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September 05, 2004

サンタフェと、シーカヤック。

■ 予報
地上気象 - にわか雨。南西風。最高気温13度、最低気温2度。
海洋気象 - 南西15ノット(セパレーションポイントより北は西25ノット)、午後に南10ノットに変わる。北部海域は荒いが次第に落ち着く。西部海域、午前中の雨中視界良好、午後晴れる。

■ 朝のうちはにわか雨が降ったりパァ~ッと晴れたりの繰り返し。いかにも天候不順な春。
  でも昼前からは、昨日同様にピッカピカの快晴になった。でも、昨日と違って上空のくもの動きはかなり速い。予報通り15ノットといったところか。

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■ 昨日の天候ログ↓

■ 予報
地上気象 - 晴れ。南西風。最高気温12度、最低気温0度。
海洋気象 - 変風10ノット。セパレーションポイントより北は西15ノット、夕方に25ノットに。北部海域は次第に荒くなる。

■ 予報通り、ピカピカの暖かい春の一日。友人が遊びに来てくれたので、午後はずっと庭で桜を眺めつつ過ごした。

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■ 最近、「複雑系の科学」の梁山泊、サンタフェ研究所(以下、SFI)に興味を持っている。実はガイド引退後、カオス研究に転向しようと目論んでいるのだ。ジャズ→法律→アウトドアガイドと「カオスな遍歴」を続けてきた僕には、なかなかふさわしい進路だろう。

  んなわけないってば。そうじゃなくて、『「複雑系」とは何か』(吉永良正)を読んでいてSFIのユニークな運営システムに大いに興味をおぼえたのだ。

  96年出版のこの本には「常勤研究者はいない」と書かれているのに対し、昨日見つけた『NPO「サンタフェ研究所」の活動戦略』を見ると、事情が変わったのか「数名の常勤研究者がいる」となっているが、その他の点は大きな違いはないようだ。
  ともかくこのシステムには、いたく感動したのだ。ご存じない方は、このサイトに簡潔にまとめてあるので、ご一読を。

■ シーカヤックガイド風情が、科学研究所に何で感動するのか? うん、ごもっともな疑問。
  それにお答えする前に、一つエピソードを紹介しよう。例によって「言わなきゃいいのに」ってな話なんだけど、憎まれっ子はあいかわらず一言多いのである。

■ この夏、友人がカヤックを漕いだ。知人から誘われ、日本では大変よく知られたアウトフィッターのツアーに参加したのだそうだ。

  彼女はそれ以前に二度のカヤック経験があった。二度とも観光地の遊覧カヤッキングで、二度目が三年前のこと。その有名アウトフィッターは今回が初めてだ。

  温暖な観光地のアウトフィッターはスプレースカートを使わなかったり、シットオントップを使うことが多い。またスプレースカートを使うにもかかわらず沈脱講習を省く悪質業者は、9月2日に書いたようにニュージーランドにもある。

  だから「カヤック経験あり」といっても、沈脱(ひっくり返ったカヤックから脱出すること)の方法を習ってない人も少なくない。また習っていても、たった一、二回の経験で、しかも二年以上ブランクがある人だったら、忘れてる方が普通。

  つまり僕の友人のようなケースは「未経験者」として扱うのが鉄則
  8月24日に書いたように、僕はお客様が「ライセンス保持」を自称しても、決して鵜呑みにはしない。必ず自分の目で相手の腕前を確かめてから対応を決める。こんなの当たり前。

  ところが、その有名アウトフィッターは、
「はい、あなたは経験者だね」
と、講習なしで彼女にシングル艇をあてがったという。
  もちろんプロの場合、「ちゃんと教えた」という反論は認められない。お客様が「教わらなかった」と主張するようないい加減な講習なんて、やったことにならないからだ。

  で、皆さんの予想通り、彼女は沈したのだそうだ。
  幸いなことに漕いでいるうちに記憶がよみがえり、漕ぎ方も沈脱の仕方も「なんとなく」思い出していたので事なきを得たらしい。

  これまた皆さんの予想通り、今回は友人がらみだったのでなかなか立腹が収まらず、よっぽどクレームを入れてやろうかと思ったほどだが、皆さんのご期待を裏切り、必死に我慢して思いとどまった。

