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伊豆 天城縦走

May.04, 2000 万三郎岳-万二郎岳-八丁池

伊豆 天城縦走:イメージ1

『伊豆の踊り子』を読んだ影響もあって、今年のゴールデンウィークは天城連山を縦走することにした。まずはバスで天城高原ゴルフ場へ。バスを降りると、マメザクラやアセビの花が迎えてくれる。万二郎岳への道は、最近歩きやすく整備されたようで、真新しい木や石の階段がしばらく続く。アズマヒキガエルの交尾や、沢沿いに1本だけ咲く、紅色のツツジの花。海抜1000m近い当地では気温も低く、下界で1カ月ほど前に見た春の景色が再び舞い戻ってきた感がある。途中、水の流れる沢や大きな岩などもあって、なかなか楽しく歩ける道だ。

伊豆 天城縦走:イメージ2

足元のスミレの花に元気づけられながら急登をクリアし、万二郎岳へ。山頂は樹木に囲まれ、展望は無い。ゴールデンウィークということもあり人も多いため、少し場所を外して休憩した。万二郎とは、伝説に登場する天狗の名前。その昔、伊豆には万太郎、万二郎、万三郎という3人の天狗がいて、それぞれのすんでいた場所が達磨山、万二郎岳、万三郎岳といわれるようになったと伝えられている。修善寺に近い達磨山は今回歩くコースには入っていないが、万二郎岳、万三郎岳は尾根づたいに連続して並んでおり、2人の天狗が力を合わせて大蛇退治をした逸話も残っている。

伊豆 天城縦走:イメージ3

霧が出てきた。この付近の降水量は年間3000ミリを越え、日本のなかでも多雨地域に数えられる。ブナをはじめヒメシャラ、アセビ、シャクナゲなどが群生する温帯林だ。赤茶けた枝がくねるアセビのトンネルを抜けて、万三郎岳へ。1407メートル、伊豆の最高峰だ。しばらく道を下ると、急に人の姿が少なくなった。今日歩く天城縦走路は、全長約17km。少々心して行く必要がある。ときおり陽が射すと周囲が鮮やかな色彩を帯びる。ブナの新芽で、山肌がやわらかな萌黄色に染まって見えた。

伊豆 天城縦走:イメージ4

片瀬峠、戸塚山と、いくつかの小ピークを経て、小岳へ到着。ブナの原生林に囲まれた、静かな山頂だ。まとまった面積の自然をもち温暖な気侯の天城は富士箱根伊豆国立公園の一部で野鳥も多くすんでいる。ポポ、ポポ、というツツドリの深みを帯びた声や、澄んだ声でつぶやくように鳴くクロツグミの歌。ヒンカラカラ…、と、軽快なコマドリのさえずりも聞こえてくる。春から夏にかけての森は、オスがメスを探したり、なわばり宣言をしたりする小鳥のさえずりでいっぱいだ。

伊豆 天城縦走:イメージ5

天城火山の中央火口丘といわれる白田山を経て、八丁池へ。八丁池は、周囲が870m、約8丁あることからその名がつけられた。火山の火口跡で、水深は1~15メートル。見た目にも遠浅な印象がある。天城の瞳とも呼ばれ、澄んだ水をたたえるおだやかな水面が、マメザクラやアセビの花で白や桃色に染まった尾根を映し込んでいる。5、6月には、天然記念物モリアオガエルが、周辺の木の上に卵を産みつけるそうだ。さすがに白い泡に包まれた卵塊は、見つけることができなかった。

伊豆 天城縦走:イメージ6

展望台へ。アセビが一面に咲き乱れる。360度が見晴らせ、今日、これまで歩いたなかでは一番展望が良い場所だ。ここから見渡せる天城連山は海中から噴火して伊豆半島をかたちづくった火山のひとつ。「天城山」は日本百名山のひとつに数えられているが、この名をもつ山は無く、万三郎岳・万二郎岳などの天城連山を総称してこう呼ばれる。天城山は伊豆半島を南北に分ける長い尾根のため、天城連山の南と北では気侯や風土もいくぶん違っているという。一息ついた後、再び樹林のなかの道を下る。だらだらと下る変化の乏しい坂に、少々歩き飽きてくる。

伊豆 天城縦走:イメージ7

ふいに、雲が切れた。向かいの山が、桃色、萌黄色、深緑、黄色…と、絵の具を乗せたように染まっていく。せせらぎの音とともに、わさび田が現れる。見とれるうちバスの時刻が迫り、走って下山。ようやく旧天城トンネルに出た。踊り子たちも通ったという古いトンネルを横目で見ながらバスに飛び乗る羽目となり、『伊豆の踊子』の世界に浸ろうという淡い期待は、脆くも崩れ去った。温泉で、汗を流しながら、ふと思う。ドタバタ劇も含めた旅先での風景のなかで、人は新しい世界や自分自身をも見つけていく。この意味では、今日の旅も、天城越えをした青年の追体験のひとつといえるのかもしれない。

-DATA-

場所:
静岡県田方郡中伊豆町ほか
交通:
JR伊東駅よりバス→天城高原ゴルフ場バス停下車
コース:
天城高原ゴルフ場(徒歩50分)→万二郎岳(徒歩70分)→万三郎岳(徒歩15分)片瀬峠(徒歩40分)→戸塚峠(徒歩25分)→白田峠(徒歩40分)→八丁池(徒歩120分)→天城峠
駐車場:
無し
トイレ:
天城高原ゴルフ場、八丁池、旧天城トンネルにあり
参考文献:
川端康成『伊豆の踊子』新潮社、1950
真辺征一郎『エアリアマップ 山と高原地図30 伊豆』
渡辺正臣『伊豆』実業之日本社、1977

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