
いつもならばすぐに登りたい山が見つかるが、今日に限って山が目に入ってこない。平野の単独峰は唐突に現れるので、その一瞬で形、色などなど気に入ればすぐに入山するのだが、峰がつながっている山脈は一体どれがピークでどれが峠でというように登るまでの選択がとても面倒くさい。朝からいくつかの山を見たが登る気になれず、香川の屋根である讃岐山脈に目標を変える。高松市東植田町の県道30号を塩江方面へと南へ下っていくと、細くなった山道沿いに集落が見えてくる。山道を走っている間ずっと気になっていた、小さなピークへ登る気で、登山道を探していた。谷の小さな段段畑を下った辺りで(30号線)、畑を隔てた山肌(道路の東側)にしっかりとした畦道風の登山道があった。

この道が果たして目標の小ピークまで続いているのかも不確かなまま、畑の畔を歩き登山道に取り付く。車道は残念ながら高い場所を走っているので、600m程の頂上も道からは小さな山程度にしか見えない。山菜も丁度手遅れになるかならないかの葉の開き具合で、里山シーズンもそろそろ終わりかなといったところである。集落はあるが人に会うことは無く、ひっそりとしている。状態の良い山道を10分程歩くと、林道に突き当たる。この道沿いに東植田小菅沢分校があるらしい。そのまま車道を100mほど登ると、綺麗に手入れされた植林の杉林の中にまた山道が現れる。暗くて涼しい林の中をすぐそこに見えているピークの方へと登っていく。結局、車を停めてから30分も経たないうちに小さなピークに着いてしまった。頂上は杉ではなく中、低木の広葉樹で見晴らしもこの上なく悪い、しかも狭い。

これでは散歩にもならないと思い、頂上から道を探すが獣道すら見当たらない。と、道も無い谷の方から音がする。よーく聞くと、ラジオの音であった。風で谷から運ばれて来たのだろうが、どんなに見ても人もラジオも見つからない。山の選定を間違えたことよりも、ラジオだけが気になって長い間林の中を見回していた。人の気配も無く枝を踏む音もしないが、音を聞いていると何故か遠くなったり近くなったりしている。妙に不気味な感じがする。山菜採りか、猟か?本当に人か?声をかけようか?とも考えたが猪と間違えて仕留められてはたまらないと思う。しばらくすると、独りでごぞごぞとしているのが怖くなってしまい山を駆け降りた。息切れをする前に登山口まで降りてしまった。畦道にすわり菜の花の中で考え直すと、猟をしながらラジオは聞かないな、と自分の早合点と山の選定力の無さを後悔した。ラジオの音はとっくに聞こえなくなっていたが、静かな谷で風が吹くたびに独りでびくびくしていた。
-DATA-
- 場所:
- 香川県高松市東植田町
- タイム:
- 20~30分
- 交通:
- 公渕森林公園から登山道入口まで車で20分
- 駐車場:
- 特には無いが30号線沿い(要確認)
- トイレ:
- 無し