  でも、必要最低限の安全講習を一つでもすっ飛ばすような業者は、その他がいかにキチンとしていても、その一点だけで「失格」のそしりを受けても仕方ない。自動車運転免許の試験で言えば、助手席の試験官にブレーキを踏まれて即失格というのと同じことだ。

  武士の情けで実名は出さない。今後の成長に期待しているので、ぜひとも精進していただきたい>当該アウトフィッター

■ ここで話はさらにちょっと脱線するが、最近日本にもアウトドア専門学校が出来はじめていて、プロを養成コースも用意されているようだ。
  そういう学校がわんさとあるニュージーランドのプロの立場から見てると、実は学校で二年間勉強するよりも、現場で半年間仕事を叩き込まれる方がはるかに効率が良い。
  正直言って、学校を出てから入ってくるヤツとそうでないヤツの間には、プロ入門一年後には明瞭な差がみられないのだ。

  むしろプロになってからどれだけ精進したかによって、大きな差が出てくる。この差はとてつもなく大きい。
  プロになりました、ハイめでたしめでたし、なんてヤツは全然伸びなくて、僕に「似非プロ」とののしられることになるし、入ってきたときは何にも知らなかったヤツでも、必死に勉強を続けるヤツは短期間でメキメキと力をつけて、すごい「プロフェッショナル」になっていく(ゆえに「発展途上のプロ」と「似非プロ」は、似てまったく非なるもの)。
  だからレイジーな五年選手が、熱心な一年坊主になめられるなんて、ごく当たり前の話。
  日本のプロ野球界や相撲界で、必ずしも学生時代のスター選手がプロとして大成するとは限らないのと事情は似ている。

■ 上記のエピソードは、僕のところに山ほど舞い込んでくる多くの「タレこみ」の一つにすぎず、登場人物が僕の友人と有名インストラクターだったというディテールを無視すれば、非常によくある話にすぎない。

  ただ、こういう輩が「一流プロ」としてまかり通る日本のアウトドア・ツーリズム業界の現状を浮き彫りにしているという意味では、無視できない逸話だ。

  こうしてみると、本当に教育システムや研究システムを必要としているのは、プロ未満の学生よりも、むしろ現場のプロの側であるということがよく分かる。

  あ、念のため申しあげておくが、日本で「一流」と呼ばれている人たちすべてがこういう「似非」であるというわけではない。噂にたがわぬスゴイ人はいるし無名の人の中にも、一流の仕事をするホンモノのプロもいる。
  つまり、「一流」と一口に言っても、実際には玉石混交状態であると言いたいだけなので、お間違えのないように。
  ちなみに、本物の一流は、常に勉強・研究を欠かさない。だからこそ「一流」なのである。

■ さて、これでなんとなく話が見えてきたのでは? いつもの「似非プロ批判」がどのようにSFIに結びつくのか?

  あれ、SFIの話なんかもう忘れてたってって?(笑) ちゃんとついてきてくださいよ、SFIってのは「複雑系の科学の梁山泊、サンタフェ研究所」、小説『ロストワールド』同名映画の中で、マルコム博士が講演をやってる場所のことね。

  さてさて、いよいよ本題(あいかわらず枕が長いこと)。
  僕が最近よく考えてるのは、日本の商業シーカヤック界にこのSFIのシステムをそっくりそのまま導入できたら、ものすごく面白いことになるだろうな、というアイディア。

  つまり、スポンサーを募って「シーカヤック・ガイディング&インストラクション研究所」(仮名。以下、「研究所」と略)を設立してしまう。
  そこには全国からガイドやインストラクターが集まり、ガイディング技術やインストラクション技術、インタープリテーション、あるいは危機管理技術やアウトドア・ファーストエイド、マーケティング方法、職場安全、オペレーションのノウハウなど、諸々の技術研究や情報交換をする。
  あるいは、カヤックビルダーや道具メーカーにとっては、日本ではまだ発展途上のプロ用の道具や商業ツアー用のカヤックの研究開発なんてのも良いテーマになるだろう。ガイドやインストラクターが毎日使い倒してフィードバックしてくれれば、短期間で世界最高水準の道具がどんどん出来てくるのではないか?
  おぉぉ、これはスゴイ。

