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高槻森林観光センター

Nov.29, 2000 紅葉と温泉が手軽に楽しめるプチハイキング

トレッキングやハイキングに興味があってもなかなか時間が作れずにいる人は多いのではないだろうか。実は私もその一人。ハイキングでさえ、どうも前日から精神が高揚して、『どうやって一日を有効に使おうか』と考えすぎるあまり、当日の午後にはもう疲れ果ててしまうこともしばしば。しかし、私には気楽に、まるで散歩に行くように気軽に立ち寄れるハイキングスポットが一つある。年に2度ほどそこを散策するのだが、今回は遅い秋の紅葉を楽しみに出掛けた。

高槻森林観光センター:イメージ1

私のお気に入りのハイキングスポットは、大阪府の高槻市にある「高槻森林観光センター」。キャンプ場や桜公園がある摂津峡(せっつきょう)の北部に位置し、南東には本格的なハイキングコースがあるポンポン山が隣接する。府道6号(枚方亀岡線)沿いにあるため車でも、また市バスでも行くことのできる都市型観光名所だ。余裕を持って出掛けることができるのであれば、市バスの利用をお奨めする。府道が芥川、出灰川、田能川という川々に沿っていて、情緒溢れる風景を眺めながらバスに揺られているのはとても気持ちが良い。特に今の季節は色づく山々や街路樹が空とコントラストをつけながら走馬燈のように流れて行く。

高槻森林観光センター:イメージ2

JR 高槻市駅の北口を出て市バス乗り場の2番で、樫田(かしだ)方面に行く「ニ科」「中畑」「杉生」行きに乗って「森林センター前」で下車する。所要時間は約 40分。行きも帰りも1時間に1本しか走らないので、あらかじめバスの時刻を確認しておいた方がよい。また途中、出灰(いずりは)で下車すると、出灰川のせせらぎが楽しめる「せせらぎの里」に立ち寄ることができる。喫茶店とみやげ品売り場がある休憩施設だ。ひんやりと冷たい空気の中、水の流れと岩、そして川底の傾斜で奏でられるせせらぎの音は、日常に凝り固まった神経を優しくもみほぐしてくれる。出灰から森林センターまでは3kmほどで、少し勾配が急だが歩いても楽しい道だ。

高槻森林観光センター:イメージ3

今回のハイキングの主なテーマは、家族(妻)サービス。ライターという職業がら家を空けることが多く(というか空けっぱなし)、家のことや愛犬(パグ犬)の世話を一人でやらせてしまっている。美味しい空気の中で紅葉を楽しませて、上膳据膳の食事と温泉で日常の疲れを癒してあげよう! という計画なのだが、実はそのすべてが「森林観光センター」で満喫できる。さて、昼過ぎに到着して、まずは林間散策道を歩く。モミジやケヤキ、そしてハナノキが黄色や赤、そして褐色に発色し、林道を鮮やかに飾っている。木洩れ日の暖かさを感じながら森林浴を楽しむのは心地よい。

高槻森林観光センター:イメージ4

林道を抜けるとキャンプ場があり、そこにあるあずま屋らしき場所で持参したコーヒーを飲む。ここらで妻の顔から少しずつ家事の疲れが抜けていくのが分かる。休憩を終えて林道を引き返し、しいたけ狩りができる「しいたけセンター」へ向かう。ここで採ったしいたけは、バーベキューの1品として食することができる。食事は他にも地鶏すき焼き、ぼたん鍋などがある。また、新メニューの山くじら鍋はイノシシの肉を薄くスライスしたすき焼き風鍋。バーベキューは一人前 1500~2200円、すき焼きや鍋は3500~4000円。お腹が大きくなったら、また林道を歩いたり、川で魚を探したりして腹ごなしをする。そして、小汗をかいたら施設内にある槻の郷荘で温泉に入る。宿泊客でなくても、タオル付きで650円で入浴できるのはウレシイ。タオルを片手につやつやの顔をした妻は、もうすっかりとリフレッシュしている。空はもう黄昏始めて、楽しい一日の終わりを告げる。

高槻森林観光センター:イメージ5

初心者にとって大切なのは、手頃な運動量と美しい景観だ。その他のものは飽きさせないオプションのようなもの。帰り道で話し合ったのは、食事や温泉についてではなく、紅葉の色や木々の種類、そして神秘的なせせらぎの音についてだ。人工的な楽しみは、都会に居ても味わえるが、自然が与えてくれる絶対的な安らぎは、やはり足を運ばなければ得られない。そして、そうやって楽しみを覚えたら、徐々にフィールドを広げていけばいい。この周辺には「高槻しゃくなげ園」「高槻しょうぶ園」などの観光スポットが沢山ある。来春には近くのポンポン山を歩いてみるのもいいかもしれない。とはいえ、家に帰り日常に戻った妻は、男湯が大浴場で女湯が小浴場であったことにさっそく不平を洩らしていた。

