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ミルフォード・トラック

Jan.30-Feb.2, 1999 『世界一美しい散歩道』に酔いしれる

ミルフォード・トラック:イメージ1

『世界一美しい散歩道』"The Finest Walk in the World"。ニュージーランド(以下NZ)の事はご存じなくとも、アウトドアファンならこの異名を持つ『ミルフォード・トラック』というトレッキング・コースの事は、1度ならず耳にされた事があるのでは無いだろうか?かくいう私の場合も、NZに惹かれるようになった数々のキッカケの中でもとりわけ強烈だったのが、このミルフォード・トラックだったことは間違いない。10年以上憧れ続けてようやくそこに足を踏み入れた時、「これはまさしく『世界一美しい散歩道』だ」という陳腐な感想しか持てないほど感動したものだった。

ミルフォード・トラック:イメージ2

『トレッキングレポート No.3063』でKeiji MORITA氏がナウシカ世代について触れていらっしゃる。私も相当熱心な宮崎映画ファンで、特に『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』の2本はビデオが擦り切れるほど観まくった。NZに来てみて非常に驚いたことがある。宮崎映画に登場する印象的なシーンが、そこら中に散見されるのである。私は映画の裏話や宮崎監督ご自身については詳しくないので、氏がNZファンかどうかは存じ上げないし、根拠もない。しかし『未来少年コナン』のヒロイン・ラナに懐いているアジサシのティキはNZでポピュラーな種類のwhite fronted ternのようだし、そもそも『ティキ』というのはNZ先住民マオリの幸運の神の名だ。また『ラピュタ』の主人公パズーの家のある丘は、NZ全国どこにでも見られる牧場&農家の風景に他ならない。そして何より驚いたのが、目の前に実際に現れた『腐海』の風景だった。NZ南島西海岸南部は1週間のうち4日は雨が降るといわれ、年間降水量も6,000mmを超える超多雨地帯。その雨が育んで来た太古の原生林全体が『テ・ワヒポウナミ・サウスウェスト・ニュージーランド世界遺産地域』に指定されている。この巨大なブナやシダからなる温帯ジャングルの風景が、まさしく『ナウシカの腐海』そのものなのである。もちろん現実の腐海は、恐ろしい瘴気の代わりに清浄なフィトンチッドの香りに充ち、狂暴な蟲の代わりにひょうきんな飛べない鳥達がうろうろする優しい森である。ミルフォード・トラックを擁するフィヨルドランド国立公園も、まさしくこの地域内に属している。

ミルフォード・トラック:イメージ3

この美しい腐海の森の中の世界一美しい散歩道を歩くには2つの方法がある。『個人ウォーク』と『ガイド・ウォーク』の2つだ。それぞれ事前予約が必要で、定員はそれぞれ1日わずか40名。前者は値段が安い代わりに利用するのは電気もシャワーもなく、トイレ、マットだけついたベッド、水道、ガスだけの、ハットと呼ばれるシンプルな山小屋。衣食住に必要な装備はすべて自力で背負う。ガイドはつかない。ただハット自体は驚くほどよく整備されていて清潔なので、非常に気持ちよく利用できる。後者は10倍近い料金を取られる代わりに、シャワー、寝具どころか食事まで用意してもらえる豪華なロッジを利用し、その名のとおりガイドもつく。歩く際に持ち歩くのは雨具と着替えと弁当(これも用意してもらえる)程度だけでいいので、日帰りハイキング気分で歩けるという気楽なものだ。最終日にはホテルでの祝賀会までセットになっている!行程自体はどちらの方法で歩いてもほぼ同様で、
 1、2日目:森の中のほぼ平坦なコース(極めて緩やかな登り)
 3日目  :コースハイライトのマッキノン・パス峠越え(一気に登り、一気に下る)
 4日目  :森の中のほぼ平坦なコース(極めて緩やかな下り)
といったもの。トラックの整備状態は極上で、特別な技量は必要としない。しかし1日の移動時間が比較的長い事、疲れの出る3日目に1番キツイ峠越えの行程が待ち受けている事を考慮すると、丸っきりのトレッキング未体験者にとっては少々辛いかもしれないし、重い荷物を背負って『個人ウォーク』に挑戦される方はある程度のトレーニング経験があった方がいいだろう。ちなみに私が参加したのは『個人ウォーク』の方だ。