  また、こういう研究施設を一つ固定してしまえば、他の業界との連携や情報交換もスムーズになるはず。川のパドリング業界やダイヴィング業界にも、積極的に安全対策を研究している人たちがいる。そういう人たちにも門戸を開いてしまう。
  消防署に働きかけてアウトドア・ファーストエイド・コースを開発するお手伝いをしたり、海上保安庁と合同のレスキュー訓練なんてのも楽しそうだ。
  もちろん、海外との交流の窓口にもなる。ACA、BCU、SKOANZやKASKなどの海外組織との連絡も楽になるだろう。
  いやぁ、いろいろ夢が広がって、これは楽しいなぁ。

  もちろんこの手の研究はプロだけが額をつき合わせているだけでは机上の空論化するので、実際にお客様を呼ばねばならない。マーケティングの研究のためにも大切な課題だ。
  だから、きちんとお金を取ってガイディングしたり、スクールを開催したりしながら、技術研究をする。業界を圧迫しないように、ツアー及びスクール価格はもちろん業界最高値レヴェルに設定する。お客様側から見れば、お金を払って実験台になるというわけだが、その分日本中はおろか、世界中のプロのノウハウが凝縮された非常にレヴェルの高いツアーやスクールを体験でき、試作品のプロユースの道具に触れる機会もあるかもしれないというメリットは大きいはずだ。
  う~ん、ワクワクするぞ。

■ その他のシステムは、SFIを踏襲すると非常に具合がよさそうだ。
  研究者に対して研究所からは給料は出ない。お客様からいただくお金は、運営費、研究費あるいは特別講師招聘費などに使われる。
  その代わり、駆け出し研究者といえども受講料を払う必要もない。滞在費も食費以外は無料が理想だな。食費補助もあれば、もっとうれしいけど。

  マンネリ化や特定のカラーが定着することを防ぐシステムも、大いに真似しなくてはならないだろう。そうでないと、既存のいくつかの試みのように、一部の派閥だけの集まりになってしまって、機能しなくなってしまう。

  またSFIが非営利なのと同様、研究所そのものがアウトフィッター化することは絶対に避け(そのために、やはり常勤研究者は排するべきだろう)、あくまでも「研究施設」としての位置づけを崩してはならない。そこで得た技術や情報はそれぞれの研究者、すなわちガイド・インストラクターが自分のアウトフィッターに持ち帰り、現地でのカヤッキング・マーケット拡大に利用する。
  まぁ、これに関しては、特定のカラーを定着させず、ニュートラルな立場をきちんと維持できれば、自然と達成される程度の課題だろうが。

■ このSFIシステムをパクるというアイディアは、僕がここ三年ほど取り組んできたプロガイド・ワークショップ(PGW)の致命的な欠点、歯がゆい弱点を解決する方法を考えていた結果生まれたものだ。
  いや、別にそのために本を読んでいたわけではないのだが、頭の片隅にはいつもそれが引っかかっているものだから、SFIの運営方針を知ったときは、
「あ、ちくしょー、やられた! こうすりゃいいのか!」
となったのだった。

  PGWの欠点、弱点はいろいろあるのだが、あえて恥をさらせば、


  • 期間があまりに短すぎるし、不定期である
  • よって、どうしても僕が「講師」、他の方は「受講者」という形になって、情報が一方通行になるきらいがあり、「ワークショップ」という名に反してインタラクティヴな研究に発展しづらい
  • また、どうしても「Ryuのカラー」が支配的になり、それ以外のスタイルの実例を見せるのが難しい
  • さらに、レヴェルがまちまちの受講者が一同に会することにも、いろいろとムリが生じる

といったところが主だった点だろうか。
  これらをなんとかクリアしたいと思いつつ回を重ねているのだが、いやはや頭の痛いこと。
  たとえば、実は受講者専用のメーリングリストやウェブサイト(ともに非公開)を用意してあって、ネット上で「ワークショップ」が継続するシステムの整備を目論んだのだが、やはり顔をあわせずにネット上だけで研究を継続するのは、「アドヴェンチャー・ツーリズム」の性格上かなり難しいし、ウェブサイトの更新も僕一人ではどうしても痒いところに手が届かない。

■ そもそも、ニュージーランドの業界に根を持つ僕が、いつまでもこうした「日本のワークショップ」の世話役を続けること自体に大きなムリがあり、これこそが根本的な問題かもしれないと思っている。こういうものは、やはり「日本のプロの、日本のプロによる、日本のプロのためのワークショップ」であるべきだ。
  その上で、僕なんかはそうした場に「海外との技術交流」という形で外部から関わるのが、本来あるべき姿だろうと思う。