-DATA-

場所:
大阪府高槻市大字田能小字的谷2番地
交通:
JR高槻市駅の北口を出て市バス乗り場の2番で、樫田(かしだ)方面に行く「ニ科」「中畑」「杉生」行きに乗って「森林センター前」で下車する。所要時間は約40分。
駐車場:
約80台駐車可能
トイレ:
施設内にあり
温泉施設:
大人(中学生以上)650円、子供450円。平日午前11時~午後4時、土曜日午前11時~午後6時、日曜日午前11時~午後5時
木工・焼杉教室:
420~2000円(焼杉工作)
しいたけ狩:
250円/100g当り
山びこの森:
入園料(小学生以上)200円
キャンプ場:
利用料金:テント1張1泊で3200円

林道から瓶が森へ

Nov.25, 2000 雲の上の稜線を歩く

林道から瓶が森へ:イメージ1

この夏、友人を連れて大山に出かけた。それ以後、登山靴、ザックをみんな揃え始めた。「雪が降ったら、よーのぼらん!どっか行こうで。」大した体力もない連中。期待しているのは天気と展望。こいつらを満足させるには・・・。近場で手軽に登れる山、瓶が森(1896m)に案内する事にした。手軽と言っても四国山脈NO.4だぜ!

アクセス方法は「白猪谷」と同じく高松西-いよ西条まで高速道路、194号の寒風山トンネルを出てすぐに左に鋭角におれる。そこから「一ノ谷やかた」を越え旧寒風山トンネルに至る。一ノ谷やかたを越え旧寒風山トンネルまで十数カ所のヘアピンカーブをクリアーする。そこから望む山並み(笹が峰・冠山など)も素晴らしい。紅葉は終わっているが、冬の澄み切った空に笹原(石鎚山系イシヅチササ)のライトグリーンが良く映える。旧寒風山トンネル手前を左折し、瓶が森林道(村道瓶が森線とも呼ばれる)に入る。UFOラインとも呼ばれる道。「宇宙に手が届きそうなダイナミックさ」というのが由来のようです。

林道から瓶が森へ:イメージ3

林道から瓶が森へ:イメージ2

当日の天気は快晴。道の左は切り立ち高度感を増す。見渡す景色は絶景。右手に山並みを抱き稜線の真下を走る。背後には冠山、笹が峰が顔をのぞかせる。標高は 1400mを越えていた。(区間の標高は1300~1700m)途中には岩をくりぬいたトンネルもある。瓶が森までに通過する主要な山5座を紹介すると、寒風山、伊予富士、東黒森、自然(念)子の頭、西黒森と続く。いずれも本道より登山口有り。全ての稜線は繋がっており、時間、体力にあわせて縦走するのもいい。林道に入り30分程で西黒森の次にそびえる目的地、瓶が森を仰ぐ。登山口が左にあるのを確認して通り過ぎ100m先左手にある駐車場に車を止め行動食とスポーツ飲料を持って登山口に向かった。高松西ICから丁度3時間で登山口到着。

林道から瓶が森へ:イメージ4

林道から瓶が森へ:イメージ5

登山口前(標高約1600m)には木製のベンチとテーブルが5セット程配置されハイカー達を迎えてくれる。奥にはトイレがある。何組か下山し昼食を取っていた。13時、登山開始。良く整備された登山道。気温15度。無風快晴で暖かい。今回は男山(おとこやま)経由女山(おんなやま)のルートを取ることにした。実はこのルートが最短コース。登山口から5分も歩けば分岐の表示がある。直進すれば「氷見二千石原」を横切り女山に至るコースで地図上で1時間のコース。今回のルートは地図上で 30分。広げた地図を見た輩達(30男3人)はなにも言わずそのルートを行く。すでに大汗をかいているのもいた。

林道から瓶が森へ:イメージ7

林道から瓶が森へ:イメージ6

少し歩くと白骨樹が所々に見える。なにかしら人を寄せ付けない聖域の雰囲気が漂う。見上げれば小さな社の様なものが見えた。男山のピークである。男山までは登りが続く。その道中に丁度いい具合に石鎚山を拝める見晴らし台がある。目前に広がる笹原と白骨林の絶景は氷見二千石原。視線先には西日本最高峰を望む。ここまでわずかに10分。林道からそれだけの時間で視野が全く変わる。これだけ手軽に高度を稼ぎ、快晴の下で絶景を望めるとは。輩達は口をそろえて言った。「なんで男だけでこないかんのや・・。」続けて先を目指す。男山は目前。5分でたどり着き小休止。西側は木々を介してはいるが覗くと断崖絶壁!要注意。。。神像が祀られていた。写真を撮ったが大丈夫か・・・と思いつつ、後にし、女山を目指した。

林道から瓶が森へ:イメージ8

男山から少し下って行く。日当たりの悪いところには雪が残っている。注意して進む。笹原の中を進む気持ちよさ。平坦で歩きやすい道。全く苦にならない。登山と呼ぶべきだろうか?ほとんど登っていない。平坦道が少し登り始めたら女山まで5分。右に折れて少し行くと左前方に神像が祀られている。そこが、瓶が森(女山)頂上である。真っ青な空と清楚な緑。男山から15分息を切らすことなく瓶が森(女山)登頂。そこは360度のパノラマ。北の足元には新居浜の工業地帯の煙突が見える。視界がよければ中国山地まで見えるという。西にはさっき通ってきた西黒森を手前に稜線が続いている。東は笹原と白骨林の氷見二千石原が広がり先には石鎚が見える。南と言えば高知の山々が取り巻いている。30分でこれだけの世界に立てる。皆、満足していた。

