ホーム >> 温泉レポート >> 2002年01月のバックナンバー一覧
勝浦温泉
Jan.25, 2002 天然の大洞窟風呂「忘帰洞」
勝浦温泉は日本屈指の勝浦漁港に臨み、熊野詣の参拝前に身を清める湯垢離場(ゆごりば)として発展してきた。現在では熊野那智大社や那智の滝など南紀の観光の基点として白浜温泉と並ぶ人気を誇る温泉。新鮮な海の幸の食膳や複雑な入り江に落ちる夕日の景観など素晴らしい。また、宿の多くは半島の先や中の島に点在しており、送迎船に揺られて宿の玄関に行くという勝浦温泉ならではの風情も味わい深い。

「ホテル浦島」は勝浦湾にせり出す狼煙半島にあり、西日本最大規模を誇る老舗ホテル。忘帰洞や玄武洞など熊野灘の荒波によって浸食された天然洞窟風呂を楽しみたいなら勝浦温泉の中でもここしかない。黒潮香る名湯勝浦温泉「ホテル浦島」を目指して朝靄煙る京都を後にした。
西名阪自動車道、名阪国道、伊勢自動車道、国道42号線と乗継いで約6時間。勝浦町に入った頃には太陽は西に傾き始めていた。勝浦桟橋からはホテル浦島の送迎船が出ている。約10分ほど船に揺られると勝浦湾を渡って向こう岸にあるホテル正面玄関に到着するという段取りだ。ただ余裕があるなら隣の桟橋から出航している「紀の松島湾巡り」の船に乗ってみるのも良いだろう。無数に奇岩が点在する勝浦湾を一周してからホテル浦島玄関につけてくれる(大人1,430 円)。

勝浦湾の入り口には130余りもの小島が点在している。平維盛が入水したとされる山成島、動物に似る形から名付けられたラクダ島、ライオン島。船は滑らかに旋回し、それらの島々を掠めながら、湾を40分かけて一周する。冬の夕暮れの訪れは早い。太陽は西の地平線近くまでに傾き今まで区切りが不明瞭なほど青一色だった空と海の間にも、次第に色濃い境界線ができはじめる。燃えるような西陽は、太平洋の大海原に色鮮やかに映り出され、それを黄金色に輝かせた。

40分後、船は勝浦湾の入り江を一周し終えて、目的地「ホテル浦島」に到着した。太陽は既に半島の端に落ち、夕闇が、薄いピンク色に染まる秋空を静かに飲み込みはじめていた。到着後すぐに夕食を摂った。ホテル浦島の夕食は1階のレストランにてバイキング形式。マグロ、イカ、ハマチ等の刺身、握り寿司、海鮮チラシ寿司、鯨の鬚酢、サラダ、デザート。新鮮な海の幸をふんだんに使った海鮮料理が各コーナーに盛られ、選ぶだけでも満腹になるほど贅を尽くした内容。
夕食後、早速、風呂巡り。ホテル浦島は広大な館内に、内湯12、露天4つもの風呂場を持ち、一泊では廻りきれないほどなので、入りたい湯をあらかじめ定めておくのが良いかもしれない。中でも特に人気が高いのは、やはり大洞窟風呂「忘帰洞」。それは、熊野灘の荒波が長い年月をかけて造り出した洞窟をそのまま風呂場にするという斬新な構想から生まれた勝浦温泉屈指の見所。
忘帰洞に入ると、そそり立つ巨大岩石に間口25m、高さ15m、奥行き50の洞穴が熊野灘に向かって大きく口を開けており、その広さは1,000平方メートルというだけあって広大そのもの。そしてその先には太平洋の大海原が優雅に広がっているのだから、そのアイデアのダイナミックさには圧倒させられる。押し寄せるさざ波の音を耳にしながら、ゆっくりとその温かい湯に浸かっていると、1日の疲れなど遠い海原の彼方に消えてしまった。
「忘帰洞」の名の由来は、太守時代初期に訪れた徳川頼倫公の残した言葉にあるそうだ。巨大な岩窟風呂に入浴した頼倫公は勝浦の地を後にするのを惜しんで、「帰るのを忘れるほど」と述べたという。この自然の雄大さをそのまま描き出したような名湯、紺碧の大海原、磯風の香り、天然洞窟風呂・・・無理はない。

