September 20, 2004
だれが殺すのか?
■ 予報
地上気象 - 晴れ。風おだやか。最高気温14度、最低気温5度。
海洋気象 - 南西15ノット。海況おだやか。
■ 昨夜は本当に寒かった。冬に逆戻りした感じ。
本日は海星。空気はちょっと冷たい感じだが、日差しが強いので室内は暑いくらいに暖まっている。
上空の風は、南西5ノット程度。
これから数日良い天気が続きそう。
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■ 『だれが「本」を殺すのか〈上〉』
『だれが「本」を殺すのか〈下〉』
(ともに佐野 眞一(著) 新潮文庫)
大宅賞作家が現在崩壊に瀕しているといわれる「本業界」にメスを入れた話題作、通称「本コロ」を読了した。
■ 僕は本が大好きだ。もしアウトドアを奪われてもなんとか生きていけると思う。音楽なしでもなんとか我慢できるはずだ。でも、本が目の前から消えてしまったら、どうやって余生を過ごしていいのか皆目分からない。
とはいってもエンターテイメント系で時間をつぶすのが主なので、口が裂けても「読書家」などとはいえないんだけど。
むしろ僕は「単なる活字中毒」だ。読むものがなければ、そこらへんの広告でも説明書でもなんでもいいから「紙に印刷された字」を読まないと夜寝付けないという類の人間。中島らも大兄とよく似たタイプらしい。
だから逆にいえば、わりと何でも読んでしまう乱読タイプだということもできる。
■ そんな僕にとって、今年読んだ中で間違いなく最高にエキサイティングな一冊だったのが、この本(僕が読んだのは単行本だったので、ホントに「一冊」)。
上でリンクを張ったアマゾンのカスタマーレビューを読むと、さすがにこの手のノンフィクションの読者たちはエンターテイメント系よりも圧倒的に辛口で大変面白いのだが、僕自身がスコアをつけるとすれば、やっぱり★★★★★だ。
■ 著者自身がいう通り、出版界を川の上流から下流までを、完全に串刺しにして網羅しようという試みは未曾有のことだろう。目次を抜粋すると
- 第一章……書店
- 第二章……流通
- 第三章……版元
- 第四章……地方出版
- 第五章……編集者
- 第六章……図書館
- 第七章……書評
- 第八章……電子出版
となっている(プロローグ、エピローグおよび各章の副題は省略)。これをみると、本に関わる人間で省かれているのは、もはや源流部たる「著者」と、海に比すべき「読者」だけだということが分かる。
この膨大なインタヴューを読むと、「編集の問題」「流通の問題」「再販制の問題」などを別個に論じている書物では見えなかったことが浮き彫りになってくる。これだけでも五つ星に十分に値すると思う。
(残念ながら出版が2001年なので、すでに現状とあわない内容も出てきているようだが、それは仕方のないこと)
確かに著者本人の論理や感想には、いささか「?」という部分が無きにしも非ずなのだが、僕にはそれがこの本の価値を損なうほどだとは思えない。むしろ僕は、それは読者の側がどう読み取っていくかという、「こちら側の問題」として受け止めておきたい。
また著者の抱える矛盾を、「独善」と斬って棄てる意見もあるようだが、この業界の抱える複雑な問題を、何の矛盾もない明快な論理で解決できる人間などいるはずもなく、それをこの著者に求める行為は、この本の内容をまったく理解できていないことに等しいとも思う。この問題をすっきりとした論理で一刀両断にしろというのはムチャだ。著者が独善と矛盾をはらみつつ、こうして「本の世界」という名の川を旅したからこそ、これだけの見事な「本の世界の紀行」が出来上がったのだと思いたい。
■ 4月21日「再販制度をネットが崩すか?」で書いたとおり、我が家では本そのものの話だけじゃなく、再販制度や返本を始めとする出版流通業界の話題も食卓にのぼる。
白状すれば、実は僕自身も90年代半ば、まだネット書店などなかったころに、欲しい本が手に入らない状況に業を煮やして、ちょうど今のインターネット書店のようなデータベース検索&流通システムを友人と語り合っていたりもしたのだ。あのまま間違って実際に手を出していたら、今頃はこの本の中に失敗例として1行くらいの扱いで登場していたかもしれない(^^;
また、まだまだ紙媒体からの仕事は非常に少ないとはいえ、最近は自分自身も物書きの世界に片足首を突っ込んだような形になりつつあるので、ますますこの業界に関しては無関心ではいられなくなってきている。
そんなわけで、この本は僕にとっては「こういうのが読みたかった!」というシロモノなのだが、実際読んでみると、あぁこんなことも知らなかったのかというような目からウロコの事実が続々と出てくる。
例えば図書館に関するこういうデータだけ見ても、恥ずかしながら僕はまったく知らなかった。
- 出版産業マーケット全体に占める公共図書館の割合は、米国で二割、スウェーデンでは五割なのに、日本はわずか3パーセント