林道から瓶が森へ:イメージ9

神像を祀っている隣には瓶が森山頂(1894m)が印されている。日本300名山である。切り立ってなく平原で「女」山を感じさせる。南側に突出した荒々しい男山と対照的である。山頂は笹原もなくゆっくり腰を下ろして休憩できるスペースがある。今回は昼食を持ってこなかったが、頂上でお弁当など持って家族で軽登山なんて最高。この日は天気も良く年配の方、カップルの姿もみられた。帰りは来た道を帰った。山頂からは瓶が森ヒュッテ、瓶が森白石小屋も見えた。そちらの状況は確認できなかったが、我々と違う方のルートからアクセス出来るよう。今度は青々としたみずみずしい笹原を見に来たい。その時には林道を瓶が森駐車場から下ったシラザ峠あたりでテントを張ろうなどといろんな想像をかりたてられる。こんなに身近にこんなすばらしいところがある。林道がこれだけ整備されていることもあまり知られていない。四国もいっぱい見所がある。それだけでもうれしく思える。おすすめスポットです!帰りの登行時間は女山-男山(10分)男山-登山口(10分)だった。

林道から瓶が森へ:イメージ10

登山口前のベンチでちょっと遅めの昼食。その後、車に乗り込みシラザ峠方面へ1分。林道から右手に見えるかわいい「こんもり」した山、子持権現山(1677m)に挑戦しようと意気あがる男集。以前、来たときに鎖場を見つけ登ろうとしたが家内に止められ断念。「今日こそは!」。林道沿いにある道標を見つけ、駐車。1分ほどで登り口に着く。ここから先は鎖場です。石鎚山の鎖場をご存じの方は想像してみて下さい。その斜度がもっと急でしかもとりつく岩がツルツル滑る・・・。登山靴のソールでは堅すぎて足場をホールド出来ない。鉄製の鎖は非常に冷たく長く握っていられない。クライミングシューズと革製の手袋でもあれば・・。無理はしなかった。のびる鎖は約50m程だったか。頂上の裏には、権現さんが祀られているらしい。いつかはお目にかかりたい・・・。楽しみにしていた筈が絶句しました。登り口にある賽銭入れ?(名前の通り子宝に恵まれるという)に男集が賽銭を投じて拝んだ・・・。

来た道を逆戻りする。日が落ちだし気温も下がり始めた。瓶が森林道は例年11月30日で閉鎖となる。来年の4月中旬の開通までおあずけです。麓の194号も積雪時には通行が困難になる。雪に色着く頃、困難でもまた来たい。そう思わせる山々。気の置けない連中との登山もいい・・・。夏には子持権現山も攻略したい。

-DATA-

場所:
高知県土佐郡本川村
交通:
高松西-西条(高速道路1時間)
西条ICから寒風山トンネル出口(約40分)
寒風山トンネル出口-瓶が森駐車場(約45分)
以上 休憩時間等含まず。
タイム:
登山口-分岐  5分
分岐-男山 10分
男山-女山 15分
女山-男山 10分
男山-登山口 10分
駐車場:
瓶が森駐車場(20~30台)
トイレ:
瓶が森登山口手前

北鎌倉 禅寺を包む山村風景

Nov. 23, 2000 北鎌倉駅~六国見山~明月院

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ1

秋の鎌倉は、いつにも増して人が多い。雑踏から抜け出して、ひなびた谷戸を歩きたくなった。禅寺として知られる円覚寺や明月院をふもとに抱く、六国見山へと向かった。JR横須賀線北鎌倉駅東口を出た後、人の波が流れ込む円覚寺を右に見てホーム沿いに北上。岩に穿たれたほら穴をくぐり抜け、最初の踏み切りのある場所を右折する。小路を登ると、赤く色づいた民家のモミジが迎えてくれた。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ2

坂を登りつめ、いったん住宅地へ出る。すぐに現れる「至六国見山」の道標に沿って進めば、じきに昔ながらの農耕地、長窪が姿を現す。南側の山向こうは、円覚寺草創の折、白鹿が開山の説法を聞きに現れたという伝説の山、瑞鹿山だ。谷あいでは色とりどりの季節野菜がつくられ、次第に高く深く奥へとつながっていく。キクが揺れ、トビが舞う。落ち葉たきの煙が、白くほのかに立ち上る。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ3

再び現れた道標が、左の道へと登山者を招く。しかしここでちょっと寄り道をして、長窪と呼ばれる谷戸の奥へ入ってみた。ぽっかりと時空を越えてきたような、山村風景が広がった。農具の置かれた納屋、小さな地蔵堂。「今年は大根植えてみたよ。」風に乗って響いてくる、人々の声。山畑がつきる谷戸の最奥は、奥込(おっこみ)と呼ばれるところだ。かつてシカやキツネ、ウサギなどを谷間から追い上げ、網や落とし穴で捕獲した狩場の名残。獣が縦横無尽に走っていたころの鎌倉の山並みが、まぶたに浮かんでくる。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ4