  ただし、最初にその流れを作るには、誰かが「エイヤッ!」とムリをしなくてはならないので、今は僕も微力ながら一肌脱がせていただいているわけなんだけど、実際に流れをつけるにはどのようにすれば良いのかは、ホントに厄介な課題。少なくとも今の形のPGWではまったく役不足なのは明白だ。

■ ところが、これが常設研究所となって、個々の研究者が自分の都合のつくときに研究所を訪れ、興味のあるテーマごとに自由にワークショップを作れるようになれば、一気に解決してしまうでないですか! あらスッキリ。なぁ~んだ。
  じゃぁどうやって研究所設立にこぎつけるのか?っていう具体的なツッコミは、とりあえず今はご勘弁を(^^;

  ってなわけで、複雑系科学は完全な門外漢ながらも、SFIには並々ならぬ興味を抱いていて、機会があればぜひとも見学してみたいと願っている今日この頃。
  さらに余談ながら、サンタフェはアドビ建築の本場だから、我が家を建てる参考にも出来るので一石二鳥!

  あぁ、憧れのサンタフェ……。(そういえば、宮沢りえは元気なのか?)

■ もし日本のシーカヤック界にこんな研究所が実現すれば、僕ももうちょっと引退を延ばして、年限いっぱいは毎年一ヶ月か二ヶ月ずつ、オフシーズンに研究のために通うんだけどなぁ。
  そうなればPGWだって、その研究所の中のワークショップの一つ(あるいは分化するか?)に姿をかえ、より機能的に存続することも可能なんだろうけどな。
  で、ちょっと気分を変えたいときは自分のワークショップを抜け出して、隣のJSCAワークショップを覗きに行ったり、グリーンランドカヤック研究会の講演を聴講しに行ったりするわけだ。いやぁ、これ良いなぁ。

  いや、研究員じゃなくてもいいな。事務員として雇ってもらって、受付&電話番のオッチャンにおさまるってのも楽しいかもしれない。もちろん、研究職じゃないので永年勤務が可能で給料も出るということで(笑)

■ ってのが、最近の楽しい妄想なのである。7月9日の投稿のような、キナ臭い話題ばかりだと滅入るからねぇ。

  え? 最先端の科学の本やウェブサイトを、そんな目で眺めてるって変?(笑) うん、変だよね。困った職業病だよ、まったく。


投稿者 Ryu : September 5, 2004 02:59 PM
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Title: 助成プログラム、今年度募集開始。
Excerpt: ■【予報】 [地上気象] (モトゥエカ) 晴れ。風おだやか。(高)15度、(低)5度。 [海洋気象] (エイベル)  変風10ノット、夕方セパレーションポイントより北で西20ノットに変わる。北...
From: Ryu's Logbook ニュージーランド在住シーカヤックガイドのlogbook(=航海日誌)
Date: 2005.06.05
コメント

ふむふむ、、、

Posted by: ごう : September 5, 2004 05:39 PM

SFI公式サイトはこちら(英語)
http://www.santafe.edu/
eduドメインだから完全に非営利の研究機関扱いですね。
サイト内探索してみましたが、確かにダイナミクスを感じます。
昔自分が勉強したかったようなこともやっているみたいで、時間と体力と若さとお金があったらプロジェクトベースで良いからちょっと絡んでみたいなぁ、なんて思ってしまいました。

サンタフェといえば、大人の文化の街、という感じなのですが、おすすめはオペラ。
http://www.santafeopera.org/
屋外オペラハウスです。
それなりに裕福な知人が「心の旅」で数年前に行ったのですが、感動して帰ってきました。
(ちなみに彼女はサンフランシスコオペラのシーズン通しのボックス指定席持ち。いかに目が肥えているか+お金持ちかわかりますね・・・)

Posted by: MM@久しぶりの仕事 : September 6, 2004 09:27 AM

オペラかぁ。
高校の音楽の授業の先生がオペラ狂で、毎回ひたすらヴィデオを見せられてましたけど、あれ以来すっかりご無沙汰っす。
目が肥えてない貧乏ガイドでも楽しいですかね?

Posted by: Ryu : September 6, 2004 10:45 AM
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