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鎌倉 子どもたちと歩く春の谷戸
Mar.27, 2001 広町の森

鎌倉西部、広町の森。30年近く前から開発計画があったが、保全を求める市民の声で、今まで残ってきた約45ヘクタールの森だ。3月下旬、この広町で NPO「図書館とともだち・鎌倉」が「広町の春を歩こう」と題して自然観察会を開催することになった。子どもたちが自然とふれあうお手伝いができればと、参加を申し込む。イベント当日、森の入り口には、小学生とその保護者、約50人が集まった。地元のナチュラリスト、岩田功さんが、道と自然の案内人だ。

左手に見える広い谷戸へ。御所ガ谷(ごしょがやと)と呼ばれ、入り口付近に源頼朝側近の御所五郎丸の館があったとされるところだ。3年ほど前まで田んぼの耕作が行われていたが、今は休耕田となっている。まずは土水路を観察。ゲンジホタルやサワガニ、県の絶滅危惧種、ホトケドジョウもいるそうだ。「ここから海に注ぐきれいな水は、相模湾の保全にも役立っています」と岩田さん。また、土手には外国から入ってきたセイヨウタンポポよりも、在来で花のガクが反らないカントウタンポポが多くみられる。

道を途中で右に曲がると、小さな池に出る。子どもたちが指差す方向を見ると、ひも状のヒキガエルの卵塊が。そういえば昔、近くの田んぼで、泥んこになってオタマジャクシをとったっけ。池のほとりからは急な山道が始まり、ロープを便りに登っていく。山の中腹で、岩が垂直に切り立つ場所に出た。詳しい調査はまだなされていないが、昔、「かまくら石」が切り出された石切り場と伝わるところだ。『鎌倉市遺跡分布図』によると広町の森一帯は「竹ヶ谷城跡」に位置し、中世の遺構も残されているという。

しばらく登った後、なだらかな尾根道に出た。山中の分岐には、地元の人がつくった手書きの地図が立っている。しかし山中の道は曲がりくねっていて迷いやすい。また草が茂る夏にはマムシも多い。歩くなら、秋から春にかけて、道に詳しい人と行った方が無難だ。道の脇に、土が盛り上がった場所がある。モグラが土を掘った跡のようだ。モグラは、付近のフクロウなどのエサとなっているという。

伝説のサクラに会うために、右折し細い道を行く。ぽっかり開いた空間の奥に、10本以上の幹をくねらす巨樹が姿を見せた。満開の白い花が、空を明るく染めている。オオシマザクラという種類で、地元では〝稚児桜〟とも呼ばれ、次のような言い伝えがある。昔、五つの頭をもつ龍が、津村の長者の子ども十六人を飲み込んだ。後に丘の上に咲いたサクラを、人々は子どもの塚になぞらえ〝稚児桜〟と名づけたという。ゴツゴツした幹から、広町の自然の息吹が伝わってきた。道を戻り、再び尾根道を西へ進む。

「トトロのトンネルだ!」子どもたちが声をあげる。見ると、背の高いアズマネザサが道の両側に茂っている。地元の人の話によると、薪や炭に木を利用するために山の手入れをしていたころは、今ほどササやぶは多くなかったそうだ。当地では、ササやぶに好んで巣を作るウグイスの声をよく聞く。山の手入れが減り、ウグイスが好む環境が増えてきたようだ。ここで分岐を右手に曲がり、北へと下れば、やがて出発地点近くの広場に戻ることができる。

森をほぼ一周して出発地点に戻り、解散。手を振る子どもたちの目は、いきいきと光っていた。広町の森は、一部を除き事業者の土地だが、現在、都市林公園としての保全の方向性が検討されている。自然形態・森林形態ともに「神奈川県環境影響評価書」では最高のA1ランクに位置づけられ、「鎌倉市緑の基本計画」でも、市街化区域内の三大緑地として保全を図るべき場所にあげられているところだ。生きものあふれる自然を子どもたちに手渡すために、一人一人ができる範囲で、汗や、お金や、知恵を出し合っていきたいものだ。
※2002年10月、事業者は広町緑地の開発を断念すると表明。市が買い取り保全することで合意した。
-DATA-
- 場所:
- 神奈川県鎌倉市
- 交通:
- JR大船駅(湘南モノレール約15分)→西鎌倉駅(徒歩15分)→バス停白山橋そばの飲食店ガスト脇の道を左(東)へ→五郎丸橋を渡り道なりに約10分で広町の森入り口へ
- コース:
- 全て徒歩):広町の森入り口(15分)→右折(5分)→湿地帯より登り(15分)→石切り場(15分)→尾根(15分)→分岐を右へ(10分)→サクラ巨木(10分)→尾根(15分)→ササヤブ右折(20分)→広町の森入り口
- 駐車場:
- なし
- トイレ:
- 森の中には無い。森入口付近の鎌倉市役所腰越支所にあり
- 参考文献:
- 井上六郎『時のながれ 津村のながれ』1991
鎌倉市『鎌倉市緑の基本計画』1996
鎌倉市教育委員会『鎌倉市遺跡分布図』 - その他:
- 広町の道は、足場が悪い上、分かりにくい。できれば地元の市民団体のイベントに参加を
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