logo

コメント & トラックバック

Ryuの特薦

カテゴリー
リンク

検索



October 22, 2004

浮きすぎ、沈みすぎ。

■ 予報
[地上気象]
  晴れ。午後シーブリーズ。最高気温20度、最低気温8度。

[海洋気象]
  南西15ノット、午後変風10ノットになり、夕方までシーブリーズ。海況はおだやか。

[潮汐表]
  04:51am 3.2m
  11:00am 1.4m
  17:28pm 3.3m

■ 典型的な夏日。午前中はベタ凪、昼前からシーブリーズの兆候が出て午後はセーリング。言う事なし。 b&i 7

■ ところが、恐れていたことが始まってしまった。

  約一ヶ月前の9月21日のエントリーで、ウィルソンズとの経営統合に対する懸念を書いたが、実は僕にとって一番イヤだったのが、食事がウィルソンズのスタイルに変えられてしまうこと。
  なんせね、ATKもORACもビーチでちゃんと肉を焼いて、ATKなんてピタパンまで現場でトーストしてサーヴしてたというのに、ウィルソンズはサンドイッチとお菓子、フルーツの入った紙袋をお客様にハイって配るだけ。今まであの食事を何度バカにしたことか。

  が! 今週からあのランチに変わってしまっていたのだ、僕がAくんをトレーニングしている間に!!
  あぁぁぁぁ……(泣)
  今日の食べ残し、過去7シーズンで一番量が多かった。

  いつかはエイベル・タズマン・アドヴェンチャーズに行って、評判のグルメランチとやらを試してやろうと思っていた皆さん、もう遅いっす。
  ってのは半分冗談で、来週のスタッフミーティングでとことんウィルソンズ・スタイルのランチをこき下ろして、一昨年までのATKのランチに戻すように強行に主張してやろうと思ってるので、うまく行けばまた美味しいグルメランチをご提供できるようになると思うのですが、さてどうなりますことやら?

■ もう一つの恐れていたことも起こった。

  南半球で最初のシーカヤックアウトフィッターの一つである、ORACことオーシャン・リヴァーの名前が、今週から完全に消滅してしまった。
  今シーズンはORACにとっては20周年記念という節目の年だったというのに。

  いや、実をいえば昨年度に我々現場の人間も、「ATKとORAC二つのブランドを並存させるのは、かえってマーケティング上良くない」と主張し、自分らの話し合いで「エイベル・タズマン・カヤックスの名前を残し、オーシャン・リヴァーというシーカヤック・アウトフィッターらしくない名前を消さざるを得ない」と結論付けていたので、文句をいう筋合いはないといえばないのだ。僕自身も同じ意見を述べていた。
  でも我々自身の判断ではなく、他社の判断でORACの名前を消されてしまうのは、理屈を超えた部分でなんとなく納得がいかない……。

  ともあれ、南半球のシーカヤック・ビジネスのパイオニアであり、我がエイベル・タズマン・カヤックスの良きライヴァルであったオーシャン・リヴァーに、乾杯。

■ ともあれ、新年度のプロダクトがようやく固まったので、なるべく早く日本語版サイトを完成させてアップしますです(当初の予定と相当変わったので、かなり作業しなおさなくてはならない……)。

  -------------------------------
  
■ 極々私的なメモ。
  昨日夕方くらいから、愛娘は回復のきざし。朝からずっとグッタリしていたが、突然起きて機嫌よく遊び始めた。とはいっても、熱は38度近くあるんだけど。子供ってタフ。
  今日は下痢をしたらしいし、まだ熱も下がりきっていないんだけど、もうすっかり元気。まったくタフ。

  -------------------------------

■ もう今さら言うまでもないのかもしれないが、僕はニュージーランドで初めてパドルを握ったキウィ・パドラーだ。日本の水に初めてパドルを突っ込んだのは、それから2年8ヶ月後のことだった。

  パドルを初めて握ってから先日やっと6年が経過し、日本上陸からも3年半近くが経とうとしている。
  ただ、未だに日本のカヤッカーの言っていることで、理解できない話がいくつかあるのだ。

