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北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地

May.21, 2001 台峯-中央公園

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ1

JR横須賀線に乗って大船駅を過ぎると、北鎌倉駅に向かう車窓の右手一帯に緑が広がる。約60haの台峯緑地だ。しかしこの緑地のなかの倉久保谷戸と呼ばれる場所は、約30haの大規模な宅地開発が計画されている。現状をこの目で確かめたいと思い、地元の市民団体の自然観察会に参加した記憶を頼りに、森を歩いてみた。北鎌倉駅西口を降りて信号を渡り、交番の脇から住宅の間の細い路地へ入る。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ2

つきあたりの分岐を左へ折れて南へ向かうと、瓜ガ谷(うりがやつ)と呼ばれる場所に出る。ここでは今も、鍬を振る人の姿が見られる。谷戸あいの狭い土地では機械を使うのが難しいため、稲の苗も手作業で植えるそうだ。鎌倉は大正時代あたりまでは一面に田畑が広がり、山から湧き出た「しぼり水」を使って、作物が育てられていたというが、現在耕作される田んぼは5haになっている。田植えを待つ苗の、みずみずしい緑がまぶしい。坂を登り、左手に森が開けた地点のY字路を右へ。スギやヒノキの林を背にした小さな棚田があるが、ここは相続の問題などで2年ほど前に耕作が放棄されたそうだ。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ3

田んぼの脇から林のなかへ道なりに登っていくと車道に出る。途中、左手に源氏山公園へ向かう道も現れるが、ここでは緩やかな車道のカーブに沿って右手に進み、山ノ内排水池脇から右手、北方の山道へ入っていく。急に、視界が開けた。キャベツやジャガイモの育つ畑の向こうに、六国見山、円覚寺の裏山、天柱峰までが一望できる。ここから、いよいよ台峯の核心部へ向かう。迷いやすく足場も不安定な道で、注意が必要だ。円覚寺を眺めた畑から北へ伸びる左手の山道を行き、山中のT字路を左へ降りていく。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ4

分岐を右手に折れ、山道を谷戸へと下る。しばらく手入れされていないヒノキ林。以前、こうした場所を歩いている折に「私も山をもっているけどね、今は木一本がダイコンと同じ値段だから」とため息をもらした人がいた。鎌倉には、林業を本職にしている人はもういない。今歩いている斜面を横切る道は、かつては谷戸の奥の田んぼへ向かう農道だったそうで、あぜ道の跡に沿って木が一列に並んでいる。今は遷移が進み、常緑樹ばかり目につく鎌倉だが、地元の方に話を聞けば、農業や林業が営まれていた当時の里山の面影を読み取ることができる。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ5

斜面を下りきると、木々の間に輝く水面が見え隠れする。谷戸の池だ。ハンノキが生えている。湿地を好むハンノキの林があるのは、市内では当地と夫婦池の2 箇所になってしまった。水辺に近づくと、たちまち足元は泥だらけになる。クワッ、と驚きの声を上げては水に飛び込んでいくカエルたち。川には2、3種の魚がおり、カワニナやシジミなどの貝類もいる。鎌倉市には、森はまだ残されているものの、森から小川や湿地へ至る自然のつながりが残る質の高い自然は、数えるほどしか残っていないという。この倉久保の谷戸は、開発計画では埋められる予定の場所だ。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ6

森に囲まれた深い沼、という印象がある谷戸の池だが、昭和30年代までは、子どもたちがよく泳いでいたそうだ。森は間伐や下草刈りが頻繁に行われていたため今よりも明るく、すぐ近くまで田んぼがあって、あぜ道を歩いて気軽に来られる場所だったのだという。右手にハンゲショウの茂みを見た後左折し、ササのトンネルを通って池の西側へ回る。ここから、これまで歩いてきた谷戸一帯を見渡せる。次々と現れるクモの巣を、木の枝で払いながら北上した。

北鎌倉 ハンノキ茂る豊かな湿地:イメージ7

次第に民家が見えてくる。畑の脇の道を抜け、山崎小学校の裏へ出た。住宅地の道を左手に向かって歩けば、鎌倉中央公園に入ることができる。中央公園は、平成9年に開園した23.7haの公園だ。散策路を辿って、かつてため池として使われていた池や田んぼ、森や草原を巡ることができる。この場所は市民団体が、従来の地権者の人々と手を携え、保全に取り組んできた場所だ。現在は農業体験などができるよう整備され、子どもたちが水辺ではしゃぐ光景も見られる。人が水や空気、土といった自然に支えられて生きていることすら、見えにくくなっている現在。人の手により創出された自然とのふれあいの場も、そこで遊ぶ楽しさや、かけがえのなさを人々に伝え、地域の自然を未来に残す掛け橋となるのかもしれない。

※台峯緑地は、2004年12月に保全の方向性が決まりました。地域や行政の方々のご努力のおかげで鎌倉の美しい宝物が将来に渡り守られていくこと、心より嬉しく、これからも応援しています。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR北鎌倉駅より徒歩
コース:
JR北鎌倉駅(徒歩30分)→山之内排水池(徒歩40分)→谷戸の池(徒歩30分)→山崎小学校裏(徒歩20分)→鎌倉中央公園
駐車場:
無し
トイレ:
北鎌倉駅、中央公園にあり
参考文献:
鎌倉自主探鳥会(NPO)パンフレット
北鎌倉台峯トラスト(NPO)パンフレット
御所見直好著『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983
浄明寺太郎著『かまくらなんでもガイド』金園社

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