登山道へ歩みを進める。道はスギ林を抜け、ササのトンネルへと吸い込まれていく。辺りに響くのは、自分の足音だけだ。ガサッ、とふいにヤブが動いた。チャッ、チャッと鳴きながら笹薮をかいくぐって逃げていくのは、冬を迎え、山を下りてきたウグイスだ。禅寺の多い北鎌倉。こうして静かな自然に耳を傾けていると、心の真実の姿を求める禅の世界に、少しだけ近づくことができる気がする。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ5

ふいに視界が開け、頂上へ。目の前に江ノ島が浮かび、三浦半島、伊豆半島、丹沢の山並みまでが、薄墨をひいたようにぼんやりと連なる。『風土記稿』で「郡中第一ノ壮観ナリ」とたたえられる景勝の地だ。六国見山の名の由来は、明治初期までの区制で相模、伊豆、甲斐、武蔵、上総、安房の六国が一望できたためという。今も富士講の石碑が立つ頂上付近は、葉を落とした桜の木々に囲まれている。遥かな眺望と花霞が溶け合う春が、待ち遠しい。ここから北へ向かえば大船方面へも出られるが、今回は北鎌倉へ戻るコースをとる。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ6

頂上から東へ進み、古樹の根元に小さな石塔を見つける。稚児ヶ墓だ。ひっそり手向けられた花に込められた祈りに、思いを馳せる。カサコソ落ち葉を踏みしめ進むと、ふいに住宅街に出た。道なりに尾根際を行くと、明月院方面を示す道標が。直進すれば天園ハイキングコースにも抜けられるが、ここで右折して下り明月院へ向かう。蛇行しながら細い道を下ると、もう傾いた秋の日を浴びて、小さな野仏が迎えてくれた。

北鎌倉 禅寺を包む山村風景:イメージ7

ふもとに到着。谷あいの小さな喫茶店で、チーズケーキと紅茶を楽しむ。木のぬくもりに包まれたカウンター。「静かな雰囲気を楽しんでほしいから、雑誌などに広告はしないんです」と話すご主人の穏やかな声が心地良い。名刹として名高い明月院を抜け、パステル画や詩集を集めた葉祥明美術館に立ち寄った。作品だけでなく、小さな洋館の空間全体に、宇宙を感じさせる深い静かな心がある。忙しい日常を忘れた一日。北鎌倉駅までは、もうすぐそこだ。

※2002年から、長窪の畑は宅地開発された。六国見山へは、現地にある案内板を参考に登ることができる。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR横須賀線→北鎌倉駅
タイム:
北鎌倉駅東口(徒歩10分)→最初の踏み切りで右折(徒歩15分)→道標に沿い右折(徒歩10分)→追込の谷戸(徒歩15分)→六国見山頂上(徒歩40分)→明月院(徒歩15分)→北鎌倉駅
駐車場:
無し
トイレ:
北鎌倉駅に有り
参考文献:
御所見直好『誰も知らない鎌倉路』集英社、1983
村上光彦『鎌倉百八箇所』用美社、1989

白木峰1596m

Nov.23, 2000 南アルプスから立山連峰までを一望

白木峰1596m:イメージ1

トレッキングシーズンもいよいよ終盤となる。雪曇り前の突き抜けた秋晴れの下、車で白木峰に向かう。おわら風の盆で知られる八尾町から国道471号線を河合村方面へ南下する。道幅が狭く、対向車とのすれ違いに苦労しながら進むと、左に21世紀の森へと至る支道がある。キャンプサイトを通過しひたすら高度を上げると、次第に道が雪でうっすら白くなってゆく。当初は標高1300m地点の駐車場から山頂を目指す予定が、予想外の積雪で先に進めず、標高1180m 付近に戻り車道を横切る登山道から出発する。

登り始めの階段から雪が5~6cm積もっている。革登山靴にスパッツ、もしくは長靴でないと歩くのは厳しい。雪面に残るウサギの足跡が、先導しているかのようだ。運動量が多いので、Tシャツの上に山シャツを着れば十分寒さはしのげる。落葉広葉樹林帯を30分ほど歩き、小ピークを下りると、眼下に標高 1300m地点の駐車場が見える。駐車場からの登山道と合流し、岩場の急登へと変わる。10分ほどで車道に出る。雪で埋もれた登山道には入らず、そのまま車道を進むことにする。一人で歩いていて聞こえてくるのは、一定のリズムで雪を蹴り出す自分の足音だけ。周りの景色とともに音まで凍りついてしまったかのように静かだ。更に車道を進むと、緑の外壁の白木山荘が左に見えるので、登山道から近づいていく。いまは閉ざされているようだ。