■ 「浮きすぎる艇」「沈みすぎる艇」というのもそれ。

  日本のシーカヤッカーが艇を評するとき、
  「この艇は浮きすぎだね」
  「うん、もう3cm沈んでてくれると良いんだけどね」
などという言葉が使われる。

  これが僕にとって長年謎で、機会があるごとにいろんな日本人シーカヤッカーをつかまえてたずねてみた。昨年、日本を『プロガイド・ワークショップ(PGW)』や『ツアーリーダー・セミナー(TLS)』で行脚しているときにも、いろんな方に話をうかがった。

■ 話をまとめてみると、どうやらこういうことらしい。

  カヤック・デザイナーは、艇をデザインするときに「理想的な喫水線」を想定している。その線に水面が来るとき、その艇はスピード、安定性、回転性などの持ち味をイカンなく発揮する。
  だから、その艇に乗ったとき、その理想線よりも実際の喫水線が下になるときは「浮きすぎ」、逆に理想線が水面下に没する場合は「沈みすぎ」という。

■ ふん、なるほど、この話自体は、南半球のバカ野人にも、よぉ~く理解できるぞ。
  ただねぇ、それは「浮きすぎる」とか「沈みすぎる」とかっていうんじゃなくて、要するに積載量(体重+荷物重量)との関係の話じゃないの? 想定した理想喫水線が、100kgの積載だった場合は、体重70kgの人が空荷で乗ったら「浮きすぎる」だろうし、90kgの人が20kgの荷物を積んで乗ったらそりゃ「沈みすぎる」だろう。そんなのは、小学生でも分かる話だ。

  つまり、
  「この艇は僕にとっては大きすぎて、浮きすぎてしまう」
とか、
  「この艇、二泊三日の荷物積むと、ちょっと沈みすぎるなぁ(空荷で想定積載量に届くほど体重がある)」
なんていう言い方ならば分かるのである。
  前者は「いくら満載しても想定積載量に届かないほど体重が軽い」ということだし、後者は逆。

  ところが僕がこの言葉の使い方に疑問を持ったのは、体格、体重、技術レヴェルが全然違う人同士が、
  「この艇、沈みすぎるね」
  「うん、そうだね」
などと、自動車をアンダーステアだのオーヴァーステアだの加速が速いの遅いのと評するのと同じように、その艇特有の一般的性格として評する用語として使っていたからだ。

  そもそもデカイ艇ってロングツーリングを想定してるから、理想喫水線も相当な重量を積んだときを想定してあるだろうし、小さい艇はその逆のはず。
  空荷で乗って「浮く」の「浮かない」のっていう評価することが、そもそも間違いなんじゃないだろうかと思うんだけど……。

  一度、僕が機嫌よく乗っている艇を試乗した日本人シーカヤッカーの方が、
  「この艇、ちょいと浮きすぎですね」
とおっしゃった。とりあえず僕は、
  「そうっすか? 僕にはちょうどいいですけどね(^^;」
と答えておいたけど、傍から見ているといかにもシュールな会話だったことだろう。
  なんせ彼は僕よりもきっと30kgは重いはずで、つまり僕が満載で乗ってるときより彼が空荷で乗ってるときの方が「沈んでいる」計算になるはずだから。

  掲示板などでも
  「○○っていう艇を買おうと思ってるんですけど、どうでしょう? どなたか教えてください by 野人」
  「初めまして、野人さん。 あの艇昔持ってましたけど、あれは浮きすぎますよ!」
なんていう書き込みを目にしたりする。
  あんた、「野人さん」のこと知らないのに、なんで「浮きすぎる」って分かるの???

  う~ん、やっぱり日本人シーカヤッカーのいう「浮きすぎ」「沈みすぎ」っていうのは、どうやら僕には理解できない特殊用語なんだ、きっと。

■ このことを言うと、上のように「浮きすぎ、沈みすぎ」の定義を教えてくださった方たちも、
  「う~ん……」
とうなってしまって、結局僕の疑問は氷解しないままだった。

  やっぱりガイジンには理解できない「Wabi, Sabi」の世界の言葉なんだ、きっと。

■ ちなみにこっちのパドラーの場合は、こういう言い方をする。

  「私は小さいから、エコ・ビジーグは大きすぎてつらい。取り回しも大変だし、コクピットもガバガバ」
  「僕も君と同じくらいの体格で、確かにコクピットはゆるいけど、スリーデイ・ツアーに使うとちょうど良いよ。空荷だと水の上で跳ねちゃって扱いづらくて仕方ないけど、満載すると気持ち良く曲がってくれて取り回しも問題なし」
  「オレの場合は、あの艇はワンデイの方が良いんだよ。スリーデイに使うと重すぎてキツイんだ」
  「オマエ、もうちょっとやせろよ」

