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鎌倉 ビーチコーミング

Dec. 3, 2000 飯島崎~稲村ヶ崎

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ1

「ビーチコーミング」。以前からその名の響きに興味があった。海が青く澄む冬の時期、環境NGO「かまくら環境会議」が行事を行うと聞き、ちょっと覗いてみることにした。家族連れなど15名ほどが鎌倉駅に集合。スタッフの挨拶と説明を聞く。ビーチコーミングとは、浜辺で漂着物を拾ったり、それらの由来に想いを馳せたりして楽しむものだ。南から流れ来る親潮や鎌倉時代、自分自身の生活ともつながる浜辺で、今日は何を見つけられるだろうか。鎌倉駅からバスに乗り飯島バス停で降りれば、材木座海岸が目の前に広がる。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ2

「これ、何だと思う?」なんと、出てきたのは鎌倉時代の馬の歯。丸石が転がる和賀江島は、干潮のときだけ姿を現すわが国唯一の鎌倉時代の築港跡だ。国指定の史跡でもあり、中国や朝鮮から鎌倉にもたらされた青磁も出土する。水に浮かぶ軽石も多い。約5万年前に箱根火山起こった火砕流が大磯丘陵付近に堆積し、海へ流れ出たものだ。昨今は、三宅島産の軽石も流れ着くという。なめらかな曲線を描く流木も、自然が刻んだ時間の足跡。年代物のお宝探しに、大人の目つきも真剣になる。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ3

「あっ、魚!」子どもたちが駆け寄る。漁師の網にかかったイワシだ。深海まで続く相模湾らしく、エイの姿もある。背には毒のトゲがあるものの、やはりヒレはあぶれば食べられるそうだ。砂浜や磯が入り組む複雑な環境のため、貝の種類も多様だ。つややかなタカラガイや薄桃色のサクラ貝。蝶のように足元に広がる小さな三角形の二枚貝はナミノコガイ。彼らは、波が寄せる瞬間、一斉に砂から飛び出して移動する曲芸師だ。ボラが泳ぐ滑川を越えれば、砂浜は由比ガ浜海岸へとその名を変える。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ4

「このままじゃ小屋が流されるよ」と、漁師さんの物憂げな声。見ると、漁師小屋の下の砂が、大きく崩れている。防波堤が砂の移動を妨げるなど複合的な原因が考えられ、問題の解決は困難だ。砂浜が狭くなれば、神奈川県の絶滅危惧種、アカウミガメの産卵も妨げられる。昭和30年代前半までは、夏になると毎晩のようにアカウミガメの産卵がみられたという。しかし、今では年に一度ほど上陸が話題になるにすぎない。付近の喧噪や車の乗り入れも原因という。渚で大きな亀を見つけ、背に跳び乗り遊んだ幼少の記憶が甦る。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ5

波に洗われて光るガラスの石。拾い集めて水をはったグラスに沈めれば、涼しげな海の景色が演出できる。こうした人工物は分解されにくく、自然界に放置されると環境に影響を与えやすい。アカウミガメがビニール袋をクラゲと間違え、飲み込む例も少なくないそうだ。ふいに、茶髪の青年に大きなビニール袋を差し出された。ライフガードの団体が、ボランティアでゴミ拾いをしているのだ。その爽やかな姿につられて、思わずビンや空き缶を袋に入れる。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ6

足元には、丸く穴の開いた石が多い。下の穴を指でふさぎ、ビール瓶の笛の要領で吹くとピュー、と鳴る。昔は石笛と書いて“いわぶえ”と読んだそうだ。その名の通り富士山の形をしたオオアカフジツボは、もっと高く澄んだ音がする。鎌倉の海に五感で浸るのも一興。山口素堂の〝目には青葉 山ほととぎす初鰹〟の句も、この由比ケ浜で詠まれたものという。今ではカツオの漁獲量が減少し、この辺りでは秋の戻りガツオしか味わえなくなった。それでも、地魚を扱う魚屋で仕入れた旬の刺身は逸品だ。

鎌倉 ビーチコーミング:イメージ7

稲村ケ崎へ到着。1333年、新田義貞が当地で黄金の太刀を海中に投じると潮が引き、軍は一気に鎌倉幕府を攻め滅ぼしたというゆかりの地だ。相模湾沖は、暖流と寒流がぶつかり、多くの命を育む豊かな海。近年、鎌倉沖でサンゴの群落も見つかったという。浜辺に転がる流木は、いったいどこから来たのだろう。古今東西に思いを巡らせ歩くうち、子どもたちの袋も宝物で一杯になった。ビーチコーミングの視点での浜歩きは、新たな海の広さ、奥深さを教えてくれる。稲村ヶ崎駅から江ノ電に揺られ、輝く海に別れを告げた。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市飯島崎~稲村ヶ崎
交通:
JR横須賀線鎌倉駅よりバスに乗車、飯島バス停下車
駐車場:
無し
トイレ:
駅などに有り
参考文献:
浜口哲一『渚の博物誌』神奈川新聞社、1997
御所見直好『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983

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