白木峰1596m:イメージ2

山荘付近から見える景色は風衝風景。風雪により高い木が生えず、ササと潅木ばかりの見通しのよい尾根筋である。登山開始から1時間20分ほどで白木峰山頂(1596m)に到着する。山頂には「白木峰」と刻まれた看板と、黒く光る方位盤。上に積もった雪を払いのけて山座同定。少しかすんでいるものの、南から御岳、乗鞍岳、焼岳、槍ヶ岳、と南アルプスが続き、薬師岳から立山、剣岳そして毛勝山まで一気に見渡せた。運が良ければ、遠く富士山も望めるようだ。比較的楽に登れる割には、景色が素晴らしく、お得な山といえる。青空の下、雲に浮かぶ白い山々を眺めながら昼食をとると、地上より何十倍もうまく感じられた。

白木峰1596m:イメージ3

3時間近く山頂からの景色を楽しんだ後、下山開始。その時、軽装で登ってきた家族連れを見たが、少し心配になった。低山だといってあなどらず十分な装備を用意したい。下山は山頂まで通じている車道を歩く。下山開始40分で1300m駐車場、1時間で登り始めの1180m地点に到着する。車道は楽に歩けるが、物足りない。周囲の景色はガスに隠れ、何も見えずひたすら歩くのみ。午後になって暖かくなり、雪はかなり融けてしまっている。フカフカの新雪を味わうには早朝にくるべきであろう。早くも雪山を体験できて、有意義であった。

-DATA-

場所:
富山県 婦負郡 八尾町
交通:
北陸自動車道富山ICから八尾町方面に進み、国道472号線から471号線へ南下する。 国道471号線を南下すると、左に21世紀の森へ通じる山道がある。そこをひたすら登ると、登山道と駐車場がある。
駐車場:
標高1300mの登山口に車数台のスペースあり
トイレ:
駐車場にあり
水場:
なし
携帯電話:
山頂は使用可

高頭山1210m

Nov.19, 2000 秋よ、さようなら。冬よ、こんにちは。

 高頭山1210m:イメージ1

一雨ごとに気温は下がり、冬の足音が近づいてくる。雪で閉ざされる前に、高頭山(たかずこやま)へと車を走らせた。県道43号線富山上滝立山線から県道 184号線河内花先線を経由し、熊野川ダムを目指す。さらに進むと河内へと入る。ここは槍ヶ岳開山の祖である播隆上人の出生地であり、それを示した碑が立っている。その先の川を渡ったところに登山口(標高387m)がある。現在発電所の工事中で、その巡視路を使って登ってゆく。スギ林の中の階段を抜けると、資材運搬用のリフトが並ぶ尾根に出る。重機が通れるように道は拡幅されており、登山の気分がしない。発電所の脇から本来の登山道へと戻る。

 高頭山1210m:イメージ2

登山開始から40分ほどで高頭山と三枚滝の分岐(標高700m)に着く。ここからは湿り気を帯び、滑りやすくなった落葉を踏みながら一歩一歩高度を稼いでゆく。樹木はすっかり葉を落とし、青々としているのはササの葉のみ。顔の高さほどに伸びた葉に前進を阻まれながら登山道を往く。約1時間で拓けた尾根に出る。路傍には直径1mを越すスギの切り株が点在し、良質のスギが採れたことを物語っている。伐採後放置されたままの倒木には、つららが光っていた。尾根の草むらの中に避難小屋がポツンと建っており、1坪ほどの内部は手入れがされていないものの、風雪はしのげそうであった。すぐそばに標高980mと書かれた標柱がある。山頂を見上げると木々が白い。どうやら雪のようだ。

 高頭山1210m:イメージ3

ササ地帯を過ぎるとクヌギの林となる。落葉の上にザラメ状の雪があり、登るにしたがい融け残る面積は増していった。そして気温はグンと下がり、体を動かしているのにもかかわらず重ね着せずにはいられない。葉を落とした木の枝には風下側に薄い板状の氷が伸びて、あたかも蒼い花が咲き乱れたかのようだ。風が吹くと氷の破片がきらめきながら頭上に舞い落ちてきた。はかなく幻想的な花吹雪であった。

 高頭山1210m:イメージ4

1 時間50分で小ピーク(1203m)に着くが、一旦コルへ下り更に10分ほど歩くと山頂(1210m)へ辿り着く。若いブナ林が広がる山頂は、標柱がないと尾根の平らなところだと思い先へ進んでしまいそうだ。木が多く、遠くまで見通せるところは限られている。雪がうっすらと積もっており、立ち止まっていると体がどんどん冷えてくる。腰を下ろす気にならないくらい寒くて、手早く昼食を済ませたら下山する。

 高頭山1210m:イメージ5

帰りは往路を引き返す。傾きかけた陽によって景色は上りとは別物になった。斜陽が山肌を照らしてコントラストを強調し、わずかに残った紅葉を浮かび上がらせている。紅葉はあたたかな光を透し、燃えるように輝く。モノクロの冬直前に見た色彩豊かな秋を網膜に焼付け帰路につく。