  つまり、その艇が「自分にとって大きすぎる」か「自分にとっては小さすぎる」かという言い方をする。もちろん日本でもこういう言い方は何度も耳にした。でも、ニュージーランドで、その艇が「浮きすぎる」の「沈みすぎる」のっていう評価は、寡聞にして聞いたことがない。

  あと、同じ日本でも、ホワイトウォーター艇の場合は、ニュージーランドと同じように技術レヴェルと体重によって適正な艇が決まってくるというのが常識らしく、あまり「?」と思うような言葉は聞いたことがない。

  やっぱりジャパン・シーカヤック界の「浮きすぎ、沈みすぎ」は、ヤマト古来の「コトノハ」の伝統が生み出すマジカルな言葉なんだ、きっと。ラヴリーだ。

■ 実は二年ほど前だったか、『パドルの向くまま、気の向くまま』にカヤックのインプレッションのページを作ろうと準備していたことがあった。
  アマチュアの立場からのインプレッションはWeb上でもたくさん散見されるが、プロガイドの立場から見た名艇、ダメ艇っていう評価はお目にかかったことがなかったので、そういうのも面白いだろうと思ったのだ。

  すでに20種類近くのカヤックのインプレを書き終えていたのだが、結局お蔵入りすることに決めた。

■ 理由は、結局カヤックに対する印象って言うのは、上記のような積載重量や好みだけではなく、体格や技術にも大きく左右されるからだ。
  僕自身、20艇目のインプレを書き終えてから、最初のインプレを読み直してみると、もうすでに「ありゃ? 何か印象が違うぞ!?」という風になってしまっているのだ。20本のインプレを書いている間にも、僕の技術が向上して、艇に対する印象が変わってきていたのである。

  例えばニュージーランドの産んだ名艇パフィン。僕、昔はあの艇大嫌いだった。理由は後継モデルのペンギンに比べると曲がらないから。
  でも、今乗ると曲がらないという印象はまったく受けず、むしろ「素直で良い艇だな」と思う。

  だから、インプレをアップするのは止めてしまった。アップしたって、どうせ1年後には「あぁ、こんなこと書いてるぅ……」と後悔してしまうのが目に見えてるから。

  あともう一つ大きな理由として、「スピード、安定性、旋回性」といった基本性能さえも、車やバイクと違って一般的には語れないというのもある。
  例えばカヤックの一般的な特性として、積載量が増えて沈めば沈むほど、安定性が比例的に増すのがある。
  ところが、「グラグラでひっくり返りやすい」として有名な艇も、小柄な女性が乗るとピタリと安定し、逆に「初心者向きの一次安定性重視」といわれる艇の方で不安感を訴える、なんてこともあるのだ。つまり「ティッピーな艇」だとか「一次安定性より二次安定性を重視した艇」などのような評価さえも、一般論としては語れず、「乗り手次第」ということになってしまう場合も少なくない。

  マイナーな理由としては、僕の好みが一般的な日本人シーカヤッカーの好みと大きくかけはなれているというのもあるにはある(笑)
  日本で人気のあるカヤックには昨年たくさん乗ったが、どれも「うん、悪くないね」という印象ばかり。
  逆に日本では不人気のネッキーの艇はルクシャシリーズにしてもエラホシリーズにしても、僕のフィーリングには大変ピッタリ来る。

  なんせ日本とニュージーランドでは一般的なカヤックのラインナップが全然違うので、好みがまったく異なってきたって不思議ではない。
  だからこそ、そういう「変な好み」のインプレを書くのも面白いかと思って始めようとした企画なんだけど、そのうちに、誰の参考にもならないかもしれないインプレをせっせと書き続けるのが空しくなって来てしまったのである(笑)

  さらにもう一つのマイナーな理由として、ジャパンの特殊用語「浮きすぎ、沈みすぎ」を使いこなせないから、というのも無視できないが(^^;

