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知床羅臼岳

Aug.01, 1998 熊出没注意!

知床羅臼岳:イメージ1

かつて知床・羅臼岳から硫黄山までの縦走にトライしたことある。その時は2日目から強風を伴った雨のため途中の二ツ池で逃げ帰ってきた。その下山もピシッピシッと飛ばされた岩粒の攻撃から逃げるように、押し返そうとする風の息継ぎの間を縫って必死だった。しかしガレ地に咲くイワギキョウの濃い紫や羅臼平で挟まれるように見た満月と夕日のシンクロは忘れがたい。知床シーカヤックのプリイベントに再び知床縦走を試みた。

知床羅臼岳:イメージ2

「車は滅多に通りませんから止めた方がいいですよ。」女満別空港観光案内所で言われたが、それも構わず広域農道・美斜線(びしゃせん美幌~斜里)を歩き出した。農道の両脇は畑が連なり、黄色に実った大麦の収穫に忙しくコンバインやトラックがエンジンを唸らせていた。日射しはきついが、時おり吹く風が心地良い。一度通り過ぎた黒のツーリングワゴンが戻って来てクラクションを鳴らした。ザックを荷室に押し込むと後部座席に乗り込んだ。斜里のホームセンター「坂本ホーマー」で降ろしてもらいガスボンベを買う。いつも思うのだが、飛行機に持ち込み禁止なのだから空港の売店で買えるようにして欲しい。スーパーで食料を買い、再びヒッチで宇登呂に向かう。根室標津との交差点にあるレストラン「藤苑」の前で手を挙げるとすぐに車が止まった。宇登呂からは「岩尾別ユース」の車をヒッチして岩尾別へ。そこから林道に入り「木下小屋」へ向かう。行く手に知床連山を見上げながらブラブラと歩く。羅臼、三峰、サシルイ、オッカバケ、硫黄、知床岳と昔覚えた名前を歌のように唱えていると、道に濡れた足跡が点々とついている。近づいてよく見ると肉球に爪。ヒグマだ。ルンルン気分も一気に吹き飛んでしまった。「森の熊さん」を大きな声で歌って歩くが、木陰の暗がりに入るとテンションも下がってしまう。やっと通りがかった車をつかまえて木下小屋へ連れて行ってもらった。

知床羅臼岳:イメージ3

今年の知床は異常にヒグマが多い。それは旅行者があたり構わずキャンプをし、食べ残しをきちんと処理しないことが原因のようだ。餌まで投げてやる奴らもいるという。キャンプは一晩中音を出しておこうと短波ラジオを借りてきた。ヒグマ除けに蚊取り線香の煙が良いというので用意した。好都合にも煙草も嫌いらしい。バカバカ吸ってやろうか。怖くて眠れないかも知れないので、気を紛らわすためにウクレレを弾こう。最後は戦わなければならない。その時のためにピッケルとマキリも持ってきた。

知床羅臼岳:イメージ4

午前5時40分。不安を胸に出発。先週、今回の縦走の練習を兼ねて尾瀬に行ったときに腰を痛めてしまった。またそんなことの無いように、持ってきた2本のストックを突いて慎重に歩く。30分も登ると尾根に出た。オホーツクから吹き上げる風が気持ちよい。空は高曇りで、知床の山々がシルエットで見える。50分のコースを70分もかかって「弥三吉水」に着いた。冷たい湧き水で喉を潤し、札幌の親子連れにパイナップルをもらって食べるとすっかり回復した。ここからはその名の通り「極楽平」のなだらかな尾根が続く。トドマツなどの高木は姿を消し、低く横に伸びたダケカンバの下をくぐるように進む。「銀冷水」に着いた。水を一口だけ飲んですぐに出発。空が暗くなってきた。しばらく行くと視界が開け大沢の谷が目に飛び込んできた。7年前はここでバテバテになってしまった。その時見たイワギキョウの冷たいほどの美しさは今も忘れられない。振り返るとV字型に切り取られたオホーツク。この大沢はいつもなら雪渓になっているところだが、今年は雪不足でしっかりと夏道が出ていて歩きやすい。道の両端には黄色や白い花、そして紫のイワギキョウも咲き乱れている。 

知床羅臼岳:イメージ5

割とあっけなく羅臼岳と三峰の鞍部「羅臼平」に着いた。まだ10時前だ。キャンプ地の「二ツ池」までここから2時間、余裕があるので羅臼岳のピークハントに行く。荷物をデポしてしばらく行くと岩棚から水が滴り落ちていた。そこで数人が水を汲んでいる。三峰の水場は枯れているという。ここが縦走中最後の湧き水となる「岩清水」だ。大きな岩がいくつも重なり合って盛り上がり山頂部を作り上げている。前回登ったときはその岩を飛び移りながら行ったが、数年前に皇太子が登ったせいか非常に道が整備されていて歩きやすい。(木の下小屋では誰も整備はしていないと言う)山頂は濃いガスの中に包まれて何も見えない。7年前はパンフレットのように晴れ上がり、摩周湖や斜里岳が手に取るように見えた。岬側は遠く知床岳まで縦走路を巡る山々が見渡せた。しばらくすると雨まで降ってきた。早々に退散する。

羅臼平はガスが川のように流れ暗く寒い。これから先はハイマツに覆われたトンネルを行くことになるので気が重い。次の水場が枯れているというので水は5リットル持った。近くの人に明日の天気を訊くと、今日と同じだという。はるばるやって来たのに天気が悪いのじゃ景色も楽しめず面白くない。前回も猛烈な嵐で二ツ池で止めている。今年こそと思っていたのに。しばらく考えていると大粒の雨が打ちつけてきた。天気は悪くなる一方だ。これで気持ちの糸がぷつんと切れた。また来れば良いのである。一気に登って来た道を駈け下った。

-DATA-

場所:
北海道斜里郡斜里町宇登呂字岩尾別
交通:
網走女満別空港、JR釧網線斜里駅より宇登呂行きバス。
宇登呂より「知床五湖」「知床大橋」行きバス「岩尾別」下車。
これより登山口まで徒歩、およそ1時間。
駐車場:
岩尾別ホテル「地の涯」前にあり。
トイレ:
木の下小屋にあり。
温泉:
宇登呂に多数。木の下小屋、ホテル地の涯も入浴可。
水場:
木の下小屋、弥三吉水、銀冷水より上部については現地確認を。
なお二ツ池は煮沸して使用すること。
ヒグマ:
最近出没多数でとくに硫黄山付近が危険らしい。
貼付の写真はルシャ・テッパンベツ川河口付近で撮影。
現地確認の上、熊撃退スプレーやスズなどの準備を。
フードボックス:
ヒグマ避けに食料を保管する。三峰幕営地にあり。
買出し:
本文にもあるように飛行機利用の場合ガスボンベが持ち込み不可で苦労させられる。
キャンプ用ボンベは斜里の「坂本ホーマー」か網走のスポーツ店で買える。
食料は宇登呂「Aコープ」で間に合う。
木の下小屋:
情報を得るのに便利。一泊1200円、温泉あり。

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