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あけぼの子どもの森公園は「ムーミン谷」
Jun.28, 2001 童話の世界へようこそ
フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンさんの作品「ムーミン童話」をテーマにした公園が、埼玉県飯能市にある。市域南側に位置する首都圏のグリーンベルト、加治丘陵の一角を利用して同市が平成9年7月に開園した「あけぼの子どもの森公園」がそれだ。作者公認の世界でも例を見ない施設だが、同施設は近年流行のテーマパークではなく、園内での自然観察やネイチャーゲームなど子どもたちの活動を支援するプレイリーダーと呼ばれる「遊びの指導者」が常駐しているのが特徴だ。やってくる子どもたちはプレイリーダーとともに、あるいは友人たちと丘陵の自然とふれあい、園内に設けられたムーミン谷を再現した施設で過ごす。将来を担う子どもたちがムーミン童話に登場する妖精たちのようにすくすくと伸びやかに、そして自然を敬う気持ちを持って成長することを主眼に置いた子どもたちのための公園を初夏の一日、歩いた。
東京方面からあけぼの子どもの森公園に向かうには西武池袋線を利用し、元加治駅かもしくはその次の飯能駅で下車する。飯能市街地の南側、入間市との行政境に位置した入間川河川敷利用の飯能市阿須運動公園に隣接しているので、まず同運動公園をめざそう。運動公園は高校野球の県予選も行われる市民球場、サッカー場、全国でも珍しい人工芝のホッケー場、テニスコート、体育館など各種運動施設が設けられたスポーツ・レクリエーションの拠点。飯能市民だけでなく、近隣の入間市や狭山市、西武球場で馴染みの所沢市の市民にも開放、広域施設として県西部地域の住民に親しまれているので、休祝日には大勢のスポーツ愛好者らで賑わう。市域の南側丘陵の裾野を東西に流れる入間川を渡り、駿河台大学を過ぎると、県道の左右側に運動公園が現れる。歩道に植えられたシュロ並木の手前を右に折れ、ホッケー場と体育館の間の駐車場をそのまま直進すれば、「あけぼの子どもの森公園」は目前だ。

飯能市街地を一望できる加治丘陵の北斜面を利用した、この子どもの森公園の面積は約7.6ヘクタール。このうち、約2ヘクタールが平地部で、残りは既存の自然地形(コナラなどの雑木林)をそのまま利用している。ところで、あけぼの子どもの森公園のネーミングの由来が気になる。市によると、▽市の東南、日の出の方角にある▽約70~200万年前に生息していた「アケボノゾウ」の化石が付近で発見されている▽開設地の「阿須」の土地から産出される植物化石や亜炭の中に「アケボノスギ(メタセコイヤ)」が含まれている。また、ムーミン童話を園テーマに採用したのは、▽登場人物の全員が個性を持ち、大自然の中でのびのびと活動している。個々のキャラクターは新しい児童像として新時代を担うにふさわしい▽30年以上に渡って子どもたちを中心に愛と夢を与え続けているのが、その理由という。ネーミングの一つにもなったアケボノスギが木陰をつくる進入路の坂道を上ると、ユニークな外観を持った建物が飛び込んでくる。右手に「子ども劇場」、そしてその先に「ムーミン屋敷」だ。子ども劇場は地下一階地上一階建で、公園のシンボル的施設。延床面積は約470平方メートルあり、大きなドーム状の屋根が目を引く。地下に公園事務所、プレイリーダー控え室、トイレなど、地上一階にコンサートや演劇などが行える円形ホールがある。ホールではプレイリーダーたちが紙芝居を子どもたちに披露したり、読書会なども催される。事務所脇には地下水を汲み上げた池があるが、シーズンになるとモリアオガエルが産卵に姿を見せることもあるという。

子ども劇場の東側、丘陵から流れ落ちる小川に架かる「ムーミン橋」を渡橋すると、盆地の中にひょっこり生えたキノコのような形をしているムーミン屋敷。同施設も子ども劇場同様に園を代表する建築物だ。延床面積約190平方メートルの木造一部鉄筋コンクリート造地下一階地上二階建の建物は来訪者を家族の一員としてあたたかく迎え入れる家をイメージしており、一階に暖炉のある部屋、クッキングルームなど、二階にはムーミン童話に登場する妖精たちの名前が付けられた小部屋がいくつも点在し、まるで童話の世界そのもの。子どもたちが真っ先に入館するのもこの建物というのもうなづける。玄関で靴を脱ぎ、入室すると、正面にクッキングルーム、隣に薪ストーブが据えられた広間。昨年のクリスマスには、プレイリーダーがクッキングルームで手作りクッキーを焼き、子どもたちにプレゼントして喜ばれた。

ムーミン橋を戻り、小川に沿って下流に伸びる園路を進むと、「たきぎ小屋」、そして実際のムーミン童話にも登場するとんがり屋根の「水あび小屋」が「わんぱく池」の水辺に現れる。小さな池の縁をぐるっと周ると、園路は雑木の林内へと向かう。飯能市はスギやヒノキ材を生産する林業のまちとして栄えたが、近年は需要低迷など林業を取り巻く環境が悪化。そこで、林業関係者らはこうした現状を打開するため、材の活用方法など林業活性化のための方策を模索しているが、園路一面に敷かれた間伐材のチップもそうした取り組みの一例だ。タバコの箱半分くらいのサイズにカットされたチップはクッションの役目を果たし歩きやすいし、ぬかるみで足をとられるということも回避できる。ほどなく、園路はさきほどの小川の上流に出る。流れに架かる「見晴らし橋」からの眺望は文字通り抜群。子ども劇場、ムーミン屋敷、さらにその背後の飯能市街地も遠望できる。そのまま西進し、ムーミン童話やヤンソンさんに関する資料などが展示された「森の家」に入る。地元材のヒノキ丸太を約150本縦に並べて連結させ、壁と柱を一体にした建物の森の家は地上二階建ての延床面積約110平方メートル。ログハウスに代表されるように丸太を横に積み重ねて組んで行くのが一般的だが、垂直に立てることで新たな建築方法も提案している。休祝日にはたくさんの家族連れが訪れるあけぼの子どもの森公園。トレッキングというには物足りないコースだが、施設見学後、丘陵眼下を流れる入間川の水辺を散策するのもいい。
残念なことにトーベ・ヤンソンさん(86)が亡くなった。このため、飯能市は同公園内の森の家で、ヤンソンさんからの手紙を追悼の意味を込めて、一般公開した。その手紙の一部を記して、この項を閉じる。「親愛なるプレイリーダーたちへ。親愛なる飯能のあけぼの子どもの森公園の友だちへ。心温まるバースデーカードと、細やかなタッチの美しい公園の地図をどうもありがとう。写真の中で、私は雪におおわれた谷の写真がとても気に入りました。私たちの谷は、お互いにそう遠くないのですね(1998年8月)」
-DATA-
- 場所:
- 埼玉県飯能市阿須893-1
- 交通:
- 首都圏中央連絡自動車道「狭山・日高インター」から飯能市。西武池袋線飯能駅南口を南進し、入間川、成木川を越え、県道富岡入間線を左折。そのまま直進し、JR八高線、駿河台大学を過ぎて右側。西武池袋線飯能駅から3.7キロ。隣接して飯能市民体育館や市民球場、ホッケー場がある。
- 駐車場:
- 阿須運動公園
- 開園時間:
- 午前9時~午後5時
- 入園料:
- 無料
- 休園日:
- 毎週月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)
- 電話:
- 0429-72-7711
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