■ ギアのインプレッションには、どうしてもこういうことがついて回る。例えば、自動車に比べるとバイク(モーターサイクル)ははるかに体重の影響を受けやすいので、ライダーの体格によって性格が変わる度合いが自動車よりもずっと大きい。

  ザック類だってそう。体格によっては名バッグになったり、クソバッグになったり。

  でも、そういう「使う人次第」の度合いが一番激しいのが、カヤックっていうギアのような気がしている。
  だから、「僕はこの艇が好み」ということは口にしても、「こいつの直進性はウンヌン、二次安定性がウンヌン」などのセリフは、なるべく口にしないようになってきている。口にするときも、あくまでも自分にとっての個人的な印象として述べるにとどめ、一般論化しないように気をつけている。

■ ちなみに、未だに
  「カヤック買いたいんですけど、どんなのが良いですか?」
という相談をときどき受けるのだが、僕の答えはいつも同じ。

  「他人に相談しなきゃいけない段階では、まだ自艇を持つのは時期尚早ですよ。
  遊び方によって適した艇は違うし、同じ人にとっても技術が上がると求める艇もどんどん変わってきます。ある日を境に好みの艇のタイプが180度変わることだって珍しくない。
  だからアウトフィッターやクラブを利用して色んな艇に乗り、色んな遊び方、色んなフィールドを体験し、同時に腕もしっかり鍛えてみてください。そのうち、『これだ!』という艇が見つかりますから、そのとき買うといいですよ。」

  そういうわけで、僕自身はいまだに自分のシーカヤックは一艇も持っていない。「自分のガイディング・スタイル」はキチンと確立し、それにあった艇もちゃんと分かっている反面、遊びでシーカヤックを漕ぐということがないので、「自分のシーカヤッキング・スタイル」というのが未完成で、いったいどんな艇を買ったらいいのかいまだによく分かっていないからだ。
  例えば仕事では絶対にポリ艇を選ぶが(軽くて滑りの良い艇に乗れば、もう一期か二期ガイド寿命を延ばせるのかもしれないけど、それでもやっぱり僕は仕事用にはポリ艇にこだわりたい)、パーソナルユースでポリ艇を買うのがいいのか、それともFRPやケヴラーの艇が良いのかまったく判断がつかない。
  そもそも、仕事を引退した後、趣味でシーカヤッキングを楽しむのかどうかさえも、今の僕にはよくわからない。

  だから、自分のシーカヤックを買うのは、まだ当分先のことになりそうだし、ひょっとすると一生買わないのかもしれない。
  いや、やっぱりタンデム艇は買うだろうな、きっと。でも、シングルはどうだろ?

■追記(2005年1月24日)。
 野外道具屋ブログ「シーカヤックの選び方」に類似記事。

  -------------------------------

■ 今日のエントリーを読んで、「このブログ、浮きすぎだ」と思った方は人気ランキングを、「う~ん、このブログ、最近沈んでるぞ」と思った方は人気ランキングにご投票ください。

投稿者 Ryu : October 22, 2004 05:11 PM
トラックバック
このエントリーへのトラックバックURL:
http://www.gofield.com/openair/mt/mt-tb.cgi/909
コメント

カヤックの浮きすぎ沈みすぎの話って、サーファーの視点からサーフボードで考えたらRyuさんの言ってる事はもっともですね。カヤックしかしない人達はモーターボートやクルーザー(レースの時は重さは大問題だけど)に乗る感覚なんですかねぇ?っと思ってしまいます。なんか自分の使う道具に対してあまりにも第三者的な発言が浮きすぎ沈みすぎ?っていうか使いこなせてませんの代わりの合言葉みたいです。俺はRyuさんと同様に違和感を大いに感じますね。

Posted by: ケロ : October 22, 2004 07:37 PM

あ、本文中で

> 「使う人次第」の度合いが一番激しいのが、
> カヤックっていうギア

って書きましたけど、サーフボードなんかは軽いから体重やスキルによって個々の感じ方がもっともっと激しく違ってくるでしょうね。

余談ながら僕はパドルサーフィンしかしたことないのですけど、ボードサーフィンもやってみたくて仕方ないんですよ。
カヤックと違って道具が少なく、軽くて済んで、いつもうらやましく横目で眺めてます。


Posted by: Ryu : October 23, 2004 08:24 AM
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?