ミルフォード・トラック:イメージ4

しかしこの太古の腐海の森は、万難を排して歩く価値があることは保証しよう。前述の通りここは豪雨地帯なのだが、これほど雨の気持ちよさを満喫できるトラックも珍しいかもしれない。私が歩いた時も1、2日目が雨模様だった。見上げてもテッペンが確認出来ない古い森の木々は、表面がコケにビッシリと覆われて種類の判別さえも難しい。もちろん地面もコケの絨毯。そのコケが恵みの雨を含み、独特の甘い香りを森中に立ち上らせる。巨大なシダの複雑な形の葉先には雨粒が丸く光る。トラックは氷河が削り落とした切り立ったU字谷の谷底の川に沿っている。両側の切り立った崖を見上げれば、この雨で誕生したばかりの無数の小さな滝が、まるで稲妻のようにほとばしっている。陽の光りとともに、雨もまた天の恵みである事をつくづく実感する。雨具のフードにあたる雨音に耳を傾けつつ太古の森を歩いていると、いつしか瞑想状態で足を運んでいた。

ミルフォード・トラック:イメージ5

うって変わって3日目はピーカンの快晴。森林限界上に出る3日目のマッキノン・パスの峠越えだけは、雨天だと辛いものがあるからラッキーだった。雨の森も大好きだが、開けた眺望もやはり素晴らしい。たっぷりと森の中の単調な道程を堪能した後だから余計に強烈だ。眺望を満喫したら長い長い下り。膝が笑いそうになるのをこらえ、捻挫に注意しながらやっとのことで下り終えると、今度は世界有数の落差を持つというサザーランド滝が待ちうける。驚いた事にこの落差 500mの大瀑布は深い滝壷を持たないため、滝の裏に回って滝に打たれる事が出来る。しっかりした雨具と滑り難い靴で足元を固め、是非とも挑戦してみて欲しい。これほど強烈な体験は、他ではちょっと味わえないだろうから。

ミルフォード・トラック:イメージ6

やはり好天に恵まれた4日目は、1、2日目と同様の腐海の道。しかし美しい川、湖や滝が次々に現れ、『水の美しさ』を堪能できるのがこの日の醍醐味。個人的にはマッキノン・パスからの眺望よりもこの日の森と水辺の景観の対比の美しさの方に心を奪われてしまった。やはりこれは私がカヤッカーだからだろうか?呆れるほどの景観に、口をポカンと開けて歩くうちに、残念ながらトラックの終着点、ミルフォード・サウンドに到着する。このトラック最終地点からミルフォード・サウンド村までは船に乗る事になる。短い海上遊覧でフィヨルドの美しさを再度噛み締めつつ、50km以上歩いてきた来し方を振り返る。この瞬間、誰もが再度ここ訪れる事を誓うというが、私もやはり例外ではなかった。さて、次はいつ歩こうかな。

-DATA-

場所:
・フィヨルドランド国立公園
- NZ南島西海岸南部にある国内最大の国立公園。その名のとおり氷河に浸蝕されて出来る独特のフィヨルド地形と、多雨による濃密な原生林が特徴。
・ミルフォード・トラック
- 上記国立公園内。南島最大の湖テ・アナウ湖からミルフォード・サウンドに至る全長50kmあまりの世界的に有名なトレッキングコース。
予約:
・個人ウォーク
Great Walks Bookings Desk
Fiordland National Park Visitor Centre
Lakefront Drive
PO Box 29, Te Anau, New Zealand
phone:+64-3-249 8514
fax:+64-3-249 8515
email:greatwalksbooking@doc.govt.nz
・ガイドウォーク
Milford Track Guided Walk New Zealand
PO Box 185, Te Anau, New Zealand
phone:+64-3-249 7411
fax:+64-3-249 7590
free:0800 659 255(NZ国内からのみ)
email:mtinfo@milfordtrack.co.nz
website:http://www.new-zealand.com/MilfordTrack/
交通:
両ツアーとも最寄の町テ・アナウからトラック入り口までは公共のバス、ボートを利用する必要があり、トレッキング終了後にテ・アナウに戻って来る際もやはり公共のボート、バスを乗り継ぐ必要がある。ガイド・ツアーの場合は全て含まれるので特に予約の必要はないが、個人ウォークの場合は要予約。上記のブッキングデスクでツアー申し込み時に同時に予約可能。
料金:
・個人ウォーク - テ・アナウからの往復交通費を含んでNZ$200弱。
・ガイドウォーク - 時期により変動があるが、一番高い繁忙期の場合、NZ$1,500前後(交通費、祝賀パーティ費用なども含む)
駐車場:
テ・アナウにあり(無料)
トイレ:
ハット、ロッジにはもちろんある。トラック上にも所々には配されている。
詳細情報:
・レポーターRyuの個人サイト『Aotearoa Mail』内にリンク集を含む詳細な解説ページがある。
http://www.onjix.com/ryu/
→『Travels & Trips』→『Milford Track』
・トラック内を歩いている時は、個人ウォークの場合はハット管理人(DOCオフィサー)から、ガイドウォークの場合はガイドから、夜のうちに翌日の天候や路面状況などの詳細情報が説明される。

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