-DATA-

場所:
富山県 上新川郡 大山町
交通:
北陸自動車道立山ICで降り、岩峅寺方面へ南下する。富山地方鉄道上滝線大川寺駅そばの踏切りから県道43号線富山上滝立山線に入り、熊野川ダムを目指す。
熊野川ダム先の河内を過ぎ、川を渡ると発電所巡視路兼登山道が見える。
駐車場:
登山口前に車3台ほどのスペースあり
トイレ:
なし
水場:
播隆上人記念碑の右に清水あり
携帯電話:
登山口は不可、山頂は未確認

負釣山959.3m

Nov. 12, 2000 落葉踏みしめ雪山一望

紅葉の見頃は終盤となり、いよいよ冬が到来する。既に2000m以上の山々は山頂に雪が積もり始めている。これを一望しようと、負釣山(おいつるしやま)へ向かった。

負釣山959.3m:イメージ1

黒部インターから東に約6kmのところにある、舟見ふれあい温泉が登山道入口となる。ここから看板に従い、舟川ぞいに林道を進むと、左の展望コースと右の西尾根コースに分岐している。西尾根コースは40分位で登れるそうだが、今回は展望コースをたどることにする。林道の先には広場があり、車はここまで乗り入れられる。大きな案内板の横から歩き出す。

負釣山959.3m:イメージ2

はじめは擬木の階段を登る。道の片側はスギの植林が続く。10分ほどで一合目の標識が立っている。山頂を十合目としておよそ260mおきに標識が設置されているので、ペースの参考になる。三合目を過ぎるあたりからミズナラの林の中を登る。登山道は茶色い落葉で埋め尽くされており、踏みしめると絨毯のようにフカフカしている。そこに風で落ちたカエデの葉が、真紅のアクセントを添えている。

負釣山959.3m:イメージ3

六合目付近にトラナワの張られた岩場があり、慎重な足運びとなる。トラナワ帯以外は割合楽に登れ、約1時間で七合目に到着する。雪を頂く朝日岳が眼前に姿を現わす。ここから山頂までは、急登とトラナワ帯のふんばりどころとなり、七合目から15分ほどで山頂(959.3m)へ。登頂時間には個人差があり、別のグループ(50歳代の男1、女2)は2時間かかったと言っていた。

負釣山959.3m:イメージ4

広めの山頂には三角点と八角形の方位盤がある。低く垂れ込めた雲の下には、朝日岳から白馬岳、五龍岳が続き、剱岳、毛勝山、僧ヶ岳まで白く雪化粧をしている。視線を麓に移すと、黒部川の扇状地が広がり、その先には富山湾と霧に浮かぶ能登半島まで眺めることができた。景色を堪能した後は山頂で昼食をとり、他のグループと山の話で花が咲く。

下山は往路を戻る。下りの際は落葉でスリップするので気をつけたい。写真を撮りながらゆっくりと下りて約1時間で登山道に着いた。下山後はふれあい温泉で汗を流す。町営の内風呂で、泉質はナトリウム-炭酸水素塩である。

-DATA-

場所:
富山県 下新川郡 入善町
交通:
自動車なら北陸自動車道黒部インターから宇奈月温泉方面に進み、県道13号朝日宇奈月線を朝日方面に北上する。入善町舟見のふれあい温泉が登山口へのスタート地点となる。
電車:
電車なら富山地方鉄道本線愛本駅で下車し、ここから地鉄バスで舟見下車。
駐車場:
登山道前に広場あり
トイレ:
広場に簡易トイレあり
水場:
なし
携帯電話:
山頂および尾根で通話可能

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う

Nov. 11, 2000 天園ハイキングコース

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ1

山道に刻まれた歴史の息吹を感じてみたいと思い立った秋の一日。鎌倉アルプスとして親しまれる、天園ハイキングコースへと向かった。民家のキクやムラサキシキブに立ち止まりながら、まずは瑞泉寺へ。夢想国師が岩盤をくりぬいてつくった庭園は、純粋な禅の心に通じる名園の一つとされる。瑞泉寺へ向かう道の右脇に、天園への登山口がある。近年新たな墳墓群が発見され、早稲田大学による調査が行われているところだ。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ2

ひっそりした山道。このあたりには、人間に化けては食い物ねだりをしていたというちょっと憎めないむじなの言い伝えがある。森の暗がりに首をすくめながら登るうち、赤いよだれかけのお地蔵さんに出会いほっと一息。貝吹地蔵だ。1333年、新田義貞に敗れた北条高時の家来が高時の首を渡すまいと逃げていたとき、ほら貝を吹き谷間に導いてくれたこの地蔵のお陰で、無事に葬ることができたと伝えられる。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ3

山頂に近付くにつれ、人の連なりが目立ってくる。静かな山歩きを好む人は、春や秋の休日にはこのコースを避けた方が良さそうだ。ようやく坂を上りきって天園へ到着したものの、茶屋まで満員で落ち着きにくい。小路に入り、小休憩を取ることにした。青く澄んだ空を背に、イチョウの葉が黄色に輝く。右手にはゴルフ場が広がり、横浜方面まで見渡すことができる。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ4