ホテル浦島では忘帰洞の他に主に5箇所の風呂場で湯を楽しむことができる。忘帰洞を小さくしたような玄武洞。7色に湯の色が変化する磯の湯、ごんどの湯。砂浜をイメージしたはまゆうの湯。紺碧の海を一望できる山上館の展望風呂。勝浦温泉の湯は食塩を含む硫化水素泉で、慢性関節リウマチ、神経痛、糖尿病などに効用がある。どの湯に浸かってもそれぞれ独自の個性が光り、海を舞台とする勝浦町の旅情を見事に体現している。
-DATA-
- 場所:
- 和歌山県東牟婁郡(ひがしむろぐん)那智勝浦町
- 交通:
- 車の場合:西名阪自動車道、名阪国道を抜けて関JCTで伊勢自動車道に入り、勢和多気ICから国道42号線に入って勝浦温泉へ。または、阪和自動車道海南ICから湯浅御坊道路御坊ICを経て、国道42号線を新宮方面へ140km。
電車の場合:JR阪和線、紀勢本線で那智勝浦駅下車。駅から車で5分。 - 駐車場:
- ホテル浦島駐車場、勝浦港駐車場など
- 施設:
- ホテル浦島
電話:07355-2-1011
宿泊料:一泊二食付き16,000円より
外来入浴:2,000円
風呂:湯は硫黄泉(疲労回復、リウマチ、神経痛などに効能)
下諏訪温泉と上諏訪温泉
Jan.20, 2002 歴史街道温泉巡り
お諏訪さまの名で親しまれる諏訪神社は、全国に1万余りの分社を数える日本で最も古い神社の1つだ。その総本社があるのが信州信濃の諏訪地域。江戸時代、中山道と甲州街道の温泉宿場町として栄えたことは広く知られているが、その湯は、きっと神社起源の平安の頃から旅人の疲れを癒してきたに違いない。今回は諏訪大社の門前町・下諏訪と、隣接する諏訪市上諏訪温泉を訪ねよう。湖のほとりの小さな町並み、ここには神様さえ惹き付ける名湯が湧く。

諏訪大社は男神・建御名方神(たけみなかたのかみ)を祭る上社と、女神・八坂刀売神(やさかとめのかみ)を祭る下社に分かれる。その下社を抱えるのが下諏訪町だ。春宮と秋宮をつなぐ旧中山道を中心に22箇所の源泉があり、公衆浴場は10件を数える。八坂刀売神が化粧用の湯を綿に浸し「湯玉」にして上社から持ってきたところ、それを置いた場所から温泉が湧いたという逸話は、いかにも女神の御座所らしい。

湯玉起源憚を持つ「綿の湯」は、現在「児湯(こゆ)」と合併して公衆浴場「遊泉ハウス児湯」となっている。従って往時の建物は見ることができないが、秋宮西側の原湯舎跡には湯玉のモニュメントと宿場の様子を描いたレリーフが設置され、綿の湯に寄せる町の人の愛着を思わせる。町内一大きな公衆浴場となった児湯は、休憩室やジムを備えたクアハウス張りの施設。美人になるという噂もあるから、時間さえあれば何度でも通ってみたいところだ。

観光客で賑わう秋宮周辺から児湯を過ぎて更に西へ進むと、旧中山道に下りる細道がある。この道沿いにあるのが鎌倉時代、修行僧が浸かったという「旦過(たんが)の湯」。入るとすぐに番台があり、ビンの牛乳が置かれているのが銭湯ファンにはうれしい。湯口温度は50度前後とかなり熱めだ。同じ旦過源泉を使っている新湯、菅野温泉は住宅地の中ほどにある。

さて、この後はちょっと珍しい温泉を探して諏訪市内に車を走らせてみる。国道20号線から諏訪湖畔公園に抜けると、間欠泉センターの隣に風変わりな施設があるのが分かる。ここは2001年4月に作られたばかりの「足湯」。木製のベンチに腰を下ろして足首まで湯に浸すと、じんと温もりが全身に広がっていく。子供の遊べる「じゃぶじゃぶ池」(4~11月のみ)や足つぼ刺激コースもあり、散策に疲れた時ちょっと立ち寄るのに最適だ。

