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マウント・アーサー

Dec.21, 1998 カルストと黄金の草原

マウント・アーサー:イメージ1

以前お届けした『トレッキングレポート No.9002』で、ニュージーランド(以下NZ)と日本のトレッキングの最大の違いとして『海岸線トラック』の存在をあげ、その最も有名な例としてエイベル・タズマン・コースト・トラックをご紹介した。だが海岸線トラックを抜きにして、内陸部のトラックを比較した場合にも、もう1つ際立って大きな違いがある。それは『日本のトレッキング・コースは概ねピークを目指すピークハント・トラックであるのに対し、NZの有名なトランピング・コースは概ねピークを巻いてしまう』という点だ。『トレッキングレポート No.9001』でご紹介したミルフォード・トラックなどの場合も、「いいピークがあるのに巻いてしまう。フラストレーションが溜まった。あのピークの頂上に立ちたかった。」という日本人の登山愛好家の感想はしばしば耳にした。根本的に『トレッキング(トランピング)』に対する考え方が違うことが伺える好例である。実をいえば、私はピークハントには興味の無いタイプである。日本にいる頃から、森林限界の下の森の中をゴソゴソと徘徊し、林の中の気持ちのいい場所を見つけてはこっそりと野宿をするというスタイルを楽しんでいた。だから特にピークにこだわらず、気持ち良く歩けることを主眼にしているNZのトランピングスタイルは、私の好みにはピッタリなのだ。

マウント・アーサー:イメージ2

さて、今回ご紹介するマウント・アーサーは、NZのトラックとしても私のアウトドア・スタイルとしても例外の、ピークハント・トランピングである。さて、そのマウント・アーサー標高1,795mは、我がホーム・フィールドのエイベル・タズマン国立公園のすぐ西に隣接しているカフランギ国立公園内にある。エイベル・タズマンは国内最小国立公園だが、カフランギの方は45万ヘクタールを誇る広大な国立公園。アーサー山脈はその東の端に位置しており、そのエリアにはマウント・アーサー・テーブルランドと呼ばれる広大な大地を縫う素晴らしいトランピング・コースがある。今回歩いたのはそのテーブルランドではなく、マウント・アーサーの日帰りピークハントだ。

マウント・アーサー:イメージ3

NZ は緯度が高いため、夏場は日照時間がべらぼうに長い。ただでも長い上にサマータイムを導入するため、ここネルソン地方の場合は日が暮れて本格的に暗くなるのは9時半過ぎになったりする。その上今回のトラックの場合、駐車場からピークまでの標高差はたかだか500m。というわけでスケジュールも余裕タップリ。朝7時に出発して車で1時間半。8時半になってようやく登山開始だ。最初の1時間はNZ原生種のブナ、シルバー・ビーチの森の中を縫う歩き易い穏やかなルート。私の大好きな「森の中の徘徊」だ。ことに私はブナ林が好きだ。日本のブナとNZのブナでは趣きは全く違うのだが、やはりどこかホッとさせられる雰囲気は共通だ。日本ではお目にかかれない珍しいコケやキノコをまとったブナを見上げつつ、のんびりと森を楽しむ。1時間後、山小屋マウント・アーサー・ハットに到着。定員12名の小さな小屋だ。この小屋のすぐ上が森林限界線、森林徘徊派のテリトリー外に出ることになる。小屋で少々腹ごしらえをしてから、いよいよ森林限界線上へ。眺望が一気に開け、テーブルランドと呼ばれる丘陵地帯の優しいうねりが目に飛び込んできた。そして私を驚かせたのが、その色彩だった。

マウント・アーサー:イメージ4

NZ はご存知南極大陸上のオゾンホールの影響をモロに受けるため、紫外線が激烈だ。サニー・ネルソンの愛称を持つこの地域の場合は特にそれが顕著で、ここの真冬の紫外線量は日本の真夏に匹敵するほどだ。ではその影響はいかなるものか?まず空の青さが尋常ではない。濃紺といって差し支えない素晴らしい色になる。もちろん川、海、湖なども同様に目を奪われるような色を見せてくれる。そしてもう1つの特徴が草の色。湿度が低く乾燥するのと相俟って、草が夏枯れするのである。草原が目にもまぶしい緑になるのは日本の夏。こちらの夏の草原や牧場は、金色に染まるのだ。初夏のマウント・アーサー森林限界線上も、そろそろ黄金に色づき始めていた。カルスト特有の岩が金色の草からニョキニョキとそこここに顔を見せている。当時の私はまだNZに来てから数ヶ月だった。緑滴る草原を予想していたので、この色彩には驚いてしまった。NZの自然は日本とよく似ているといわれるだけに、こうした違いが一層際立つのだ。

マウント・アーサー:イメージ5

黄金の草に覆われた稜線を、冷たい風に吹かれつつ登る。トラックの傾斜がきつくなり始める頃から、やがて草もまばらになり、辺りの岩も薄く鋭利にひび割れた物騒な地形へと変わる。頂上が近い。しかし9合目を越える頃からガスが出始める。出発より3時間半、正午に登頂。しかし辺りは完全に乳白色。晴れていれば東の太平洋、西のタズマン海はおろか、北には北島まで望めるというのだが、実際にはすぐ隣にそびえるの双子山ザ・ツインズさえも見えない有様。我々夫婦を誘ってくれたロブは3度目のマウント・アーサーだというが、いまだ晴れた頂上に立った事はないという。3度目でもダメなら初挑戦の我々がダメでも仕方ない。昼食をゆっくりとってしばらく晴れるのを待ってみたが、逆に下山道がガスに巻かれると厄介なので諦めて下山。

マウント・アーサー:イメージ6

皮肉なものだ。下山開始後30分、何気なく頂上を振りかえると、完全に晴れ渡っていた。周りの山にも全く雲はない。あれならきっと北島も見える事だろう。悔しかったが妻にはもう一度登頂する余力がなかった。次回の宿題だ。

マウント・アーサー:イメージ7

家に帰りついたのが午後6時。日の長いNZの夏の午後6時は、日本の夏の午後3時ごろという感覚。洗濯して干してから風呂に入り、食事をして乾いた洗濯物を取り込んでホッと一息つく頃に、ようやく日暮れとなった。この辺りもアウトドア超大国の底力の大きな要因の1つといえるのかもしれない。平日のアフターファイブにちょっと山歩き、なんて事が可能なのだから。さて、北島を眺めるという宿題を片付けるために、そろそろもう一度マウント・アーサーに出かけようか。テーブルランドのトラックの素晴らしい滝にも逢いたいし。

-DATA-

場所:
・カフランギ国立公園 - ニュージーランド南島北端付近、タズマン海から内陸部にかけて広大な敷地を持つ、バラエティー豊かな国立公園
・マウント・アーサー - 上記国立公園の東の端付近に位置する標高1,795mの山。付近一体はテーブルランドと呼ばれる丘陵地帯で、素晴らしいトランピング・エリアとなっている。
交通:
○ネルソン - マウント・アーサー間
・自家用車で90分(公共交通機関なし)
駐車場:
登山口のフローラ・シェルター脇に無料駐車場あり。
トイレ:
フローラ・シェルター及びマウント・アーサー・ハットにあり。

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