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北鎌倉 禅寺を包む山村風景

Nov. 23, 2000 北鎌倉駅~六国見山~明月院

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ1

秋の鎌倉は、いつにも増して人が多い。雑踏から抜け出して、ひなびた谷戸を歩きたくなった。禅寺として知られる円覚寺や明月院をふもとに抱く、六国見山へと向かった。JR横須賀線北鎌倉駅東口を出た後、人の波が流れ込む円覚寺を右に見てホーム沿いに北上。岩に穿たれたほら穴をくぐり抜け、最初の踏み切りのある場所を右折する。小路を登ると、赤く色づいた民家のモミジが迎えてくれた。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ2

坂を登りつめ、いったん住宅地へ出る。すぐに現れる「至六国見山」の道標に沿って進めば、じきに昔ながらの農耕地、長窪が姿を現す。南側の山向こうは、円覚寺草創の折、白鹿が開山の説法を聞きに現れたという伝説の山、瑞鹿山だ。谷あいでは色とりどりの季節野菜がつくられ、次第に高く深く奥へとつながっていく。キクが揺れ、トビが舞う。落ち葉たきの煙が、白くほのかに立ち上る。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ3

再び現れた道標が、左の道へと登山者を招く。しかしここでちょっと寄り道をして、長窪と呼ばれる谷戸の奥へ入ってみた。ぽっかりと時空を越えてきたような、山村風景が広がった。農具の置かれた納屋、小さな地蔵堂。「今年は大根植えてみたよ。」風に乗って響いてくる、人々の声。山畑がつきる谷戸の最奥は、奥込(おっこみ)と呼ばれるところだ。かつてシカやキツネ、ウサギなどを谷間から追い上げ、網や落とし穴で捕獲した狩場の名残。獣が縦横無尽に走っていたころの鎌倉の山並みが、まぶたに浮かんでくる。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ4

登山道へ歩みを進める。道はスギ林を抜け、ササのトンネルへと吸い込まれていく。辺りに響くのは、自分の足音だけだ。ガサッ、とふいにヤブが動いた。チャッ、チャッと鳴きながら笹薮をかいくぐって逃げていくのは、冬を迎え、山を下りてきたウグイスだ。禅寺の多い北鎌倉。こうして静かな自然に耳を傾けていると、心の真実の姿を求める禅の世界に、少しだけ近づくことができる気がする。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ5

ふいに視界が開け、頂上へ。目の前に江ノ島が浮かび、三浦半島、伊豆半島、丹沢の山並みまでが、薄墨をひいたようにぼんやりと連なる。『風土記稿』で「郡中第一ノ壮観ナリ」とたたえられる景勝の地だ。六国見山の名の由来は、明治初期までの区制で相模、伊豆、甲斐、武蔵、上総、安房の六国が一望できたためという。今も富士講の石碑が立つ頂上付近は、葉を落とした桜の木々に囲まれている。遥かな眺望と花霞が溶け合う春が、待ち遠しい。ここから北へ向かえば大船方面へも出られるが、今回は北鎌倉へ戻るコースをとる。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ6

頂上から東へ進み、古樹の根元に小さな石塔を見つける。稚児ヶ墓だ。ひっそり手向けられた花に込められた祈りに、思いを馳せる。カサコソ落ち葉を踏みしめ進むと、ふいに住宅街に出た。道なりに尾根際を行くと、明月院方面を示す道標が。直進すれば天園ハイキングコースにも抜けられるが、ここで右折して下り明月院へ向かう。蛇行しながら細い道を下ると、もう傾いた秋の日を浴びて、小さな野仏が迎えてくれた。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ7

ふもとに到着。谷あいの小さな喫茶店で、チーズケーキと紅茶を楽しむ。木のぬくもりに包まれたカウンター。「静かな雰囲気を楽しんでほしいから、雑誌などに広告はしないんです」と話すご主人の穏やかな声が心地良い。名刹として名高い明月院を抜け、パステル画や詩集を集めた葉祥明美術館に立ち寄った。作品だけでなく、小さな洋館の空間全体に、宇宙を感じさせる深い静かな心がある。忙しい日常を忘れた一日。北鎌倉駅までは、もうすぐそこだ。

※2002年から、長窪の畑は宅地開発された。六国見山へは、現地にある案内板を参考に登ることができる。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR横須賀線→北鎌倉駅
タイム:
北鎌倉駅東口(徒歩10分)→最初の踏み切りで右折(徒歩15分)→道標に沿い右折(徒歩10分)→追込の谷戸(徒歩15分)→六国見山頂上(徒歩40分)→明月院(徒歩15分)→北鎌倉駅
駐車場:
無し
トイレ:
北鎌倉駅に有り
参考文献:
御所見直好『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983
村上光彦『鎌倉百八箇所』用美社、1989

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