諏訪湖畔公園から木立に囲まれて見える洋風建築は「千人風呂」のある片倉館。製糸業界の一大コンツェルンであった片倉一族が創立50周年を記念し、従業員の福祉施設として建てたという。1928年…昭和3年にそれを作ったモダンな感覚もすごいが、玉砂利が敷き詰められた大理石の浴槽もなかなか圧巻だ。深さは 1.1m。ちょっと油断すると顔が湯の中に沈んでしまう。

変わり風呂としてダントツなのはJR中央本線上諏訪駅のホームに湧く駅風呂だろう。乗車券か入場券で入れる、ホームから簾1枚で隔てられただけの風呂だ。中央高速自動車道の諏訪湖サービスエリアや上諏訪駅前の諏訪丸光デパート4階にも入浴施設があるので、話の種に挑戦してみたい。歴史ロマンに浸れる旧宿場町とバラエティ豊かな温泉シティ。どちらを選ぶのも旅人の自由。諏訪にはそんな楽しみがある。
-DATA-
遊泉ハウス児湯
- 場所:
- 長野県諏訪郡下諏訪町横町木の下3477
- 交通:
- 中央自動車道岡谷ICより国道20号、142号を通って15分
- 営業時間:
- 入浴:午前5時半から午後10時
休憩:午前10時(プラス60円で5時半から利用可)から午後5時 - 料金:
- 入浴のみ:大人200円 子供100円
入浴休憩:大人560円 子供250円 - 駐車場:
- 綿の湯モニュメント前に10台
- トイレ:
- あり
- 電話:
- 0266-28-0823
旦過の湯
- 場所:
- 長野県諏訪郡下諏訪町湯田町3442
- 営業時間:
- 午前5時半から午後9時半
- 料金:
- 200円
- 駐車場:
- 4台
- トイレ:
- あり
- 電話:
- 0266-26-7520
足湯
- 場所:
- 長野県諏訪市湖岸通2-208-90
- 交通:
- 中央自動車道諏訪ICより7km、またはJR上諏訪駅西口から徒歩12分
- 営業時間:
- 午前9時から午後6時半
- 料金:
- 無料
片倉館千人風呂・ラドン温泉
- 場所:
- 長野県諏訪市湖岸通4-1-9
- 営業時間:
- 午前10時から午後9時(受付午後8時半)
火曜定休(祝日の場合は営業) - 料金:
- 入浴のみ:大人350円、子供250円
入浴休憩:大人600円、子供400円 - 駐車場:
- 100台:1時間200円、半日1100円、1日2200円
- トイレ:
- あり
- 電話:
- 0266-52-0604
上諏訪駅露天風呂
- 場所:
- 長野県諏訪市大手1-21-5
- 営業時間:
- 午前6時から午後6時
- 料金:
- 無料、ただし乗車券または入場券が必要
- 駐車場:
- 駅前に10台、駅から徒歩2分のところに市営駐車場もあり
- トイレ:
- 駅構内にあり
別府明礬温泉
Jan.02, 2002 冬に訪ねる湯の花の里

2002年の幕開けを、西日本は真っ白な吹雪の中で迎えた。この冬1番という寒気が流れ込んだおかげで、初日は雪雲の向こうに見る影もない。厳しい寒さから逃れようと長野を出てきたのに、暖かく元旦を迎えようという当初の目論見はもろくも崩れ去った。それなら。この状況で暖かい正月を満喫するなら温泉である。温泉といえば世界一の湯量を誇る別府に行こう…。
別府市の主立った温泉は、別府八湯と呼ばれる8つの温泉地に分かれている。もともと10湯とか8湯とか呼ばれていたところに、平成8年8月8日、市民団体が宣言を出したものだそうで、北から柴石、亀川、鉄輪(かんなわ)、明礬(みょうばん)、堀田、観海寺、別府、浜脇と呼ぶ。別府8地獄中6つの地獄の集まる鉄輪、下町の風情を残す浜脇、砂湯で有名な亀川など、いずれも特長ある湯場だが、中でも温泉ファンを惹き付けてやまないのが最も高所にある明礬温泉だ。