広々とした頂上付近の尾根を行くと、突如として階段状に露出した巨大な岩盤が現れる。表土に覆われた場所が多い鎌倉ではスリリングな岩歩きは楽しめないが、ここには珍しく変化に富んだ30メートルほどの岩場が続いている。頂上からは、古都鎌倉を敵の侵入から守ってきたのびやかな尾根が見下ろせる。大平山はかつて六国峠と呼ばれたところ。陣地を計るつもりで山並みを眺めれば、武将たちの息づかいが聞こえてくる気がする。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ5

少し寄り道をして覚園方面へ下ると、四角いほら穴が現れる。やぐらと呼ばれる、鎌倉時代につくられた墳墓だ。付近にはこのやぐらが200近く存在し、百八やぐら群と呼ばれる。北条泰時が土地の有効利用のために平地に墓をつくることを禁じたため、人々は丘陵のやわらかい凝灰岩を堀り、死者を弔ったと考えられている。やぐらは鎌倉時代の終焉とともに、急速に造られなくなった。今は苔むした岩だけが、そっとその暗闇を包んでいる。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ6

さらに歩みを進めると、浸食により造形されたうねるような奇岩に出会う。十王岩だ。奥を覗くと、風化した三体の像がある。昔、この像は夜になると、わめくがごとく、訴えるがごとく奇声を発したことから「わめき十王」と呼ばれたそうだ。相模湾から吹き上げた風が、ひんやり頬をなでる。南側を振り向くと、「かながわの景勝50選」にも選ばれた絶景が。青く広がる海に、これまでの疲れも吹き飛んでしまう。

鎌倉 古道に刻まれた歴史に出会う:イメージ7

カラスが鳴き、鐘の音が秋の日の終わりを告げる。勝上山の展望台へ。丹沢方面にたれこめる霧が、紅色に染まる。半僧坊に立つ天狗像の脇を通り、鎌倉五山の第一位、建長寺へ抜けた。大勢が行き交う山道でも一足立ち止まれば、先人たちの築いた歴史が語りかけてくることを知った今日の山行。いにしえの風景に思いを馳せて、薄墨色のまちを駅へ向かった。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市
交通:
JR・江ノ電鎌倉駅より徒歩30分またはバスで起点の瑞泉寺へ
タイム:
瑞泉寺(徒歩15分)→貝吹地蔵(徒歩15分)→天園休憩所(徒歩10分)→大平山(徒歩20分)→百八やぐら(徒歩10分)→十王岩(徒歩10分)→勝上山(徒歩10分)→半僧坊(徒歩10分)→建長寺
駐車場:
無し
トイレ:
駅、瑞泉寺、大平山、建長寺に有り
参考文献:
岸由二著『いるか丘陵の自然観察ガイド』山と渓谷社
浄明寺太郎著『かまくらなんでもガイド』金園社
田中敏治著『てくてくマップ鎌倉』北海道地図(株)
三浦勝男著『鎌倉の史跡』㈱かまくら春秋社

坪庭

Nov. 5, 2000 厳しい自然が作り出した溶岩台地と縞枯現象

約500年前に噴出したらしい溶岩の台地。溶岩と高山植物が作り出す景観は日本庭園を思わせる所から「坪庭」と呼ばれるようになりました。坪庭の周りに広がる山々は、厳しい寒さによって引き起こされる縞枯現象を見ることが出来き、大自然の厳しさが実感できます。

坪庭:イメージ1

国道152号線を白樺湖方面に向かい、白樺湖からビーナスライン経由で蓼科高原に車を走らせます。連休ともなれば非常に混雑する白樺湖周辺の道路を通り越し、蓼科高原または茅野の標識を見ながら進みます。峠を越えて約10分ほど車を走らせるとロープウェイ入口の標識が見えますが、地味な標識なので見落とさないように進みたい。標識を左折して約5分でピタラス横岳ロープウェイに到着です。

坪庭:イメージ2

駐車場から坪庭まで2つのルートがあります。ピタラス横岳ロープウェイもしくは登山道を使い坪庭まで行く方法がありますが、ほとんどの人達はロープウェイを使って登っていきます。登山道はロープウェイ直下を歩き、スキー場のコース内を歩いていく形になりますので、歩いてもそれほど疲れないと思います。20分間隔で動いているロープウェイを使い山頂駅まで約7分。片道900円は少々高いが、最初から最後まで展望が楽しめるので今回はこちらを使いました。

坪庭:イメージ3

山頂駅から目の前に広がる溶岩台地が「坪庭」です。山頂駅の標高は2237mで気温が6℃です。一気に登ってきたので山麓駅とはだいぶ気温差があり、坪庭の散策コースを歩き始める頃にはとっても寒かったです。しばらく歩き始めるとハイマツがすべて一方方向に曲がっています。冬の間、強い風と雪でハイマツに樹氷が付き曲がったと思われます。一方通行の歩道を進みながら北横岳2480mに足を運ぶ計画をしていたが、装備不十分だったので今回は諦めました。

坪庭:イメージ4

縞枯現象の山々を見ながら山頂駅に向かいます。夏には30種類以上見られる高山植物も今の時期ほとんど見られません。それを物語っているのが縞枯現象なんでしょう。あと数日もすれば銀世界の景色に変わり、厳しい冬がやってきます。長い年月をかけて作ってきた自然は大切にしたいものです。

