に稼ぎ、眼下に浅間隠温泉郷の集落が緑の中にぽつんと見えた。つづら折れを過ぎると主稜線のシャクナゲ尾根に出る。両側が切り立ったリッジになっていて多少恐怖感もある。こんなところはさっさと通過したい。ご丁寧に路肩注意などという標識まで立っている。そんなこと言われなくても分かる。さらに尾根上の開けた場所にはシャクナゲ尾根と書かれた立派な看板まであった。南に山々が連なっていた。しかし無駄な看板に、これはやりすぎだろうと思ってしまう。こんな物はない方が景色を楽しめるということに行政はまだ気がついていないようだ。

シャクナゲとツツジのトンネルを縫って行く。ひと月も前なら花が咲き乱れていたことだろう。登路は最後の急登になった。道幅は広くなって歩きやすい。カンバが現れ高山の雰囲気がしてきた。登山道の真ん中にドウダンツツジの大木が仁王立ちしていた。まるで、どうだ!と言っているようだ。その足下には枯れ落ちた花びらが山のようにあった。息を切らして山頂に着いた。ほとんど樹林の中だってのでそこは眩しいほど明るく感じた。しかしお目当ての浅間山は濃いガスの中で見ることは出来なかった。それでも、満足顔でビールを開けた。

蛇足であるが、帰り道蕎麦屋に寄り注文の品を待っていると足に小さな突起が出来ていた。つまみ取ってしげしげと見ると丸い茶灰色の身体から足が生えて蠢いていた。ダニである。いくら暑くても短パンで山を歩くのはやめよう。

-DATA-

場所:
群馬県吾妻郡吾妻町
交通:
JR高崎線高崎駅よりバス「薬師温泉」行き「清水」下車。登山口へはこれより徒歩およそ1時間半。マイカーが圧倒的に便利。
コースタイム:
登山口~山頂 登り2時間 下り1時間。
駐車場:
登山口に数台可。
トイレ:
なし。
温泉:
浅間隠温泉郷 白雲荘は露天風呂あり 鳩ノ湯は落ち着いた檜の浴槽 薬師は最奥にある。各500円。 倉淵温泉長寿の湯 350円。
注意:
登山口への林道は乗用車(低車高車)はきついかも知れない。降雨時や降った直後はもっと手前に、早めに駐車することを勧める。左手の最初の林業作業小屋脇が良い。数台駐車可。そこから登山口まで徒歩およそ1時間。
適期:
6月ツツジの季節。山頂から雪の残る浅間山が望める。 
バリエーション:
本文中にもあるように二度上峠より1時間。
参考:
群馬の山歩き130選 上毛新聞社刊

鎌倉 和賀江島

Jul.07, 2001 大潮の日の磯遊び

鎌倉 和賀江島:イメージ1

潮の干満が最も大きくなる大潮の日。干潮の時刻になると、材木座海岸の東端には丸石が積まれてできた和賀江島が姿を現す。新聞などで干潮時刻を確認し、その1~2時間前に到着すれば、潮だまりに取り残された生きものたちを観察できる。鎌倉駅からバスに乗り、飯島バス停で下車。徒歩1分で海に出る。向かって東側、砂浜の先に、累々と積まれた石の山が見えた。和賀江島は、日本唯一の鎌倉時代の築港跡だ。当時、付近の浜辺は遠浅で波が高く、難破する船が多かったため執権北条泰時の命で港が築かれたという。

鎌倉 和賀江島:イメージ2

丸石の間に足を踏み入れると小さな魚影が走り、慌てたヤドカリが転がり落ちる。透明なイソスジエビが歩く姿も見える。10cmほどのフグが、素早く足元をすり抜けた。クサフグ(写真)だ。国内沿岸部に多いフグで、強力なくちばしで様々な小動物を食べる。5~7月に葉山の波打ち際に集団で乗り上げ、産卵する様子は圧巻だ。テトロドトキシンという毒があり、もちろん人間が食べることはできない。ひょっこり顔を出すカニは、穴を掘って砂のなかに酸素を送り、プランクトンを増やすことで水の浄化に一役かっている。

鎌倉 和賀江島:イメージ3

相模湾には全国でも珍しい多様な環境があり、生物の種類も豊富だ。逗子の葉山から江の島にかけては200m沖まで大陸棚があり、沖合いの大島付近は 1500m近くの深い場所が、三崎や三浦にはバンクと呼ばれる海丘がある。黒潮の影響で冬でも水温は10度を下らず、夏には南方からカラフルな熱帯魚がやってくることもある。相模湾の生物多様性の保全のため、相模湾の生物をすべて集め、写真や標本、遺伝子保存といった方法でライブラリ化する取り組みが、現在、東大の臨海実験所で行われている。