大分自動車道別府ICを下り、「明礬」の標識を頼りに九州横断道をたどれば、10分足らずで湯の花小屋の点在する明礬地区に入る。湯の花、とは地下の蒸気が粘土の上で自然結晶したもの。地区内には70戸の採取小屋があり、それぞれ民間の企業が管理している。この古くから愛されている上質の入浴剤が、いかにも薬湯らしく乳白色に濁った明礬温泉の元だ。言い伝えによれば鎌倉時代、元寇を戦った兵士たちがこの湯場で体を癒したとも。それだけ成分が濃厚で、肌当たりの滑らかな湯となる。特に冬場は湯量が減るので、濃い温泉を楽しみたい人には狙い目だ。

この地域で一般にも開放されている共同浴場は、鶴寿泉と地蔵泉の2軒。いずれも内湯が男女1つずつの、こぢんまりとした木造の建物だ。国道500号線沿いの坂道が情緒あふれる宿屋街となっており、鶴寿泉はその中の「岡本屋」の奥に、地蔵泉は「ゑびすや旅館」から上がっていったところにある。地元の人たちがタオル片手に通う風呂でもあり、外の人間にとっては肌身で湯の里を感じられる場所。入口でお賽銭を払うのがここの料金代わりとなっている。

鶴寿泉から湯気の立ち上る路地を抜け、再び500号線にぶつかると「明礬湯の里」。湯の花小屋の見学施設として有名で、それを模した家族風呂に入ることができる。別府湾や別府大橋を一望できる露天岩風呂には直下の専用駐車場まで車で行けるが、わらぶき小屋の並ぶ間をゆっくり歩いて上がっていくのもいい。露天の湯は淡い乳青色。硫黄の匂いに包まれて、湯上がりに食べる温泉卵(50円)や温泉プリン(130円)がうれしい。

別のレポートで紹介された「鍋山の湯」をはじめ、全国的に有名な秘湯もここ、明礬地域に多い。鶴見霊園の先にある鶴の湯、小川のほとりに湧くヘビん湯。有名な秘湯というのも変な話だが、口コミで広まり各地から温泉ファンが訪れている、野趣溢れる山中の湯だ。いずれも無料で、当然ながら混浴。訪れる人たちがそれぞれ掃除したり整備し直したりしているということで、とても大切にされている様子が清潔な岩の湯船から漂ってくる。とはいえ通じる道はかなりの悪路が多い。車高の低い車は腹をこすったりすることがあるので注意を。この時期はスタッドレスタイヤかチェーンを装備して訪ねたい。
今回は概要しか紹介できなかったが、それぞれが1つ1つ取り上げたい魅力ある湯。別府市内では昨年から、別府88湯を制覇する「温泉道」というイベントが始まっており、地元で情報を収集しながら、自分なりの温泉道を究めてみるのも面白い。バラエティに富んだ明礬地域では、温泉入門者もベテランも必ず気に入りの1湯を探し出せるだろう。
-DATA-
明礬温泉 湯の里
- 場所:
- 大分県別府市明礬6組
- 交通:
- 大分自動車道別府ICより車で8分
- 営業時間:
- 露天・内湯:午前10時から午後10時(11月~3月は午後9時まで)
家族風呂:午前8時半から午後10時(11月~3月は午後9時まで)
受付はそれぞれ閉場の1時間前まで - 駐車場:
- 露天風呂下80台、小型バス
- トイレ:
- あり
- 料金:
- 露天・内湯 大人600円、小人300円
- 家族風呂
- 1棟1時間1500円~
- 電話:
- TEL 0977-66-0301
- E-mail:
- yunosato@po.d-b.ne.jp
明礬温泉 鶴寿泉
- 場所:
- 大分県別府市明礬3組
- 営業時間:
- 午前7時から午後8時
- 駐車場:
- 道路をはさんだ道脇のスペースに4台
- トイレ:
- なし
- 料金:
- 賽銭
明礬温泉 地蔵泉
- 場所:
- 大分県別府市明礬2組
- 営業時間:
- 午前7時から午後8時
- 駐車場:
- 道路沿いに5台
- トイレ:
- なし
- 料金:
- 賽銭