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九州熊本・天草諸島  ~ ジュラシックアイランドを漕ぐ!(前編)

Aug. 1997 アイランド・シーカヤッキング

天草諸島は熊本県西部に位置し、大小150余りの島々から成る。ここは西に東シナ海へと続く天草灘、東から南へかけては八代海(不知火海)、北東は島原湾(有明海)、北西は千々和湾(橘湾)という4つの海に囲まれている。

今回の旅は三角半島から天草上島の間の穏やかな内海に多くの島々が浮かぶ、天草松島と呼ばれる場所の一角である御所浦町が中心となる。

御所浦町は天草上島の南に位置し、3つの有人島を含む18の島々からなり、鯛やブリ、フグなどの養殖事業を主な産業とする海の町である。その名はその昔、この地方土着の民族であった熊襲(クマソ)を中央政府が征伐に向かう折、景行天皇天皇巡幸の折に宿泊した地となったことに依頼するという。
 これらの島々は出入りに富んだ海岸線をもち、対馬暖流による温暖な気候により、照葉樹林や亜熱帯樹林が繁茂している。そして近年アンモナイトや貝の化石が多く発見されているこれらの島々は、まさに日本版ジュラシックパークと呼んでもいいかもしれない。
 そして、シーカヤッキングを楽しむのであれば、外海のウネリが入ってくることも少なく、風や潮の状況で多様なコースを組むことができ、また真水の湧く井戸やトイレなどがある黒島のキャンプ場をベースに四季を通じてツーリングができるのだ。

 この旅は熊本にあるシーカヤック・ビルダー「ウォーターフィールド」の水野さんと盟友の瀧川さんに先導をお願いした。
 まず我々は天草上島の倉岳町に向かった。ここは鯛釣りの好スポットとして有名なところである。国道沿いに「日本一の大えびす」という看板があるから、それにしたがって進んでいけばいい。
 出艇はこの大えびす像のある手前の港のスロープ。えびす像と並んで退役した巡視船が陸に上げられているがこのわきからの出艇もできそうだ。海に浮かんだ後、この大えびす像とやらに一瞥をくれ、南東にある御所浦島へ向かう。悪名高き「ふるさと創生資金」とやらで建てられたこの像は、まったく愚にもつかないが、帰港の際の目印くらいにはなってくれるだろうか。(別になくてもまったく問題はない)
 下げ潮に乗り順調に南下する。八代海はうねりが入ってくることは少ないが、干満の差が激しいので潮流を考えてコースをとっていく必要がある。また鯛の好漁場であるため、そこかしこに釣り舟が出ているのにも注意を払う必要がある。
 島と島の間では波がざわめく。潮流によってできる瀬である。今回使用したのは地元熊本で製作されているウォーターフィールドの2人艇「ホエールウォッチャー」と7.5mの全長を持つ3人艇、「グレート・ジャーニー」である。どちらも安定性はすこぶるよく、快調に漕ぎ進んでいく。
 約一時間後、御所浦島と挟島の間の中浦瀬戸の入り口に到着。まずは御所浦島へ。ここは最近(取材当時)化石がよく出るというので、地元のラジオでPRまでしているところである。出艇から約1時間半で御所浦島に上陸である。漁港のスロープはどこも海草や苔などが付着して滑りやすいので注意を要する。その上カキやフジツボがあったりすると、裂傷になる。フジツボの生命力は侮れないという話なので、くれぐれも慌てないように。

 化石については資料館があるというので、島の港で漁師に聞いて教えてもらう。町のほぼ中心部、御所浦白亜紀資料館という何かの道場のように入り口に看板がかけられたそれは、地域の開発総合センターの一部を使用していた。受付の女性にパンフレットをもらい、化石の出る場所や、立ち入りの可否を聞いてみるがどうも要領を得ない。聞いてみると果たして専門家は別にいるとのことで、今日は多忙で応対できないとのことだ。渡されたパンフレットによると、眉島の一部と御所浦島の南端に保護区が設定してあり、化石発掘を行いたいという場合は、必ず御所浦町全島博物館構想推進協議会事務局へ届けて欲しいとある。(御所浦町のHPを見たところ、花岡山化石採集場では許可を得れば誰でも化石発掘が出来るとあった)

 頭をいっぱいにした後は、腹をいっぱいにしなくてはならない。町の南にある食堂に入った。寿司から丼ものに仕出し弁当までなんでもやるという店だ。海産物はうまいと思うが、寿司や刺身はさすがに高そうである。そこで天丼を注文する。待つこと暫く。
出てきた天丼は浅草の大黒屋もビックリの超特大大盛り状態。エビと白身の魚と野菜。
ころもはさっくりと揚がっている。さらに鯛のお味噌汁つき。これで700円は安い!(取材時)ビールとのどから声が出かかっていたが、間違いなく沈没すると思い、一人一本で我慢した。強靭な精神力を持った今回のメンバーなのであった。

(データは全て取材時のもの:初出「カヌーライフ」1997秋15号)

- 西沢あつし プロフィール -
フリーライター・フォトグラファー。主に日本各地のシーカヤッキングにまつわるいろいろなシーンを撮影・レポートして各誌に寄稿してきた。写真は梅田正明氏に師事。昭和41年生まれ、東京都在住。

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