鎌倉 和賀江島:イメージ4

海藻や岩に似た赤い魚がいる。背びれのトゲに毒をもつハオコゼ(写真)だ。踏みつけないためにも、足元のしっかりしたスニーカーなどを履いておくと良い。海では、トゲに毒をもつゴンズイという魚や、クラゲにも注意する必要がある。特に青く透き通った浮き袋を持つカツオノエボシは電気クラゲとも呼ばれ、毒性が強い。以前、左手の指先を刺されたことがあるが、毒が回り、1日、両腕を動かせなくなった。毒のある生物に刺された場合は傷口を水で洗い、症状がひどければ速やかに医師の手当を受ける必要がある。

鎌倉 和賀江島:イメージ5

少し沖の岩の上に、群青色の体に白い斑点、オレンジ色の角をもつ、1cmほどのアオウミウシを見つけた。ナメクジのような姿をしているが、ウミウシは巻貝の仲間。牛の角のような触角をもつことから海の牛、ウミウシと呼ばれるようになったという。特定のカイメンを好んで食べ、毎年、同じ場所で複数の固体を目にすることが多い。観察した後は、できるだけ捕まえた場所に放し、石も元の通りの環境に戻すことが大切だ。水中の石の表と裏とですんでいる生きものが違うため、ひっくり返したままだと磯が荒れてしまう。

鎌倉 和賀江島:イメージ6

干潟に、砂でできた茶碗のようなものがある。砂ぢゃわんといわれ、ツメタガイという約10cmの茶色い巻貝が粘液で砂を固め、卵を埋め込んだものだ。ツメタガイはエサとする貝に歯舌で穴を開け身を吸い出して食べるため、浜辺では小さな穴の開いた残骸も見かけられる。この食う・食われるの関係から成る海の生態系に、異変が起きている。37年間の調査で、相模湾沿岸の貝類の6割にあたる67種類が絶滅、またはその寸前の状態にあると判明した。1960年以降の開発による環境の変化や水質汚染、環境ホルモンなどの影響だ。

鎌倉 和賀江島:イメージ7

人だかりを見つけ行ってみると、透明な直径1cmほどの卵が水底に沈んでいた。「アオリイカの卵ですよ。」薄い殻の中身がクルリと回転し、尖った頭の先端で殻を何度かつついたかと思うと、イカの子どもが顔を出した。「…生まれた!」拍手が上がる。5mmほどながら既にイカの形をしている。スッ、スッと泳ぐ背中には、白い甲羅も透けて見えた。生まれ、成長し、食べ、食べられる。あちこちで繰り返される小さな命の戦いは、強く、自然の仕組みのなかで謙虚に生きる、生きもの本来のあり方を思い起こさせてくれた。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR鎌倉駅よりバス→飯島バス停下車
駐車場:
飯島バス停そばにあり
トイレ:
飯島バス停そば、材木座海岸にあり
参考文献:
<モース研究会『第16回 江の島モース祭「海の生物が増えるための勉強会」資料』2001
『いるか丘陵の自然観察ガイド』/dd>

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平和

Jul.07, 2001 久木大池公園~十二所果樹園

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ1

今年も、ニイニイゼミが鳴き始めた。平和を想う夏のはじめに、池子の米軍管理区域そばの森を歩くことにする。ハイランド循環のバスに乗り、ハイランド坂下で下車。左手に、久木大池公園の看板がある。吹き出す汗をぬぐって森の遊歩道を下ると、水面の輝きが目に飛び込んできた。上段と下段に分かれた久木大池は、かつて農業用のため池として使われていたところ。池を渡る風に揺られ、アヒルが泳ぐ。ハンゲショウの白い葉が揺れ、アカガエルが飛び出した。質の高い湿地環境の指標種となるカエルだ。

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ2

遊歩道を一周した対岸から、丸太を組んだ道が伸びている。スギの林を抜けると、尾根道につきあたった。このT字路を左へ。道に沿う送電線を管理する人が通るためか、道はよく踏みならされている。とはいえ、30センチほどのヘビが道を横断していくこともあり、足元には注意が必要だ。あちこちに、白いキノコが生えている。ドクツルタケは猛毒のキノコだが、目には涼やか。甘酸っぱい赤い実は、紙の原料、コウゾの実だ。小枝を振り回してクモの巣を払いながら歩けば、コジュケイの親子が慌ててヤブへと転がり込む。