- 日本の市町村3,300のうち、図書館がある自治体は50%、複数個設置しているところは15%に過ぎない
- 自治体ベースで、図書館も書店もない市町村に住んでいる人口は合計で2,300万人にものぼる
- 日本の図書関数は1,950、人口が日本より少ない英国は24,869(ともに拠点数)
(情報源はすべて同書)
確かに、ニュージーランドに来てみて人口の割りにメチャクチャ図書館が充実しているのは感じていた。僕たちが移民して来た頃、ここタズマン郡はわずか人口3万人だったが、なんと四つも図書館がある。
同書を読めば、数が多ければいいというものでもなく、図書館のあり方そのものにも目を向けなければいけないのは明白なのだが、しかしながら2,300万人が「本の砂漠」に暮らしているという状況にはいささか驚いた。
■ まぁ図書館に関するトリビア的データは瑣末といえば瑣末。
やはりこの本の「主役」は、各業界の主要人物への興味深いインタビュー。今の出版不況は「何も考えていない大多数の業界人」が引き起こしてきたのだろうが、「考えている一部の業界人」の意見はものすごくエキサイティングだ。アマゾンのカスタマーレビュー(上巻の方)の中に
「この本には読み方がある。
まずデータの部分とインタビューの部分だけを読む。
(中略)
佐野が自分の感想を述べているところは読む必要がない。」
というものがあったが、実際にこのインタビュー部分だけを拾い読みするだけでも構わないと思う。
この本を一度通読すれば、アウトドア関連の出版で、なぜまともな雑誌が廃刊になり、低俗なものだけが生き残ってしまったのか、あるいは、そもそもなぜ書店のアウトドア関係コーナーには、釣り関係の本以外はほとんど見当たらず、情報は雑誌に頼らざるを得ないのかといった疑問に対する答えも、おぼろげながら見えてくるような気がする。
■ こうして、本の将来を憂い、独自の方法論であがこうとしている地方出版社やユニークな書店のインタヴューを読んでいると、ついつい考えてしまうのがやっぱり我がアウトドア業界のこと。アウトドア関連出版のことではなく、アウトドア業界そのものね。例の職業病で、別の業界の話を読んでいても、どうしてもすぐにアウトドア業界に比してしまうのだ。
本の業界では、出版された本が、それを読みたいと思っている読者に適切に届いていない。
アウトドア・ツーリズムの世界も同じなのだ。例えば、シーカヤックを経験してみたいと思っている人は、失礼な言い方をすれば「世の中には掃いて棄てるほどいる」のである。このブログの読者諸氏の中にも、シーカヤック未体験で一度試してみたいと思っていらっしゃる方は、相当数いらっしゃると思う(あえて「手を挙げてください」とはいわないけど)。
そして、そういう人のためにアウトフィッターという商売がある。
でも本と同様に、「消費者に届いていない」んだよね。状況は同じなのだ。
ただ大きな違いもある。ダメだダメだといわれている本の業界には、インタヴューを読んでいるだけでワクワクさせられるようなすごいヴィジョンを持っている人がいて、実際に一定の成果を上げている例も少なくない。
さて、もっともっと規模が小さく苦戦を強いられているアウトドア業界、特にアウトドア・ツーリズム業界を考えてみたとき、果たしてこの本の業界のような人材はいるのだろうか?
正直、この本を読んでいて天邪鬼な店主、ユニークな編集者、行動力にあふれる発行人などが登場するたびに、「つくづくうらやましい」と思ってしまった。
■ アウトドア業界を殺しているのは、さて、いったい誰なんだろう???
僕自身が殺す方に回っていなければ良いのだけど、よく考えてみると、僕のように「ガイド」と「物書き」という、いささか性格の異なる仕事を二つ抱えてしまうと、その「立場の矛盾」がひいてはアウトドア業界を殺す方向に作用しないとも限らない。今一度よく考え直してみる必要があるようだ。
こういう機会をくれたこの本には、心より感謝する。もう一回読み直して、よぉ~く反省しよう(笑)
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あひるです。wについて教えてくれてありがとうございました。おかげで、もうばっちり使えますw
まさに、今、私は「本コロ」の1冊目を読み始めたところです。だから、RYUさんの解説あえてあまり詳しく読まずにとっておきます。ではまた。
え、読み始めたとこですか!
偶然ですねぇ。
ニュージーランド在住日本人の間で流行ってるんですかね、ひょっとして?w
と、めずらしく僕も w なんて使ったりして(^^;
僕の上記の文は、「本コロ」の解説とか書評じゃないんですけどね、でもネタばれの部分もないわけじゃないですから、読後にでもチラッと見てやってくだされば光栄です。
Posted by: Ryu : September 21, 2004 8:56 PM