ピタラス横岳ロープウェイは最終が午後4時になっていました。季節により運行時間が変わるらしいので事前に確認してから計画したほうが無難です。また山麓駅と山頂駅の気温差がだいぶあり、風が吹いていれば体感温度はさらに下がります。充分な服装で出かける事をお勧めします。

-DATA-

場所:
長野県茅野市北山蓼科高原
交通:
国道152号線から白樺湖を経由してビーナスラインを茅野方面または蓼科高原に向かいロープウェイ入口を左折して5分。
駐車場:
無料
トイレ:
山麓駅、山頂駅
問合せ:
ピタラス横岳ロープウェイ
電話:
0266-67-2009
料金:
大人 片道900円 子供 片道450円

鎌倉 錦秋の渓谷を行く

Nov. 4, 2000 獅子舞~太平山

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ1

鎌倉には、閑静な紅葉の渓谷がある。有名な天園ハイキングコースに通じる、細いわき道だ。雨上がりの青空の下、秋を求めて鎌倉駅へ向かった。観光客で混雑する駅から北東に進み、大塔宮へ。鎌倉幕府倒幕を企てた護良親王が幽閉された土牢のある神社。ヤマノイモの葉が、黄色く照り映えている。北上し、右手に瑞泉寺を見て分岐を左折した。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ2

永福寺跡へ。この広大な原野には、かつて荘厳な寺院があったという。源義朝が、戦死した義経ら武将の魂を鎮めるため、平泉の中尊寺を模し建立したものだ。今はその面影すらなく、ススキが銀の穂を揺らすばかり。昭和41年に国の史跡に指定され、近く寺院跡の復元が予定されている。分岐を右折し、変電所のふもとを進む。細々と営まれる畑を通ると、道は木々の合間に入って行った。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ3

二階堂川沿いに進むと、喧噪はパタリと途絶える。流れが細まり、岩壁が両岸に露出する渓谷へ。逆光を浴び、こずえがまぶしく光る。ヒッ、ヒッと静寂を破る鳥の声。ジョウビタキだ。オレンジ色の腹に黒い背、2つの白斑。この斑を着物の紋に見たて、モンツキドリと呼ぶ地方もある。シベリアから飛来した彼らが冬のなわばりを得るための、命をかけた歌を聴く。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ4

次第に深い森に入ると、せせらぎの音が静かに響いてくる。浸食を受けた岩が階段状に広がり、なだらかに3段、4段と水を落としている。小さな滝つぼに広がる波紋。この河床は、約500万年前の噴火によりできた逗子シルト岩層だ。絶えざる浸食がかたちづくった不思議な地形に、ときおり木漏れ日が差し込む。シダが大きな葉を広げ、太古の水底にいるような錯覚を覚える。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ5

左右を囲む壁面には、かつてかまくら石といわれ、石垣や石段に用いられた岩盤層がみられる。池子火砕岩層と呼ばれるかなり耐久性がある堆積岩だ。あたりは手入れをされなくなって久しいスギの植林地。水分を含みぬかるんだ土が、足をすくう。古ぼけた板切れの橋を渡りながら、人々が森と共に暮らした時代に思いを馳せる。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ6

急な傾斜を登るにつれ、林が明るくなっていく。ほんのり紅をまとい始めた木々。温暖で常緑樹の多い鎌倉では、山全体が赤く染まるところは少ないが、ここは沢一帯をイロハモミジが覆っている。朝夕の冷え込みが深まる11月下旬~12月上旬には、谷全体が深紅に染まるそうだ。晴れた日には、紅葉の海から富士山が顔を出す様も見られるはずだ。

鎌倉 錦秋の渓谷を行く:イメージ7

道を登りつめ、天園ハイキングコースの尾根に出た。眼下に広がる海に、やわらかなベール状の光が差し込む。石段状の太平山を通り、苔むした岩間を抜けて、覚園寺方面へ進む。つるべ落としの秋の日に、追われるように下山した。分岐を左折し、ようやく亀ヶ淵の住宅地へ。南下すれば、先の永福寺跡に出る。人恋しくなる黄昏時、にぎやかな小町通りをそぞろ歩いて鎌倉駅へと辿り着いた。鎌倉の秋は、まだ始まったばかり。谷が紅葉で埋まる頃、今度はまた栗ご飯でも持って訪れよう。

-DATA-

場所:
神奈川県鎌倉市二階堂
交通:
横須賀線・江ノ島電鉄線鎌倉駅→徒歩30分またはバス大塔宮
タイム:
鎌倉駅(30分)→大塔宮(15分)→永福寺跡(5分)→分岐を右折(10分)→獅子舞(1時間)→太平山(30分)→覚園寺への分岐(30分)→永福寺跡(30分)→鎌倉駅
駐車場:
無し
トイレ:
駅、ふもとのコンビニ、大塔宮などに有り
参考文献:
『鎌倉なんでもガイド』浄明寺太郎著 ㈱金園社発行
『鎌倉の自然』鎌倉市教育研究所編 鎌倉市編集委員会発行

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