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ3

道の右手に続く鉄条網には「WARNING」の看板。柵の向こうは、かつて東洋一の規模を誇った池子弾薬庫の跡地で、戦後、米海軍に接収された場所だ。50 年以上も保存されていたことから、皮肉にも、手付かずの豊かな自然が残っている。池子の森には、以前、発掘調査の折に入ったことがある。シダの茂る断崖からは水がしたたり、水蒸気の立ち込める緑の深さに圧倒されたのを覚えている。市民は池子の全面返還・跡地の自然公園化を目指し運動を起こしたが、88年から米軍住宅が建設され、96年から入居が始まった。

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ4

物騒な雰囲気に心細くなってきた頃、ようやく視界が開けた。鉄塔から北に伸びる小道を歩くと小高い丘があり、ベンチに座って富士山を望める。元の道を戻り、東へ進んでウメやクリの木が並ぶ十二所(じゅうにそ)果樹園へ。全体面積5haのうち3.8haを(財)鎌倉風致保存会が借り上げ、保全している。この会は37年ほど前、鶴岡八幡宮裏山の御谷(おやつ)山林の開発阻止を求めて組織された、日本のナショナル・トラスト運動の草分け的存在だ。96年からは下草刈りなど、市民の力を集め里山を守る取り組みを行っている。


逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ5

これまで歩いてきたような人の手が入らず遷移が進んだ深い森と違い、草や木が適度に刈り払われた明るい里山の風景に、開放的な気分になる。三浦半島から横浜市金沢区の自然動物公園方面に連なる森の一部をこうして多くの人々の手で守り、様々な環境を保全することは、全体の生態系を豊かにすることにもつながるはずだ。すり鉢状の果樹園の中央に道を見つけ、青いイガを付けたクリの木を左右に見ながら下る。果樹園管理用の鉄柵があるが、今の時期(※)は門の鍵が開けられているため、扉を押し開けて通らせてもらう。

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ6

ゆるやかなカーブを繰り返しながら農道を下ると、ほとばしる水の音が聞こえてきた。国指定史跡・朝比奈切通しそばの小滝だ。水量は少ないが、高さは3メートル近くある。鎌倉の東側に設けられた朝比奈切通しは、六浦(横浜市金沢区)に通じる金沢街道の切通で、昔の姿を残す数少ない史跡の一つ。ここにきてようやく、人っ子ひとりいなかった山道にも人の往来が見られるようになる。太刀洗川のせせらぎに沿って下流へ進む。鎌倉五名水の一つ梶原太刀洗いの水に立ち寄ると、キセキレイがレモン色の腹を翻して飛んだ。

逗子・鎌倉 原始の森の保全と平:イメージ7

十二所バス停に到着。バスを待つ間、橋を渡り、たたらが谷といわれる奥の谷戸を覗いてみた。奔放に茂る草木が、行く手を阻む。鎌倉の原始の風景を彷彿とさせる谷戸には、ひとたび人間が利用していない土地と判断されれば、いつ開発されるかわからない脆さも漂う。池子の森は、軍事的理由により、皮肉にも質の高い自然が守られた。誰もが平和を願う21世紀、軍事的理由に頼らずに各地の原生的な自然を守るには、自治体が自然環境調査を行って生態的に質の高い土地を公有地化し、土地確保の目的税の導入に市民も進んで協力するといった、高い意識が改めて求められることになるだろう。

※十二所果樹園の道は、7月1日~8月20日・10月21日~5月10日以外は、管理のため閉鎖されている(問い合わせ:TEL 0467-23-6621)。閉鎖期間には、果樹園で左折せず道なりに進めば、熊野神社を経て朝比奈切通し最奥部に出ることができる。

-DATA-

場所:
神奈川県逗子市・鎌倉市
交通:
JR鎌倉駅よりバス(ハイランド循環)→ハイランド坂上下車、左手に久木大池公園の看板有り
コース:
久木大池公園(徒歩60分)→十二所果樹園(徒歩30分)→朝比奈切通し小滝(徒歩30分)→十二所神社バス停
駐車場:
無し
トイレ:
鎌倉駅出発以降、ルート上には無し
参考資料:
御所見直好著『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983
浄明寺太郎著『かまくらなんでもガイド』金園社

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