ツーリングレポート

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天草・3つの道

Apr.21, 2003 潮風とキリシタン文化香る道

九州・天草の道の名前が好きだ。天草パールライン。ロザリオライン。サンセットライン。紺碧の八代海に浮かぶ幾多の島々からなる美しい情景が目に浮かんでくる。キリシタンの悲しい歴史が風景に情緒を添える。美しい名前をもつこの道は、九州のツーリングライダーなら思い返すように何度となく走るひとつながりのシーサイドルートなのだ。これまでにさまざまな季節に天草を訪ねたが、その中では最も初夏がいい。新緑の木々を海風が揺らす。九州・熊本の初夏の陽射しはすでに夏の序章だ。かすむ島影は旅情をかきたてるだろう。 

天草・3つの道:イメージ1

九州本土から天草へ向かうルートは、熊本市の南、西に突き出た宇土半島から入るのが一般的。九州西岸の主要路・国道3号線から宇土市内で国道57号線にスイッチ。遠浅の海を眺めながらこの天草街道を西に走り、半島の西端に達するとそこから天草ツーリング最初のハイライトが訪れる。大小の島々を渡り天草上島へと至る天草パールラインだ。全長約5km。このルートはかつて有料だった道路で、いまなお料金を支払って惜しくない景色を披露してくれる。数えきれない緑の島々。漁船の行き交う海。天草五橋はそんな自然美に近代的建築美を溶け込ませていた。5つの橋はトラス式、アーチ橋とそれぞれに個性的な姿をして飽きさせない。交通量は多いが、流れのいい道だ。途切れずに続く車の列、その1台もこの潮風の心地よさはバイクほどにはわかるまいと得意な気分になる。ルート沿いの「天草四郎メモリアルホール」で天草キリシタンの歴史を予習しておくのもいいだろう。ただ、パールライン一帯は観光地然として、食事処・みやげ屋には事欠かないが「天草の島々」という語感よりはるかに俗化しているのがうらめしい。

天草・3つの道:イメージ2

パールラインはやがて天草上島にたどりついた。島とはいえ総面積225平方キロだから、パールラインで見た小島などとは比較にならないが、観光地でないため穏やかな風情は明らかに島のものだ。見どころはなくとも淡々と走る海沿いの道こそ、ライダーには心地いい。島の北岸に沿うのが国道324号線、南岸が国道 266号線。ロザリオラインと呼ばれるのは北岸のほうだ。国道324号線は上島と架橋された天草下島まで続いていて、うち上島部分は約30km。よく整備されて走りやすい。傍らにはいつも青海原。信号も少なく、空腹であってもアクセルを閉じることが惜しまれるほど走り続けていたい道だ。休憩には「道の駅 有明」。シーサイドに立つ白亜の建物が陽射しにまぶしい。売店には、手足を広げて干されたタコや、アメ色のイカジョッキなど海産物があふれている。ここから天草下島まではもう遠くないが、このまま天草上島を走り去るのもさびしいので、道の駅の約2km先、浜地区から県道282号線で島の内陸に入ってすぐの正覚寺に立ち寄った。ここにはかつてキリシタン布教の拠点「南蛮寺」があったという。いまも樹齢400年の南蛮樹(ナギの木)と十字が刻まれたキリシタン墓石が残る。弾圧の歴史に触れてふたたび国道にバイクを戻らせると、ロザリオラインの名がひとしお感慨深くなった。

天草・3つの道:イメージ3

さて、いよいよ天草最後の島、天草下島だ。上島から瀬戸大橋を渡ると天草最大の本渡市。ここは明らかに街であって、これまでの島の風情が一変する。本渡には見どころも多いので観光情報は他サイトに譲るとしても殉教公園には立ち寄りたい。市立天草切支丹館(入館料300円)には重要文化財「天草四郎陣中旗」やマリア観音、踏み絵などキリシタン遺物が展示され、天草の歴史への思いはますます深まる。公園は本渡市街を見下ろす位置にあって、林立する白い十字架が悲しく美しく青空に映えていた。さて、市内観光もいいが散策のあとはオートバイで走り出したくなるのがライダーの性だ。ロザリオライン(国道324号線)は下島に入っても続いている。国道に導かれて本渡市から北へ。市街を抜ければあとは穏やかな海沿いの道だ。砂浜の少ない岩礁の海岸。小さな漁港。干しダコが民家の軒先に揺れていた。本渡に北接する五和町にも鬼ノ城キリシタン墓碑公園という史跡公園があって、まぁとにかく南蛮文化、キリシタン文化の遺構には枚挙にいとまがない。下島でも国道324号線はよく整備されていて2車線でも道路幅も十分、ゆるやかにワインディングを繰り返して飽きない道。本渡市から約 30km、苓北町の富岡海中公園付近でロザリオラインは終わる。だが、天草ツーリングはここからが佳境なのだ。

天草・3つの道:イメージ4

天草下島の外周を走る道は国道324号線から国道389号線にスイッチ。島の西岸になる。ここからの道の名はサンセットラインだ。本渡市のある東岸を島の表とするならこちらは裏側になるため、道路状況もロザリオラインに比べると落ちるが、そのぶん島の昔の風情が残っているといってもいい。そんな道でもバイクでは苦にならないし、むしろ好きだという人も多いだろう。3ケタ国道ならではと呼べる箇所も多いが、海の色がそれを忘れさせる。時間帯があえばサンセットラインの名を実感できるにちがいない。やがて天草町で国道は海岸線を離れる。丘の中腹に壮麗な姿で現れるのは大江天主堂だ。ロマネスク様式の白亜の聖堂に息をのむ。同時に、キリシタン文化は過去のものでなく、いまも天草にカトリックの信仰が息づいていることを知らされた。国道はさらに島を南下、大江を過ぎて東に向きを変える。そのうちに羊角湾に面して小さな漁村が見えてくる。崎津地区。漁船がひしめく入り江に浮かぶようにたたずむのは、昭和9年献堂の崎津天主堂だ。日本のどこにでも見られる漁師町の風景に、ゴシック様式の教会が溶け込んでいるのが天草という土地なのだろう。私はこの風景が好きで、この素朴な漁村の風景こそ天草ツーリング一番のハイライトに推したい。ここへ来たらぜひ入り江を回り集落の対岸から眺めることをおすすめする。静かな羊角湾の向こうに、山を背負った漁港と家々。その中でひときわ高く尖塔をかかげる教会の姿。知らずにここへ来てもアクセルをゆるめる光景だろう。エンジンを切れば静けさに気付き、歴史と自然美に彩られた天草の風景が心にしみていくに違いない。

-DATA-

場所:
熊本県天草郡大矢野町~河浦町
交通:
熊本市~R501~宇土市~R57~三角町~R266~松島町~R324~本渡市~R324~苓北町~R389~河浦町
駐車場:
各観光施設・名所ごとに確保されている
トイレ:
道の駅 有明など

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