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鎌倉 聖域「御谷」の森づくり

Mar.10, 2001 御谷の山の手入れ 主催:鎌倉風致保存会

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ1

鎌倉市の広報紙を見ていたら、「御谷の山の手入れ」への参加募集があった。御谷は「おやつ」と読み、鶴岡八幡宮の裏山一帯を指す。山に囲まれた場所を谷戸というが、御谷は鎌倉に多くある谷戸のなかで唯一「御」の字をつけて呼ばれる神聖な森だ。入ることができないと思っていた場所を、ぜひこの機会に訪れてみたいと、電話で参加を申し込んだ。主催団体の鎌倉風致保存会は、ほぼ毎月一般の参加者を募り、市内各所で森林ボランティアを開くNPO。今回の森の手入れは、ハイキングコースの整備が主な目的だ。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ2

イベント当日は、さわやかな青空が広がった。鎌倉駅から小町通りを抜け、そのまま北に直進して豊島屋寮横のわき道へ入る。普段は柵で囲われている広場の門が開き、中に50人ほどの人々が集まっていた。まずは皆で準備運動。どうやら森の手入れの常連さんが多そうだが、「初めて来ました」という一般参加者や子どもたちの姿も交じり、和やかな雰囲気だ。後に参加者は、草刈りをする班と、丸太を組んでの階段づくりをする班に分かれる。初心者の私たちは、ノコギリやカマで山道の回りの枯れ木や草を払うことになった。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ3

いざ、今日の作業の現場に向かう。山道を進むと、道端に石積みの塀のようなものがある。「これは『堀切』。馬に乗った敵が上ってくるのを防ぐための、昔の遺構です。」保存会の方は、時おり立ち止まって興味深い話をしてくれる。「集合した広場の北に見えた高い峰は、弘法大師の修行の場といわれます。またこのあたりには僧坊が多く点在し、『二十五坊』と呼ばれていました。」辺りの景色が秘める歴史的な意味を知ると、これから始める山の手入れも、より意義あることのように思えてきて気合が入る。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ4

作業場所に到着。細い山道をアズマネザサや枯れ木が覆う、人通りの少ない場所のようだ。鎌倉の山は手入れされる機会が減っているため、暗い森が多い。枯れ枝を払い、草を刈って森に光を入れることで、明るい林を好む生きものもすめるようになる。カマを振るうとザクザクと小気味良い音が響き、みるみる道が広くなった。保存会の方は、「アオキはすぐ生えてくるからどんどん刈っちゃっていいよ」と豪快に言う一方で、なかなか見られないカゴノキに「これは貴重品だ」と目を細める。気の知れた友達のことのように自然を語る人々を見ていると、普段は見えない深い世界の入り口を覗かせてもらったようで、嬉しくなる。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ5

ウグイスの歌を聴きながら、作業の合間の一休み。「これはタイワンリスのかじり跡です。」見るとあちこちの木の樹皮に、線状の傷がついている。江ノ島で飼われていたものが逃げ出して繁殖し、植物にも大分被害を与えているようだ。こうした山の変調や原因は、日々現場に接していなくては、なかなか見えてこない。すでに鎌倉市内に、林業を本職とする人はいないといわれる。山に入ることを暮らしの一部とし、自然をとりまく日々の動きを自分のことのように感じられる人々にこそ、山の未来を語る資格が与えられるように思う。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ6

もう大分日が高くなった。仕事に区切りをつけて広場に戻る。刃物を洗い、さび止めをかけて後片付けだ。一段落したところに、薪の炎で温められた味噌汁が配られた。フキノトウのほろ苦い風味に舌鼓をうてば、参加者同士の会話も弾む。「御谷の山は、日本最初のナショナルトラスト地、といわれているんですよ。」開発の計画が進むなか、昭和39年市民がお金を出し合って森を買い上げ、守ったのだそうだ。「こうしてちょくちょく手入れをして、春や秋には皆で梅やクリの実を採るんです。」市民が自分の庭のように愛着をもって接する山には、見る者にも安心感を与える落ち着きがある。

鎌倉 聖域「御谷」の森づくり:イメージ7

解散後、整備した道がどこへ通じるのか知りたくなった。北へ向かってしばらく行くと、山中の四つ辻へ出た。道端にハンモックが揺れる東の方角へ向かえば、西御門の住宅地へ出る。また西の方角へ降りる杉木立の道は、建長寺の回春院へ。北へ長く上る道は、天園ハイキングコースの十王岩付近へと続いた。所在を見極めた後、再び南へ引き返す。南端まで歩くと、第二中学校のグラウンドわきに出た。ここから駅に戻る。聖域、御谷にめぐらされた、人と自然をつなぐ道。ここは、時おり今日のような手入れをすれば、多様な生物がすむ明るい森への掛け橋となる。しかし過度に利用して土を踏み固めれば、植物の生育を抑える原因ともなる。御谷の道のもつ意味は、今後の私たちの行動が決めていく。

-DATA-

場所:
御谷山林 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-16
交通:
鎌倉駅より徒歩
コース:
鎌倉駅より小町通り、鶴岡八幡宮西端を直進(徒歩20分)→神奈川県立近代美術館分館向かいのわき道を直進(徒歩15分)→突き当たりの階段を上る(徒歩7分) 1.ハイキングコース右折(南下)→徒歩約30分で鎌倉市立第二中学校のグラウンドわきへ 2.ハイキングコース左折(北上)→徒歩約20分で西御門住宅地の四つ辻へ
駐車場:
無し
トイレ:
鎌倉駅より先コース上には無し
参考文献:
御所見直好『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983 浄明寺太郎『鎌倉なんでもガイド』金園社
連絡先:
財団法人 鎌倉風致保存会事務局 TEL 23-6621 URL http://www.fsinet.or.jp/~fuhchi/
その他:
コースの山道はわかりにくく、始点・終点には急坂がある。山歩きに慣れた人と行動を。

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